squall[EDWARD side]


「別れよう」


大好きなロイの部屋でそう、告げる。
いつもはもっとこの部屋にいたいと思うのに今日は早くでていってしまいたい。



もう一度



「別れよう」


そう告げてもあなたは漆黒の瞳で黙って俺を見つめ返すだけ。


ねぇ
何か言ってよ

苦しいじゃないか




「私は君に何か悪いことでもしたかい?」

怒っているわけでも悲しんでいるわけでもない無機質な声が沈黙を破る。

「あんたは何もしてない、悪くないよ」

ちょっとだけ微笑んで…

俺は俯いた


「理由はなんなんだい?」

俺は黙り込む。

ほかに好きな人ができたんじゃない。

ロイが好きすぎて、愛しすぎてもっと好きなってしまうのが怖いんだ。

なんてそんなこといえない。
あまりにも自分勝手な理由。
ロイの気持ちも無視してるって分かってるのに。





ロイには言えないからこないだハボック小尉の胸の中でちょびっと、泣いた。

「俺、どうしたら良いんだろう…」
「そりゃ大将次第っすが…一度距離を置いてみるとか…」
「うん…」
「もっと好きになるのはいけないことなんすか?」

そう聞かれて。

だめじゃない。

とは分かっている。
むしろ幸せなこと。
だけどこれ以上好きになったら──


あなたから離れられなくなってしまいます




ただ、黙って俯いてしまった俺にロイは口の端だけつり上げて笑った。

「ほかに好きな奴でもできたのかい?」
「違うっ!」
「ほう、なら理由はなんだね?」

そう再び聞かれて俺は言葉を詰まらせる。

「ほら、言えないじゃないか」
「でもっ、ほかに好きな人ができたんじゃな…──ッ!」


暗転する世界

目の前には、漆黒



「やめっ、ろ!」



やだやだやだ!



今ここであんたとやってしまったら壊れてしまう。

お願いだから

良い思い出のまま終わらせて









「ハボックか?」
「…?」
「ハボックと寝たのかい?」


ロイは今なんて言った?

頭が真っ白になる


そして一気に押し寄せる悲しみ


パンッ──


乾いた音

そして少しだけ痛む俺の左の手のひら


今まで押さえてきた涙が一気にあふれ出す。

「君とハボックは仲がよかったし、ハボックは君のことを好いていたからね、いつかそうなってしまうのだろうかと思っていたよ」

ロイはそんな風に思っていたわけ?

「どうだい、奴との相性は」

私とよりも良かったかい?
私はデスクワークが主だが奴は現場に行っているからな


「あんた、最低だな」
「…あぁ、最低で結構だよ」

そう言うとロイは俺の両手をつかんだ。

「なっ…!?」
「お仕置きだよ」

しゅるっとロイのベルトが引き抜かれあっと言う間にベッドサイドに縛り付けられてしまう。

「やだっ、やめろぉ…」
「どうだったかい?奴とのセックスは」

本当に、していないんだ

「君のココは奴をしっかりと銜え込んで離さなかったのだろう?」
「やっ、してな…」
「嘘はいらないよ」
「してない…してな…」
「気持ちよかったんだろう?ペニスの先から君の甘い蜜を存分にまき散らせたんじゃないかい?」
「やっ…」

でもね

「君のイイトコロを余すことなく知っているのは私だ」

初めて露わにされた怒り。
俺はゾクリとしたものを背中に感じる。

「やだっ、はなせ!」
「五月蠅い」

そういってロイはサイドテーブルからカッターを取り出した。
それは、彼がよく封書をあけるのに使っていたやつだ。




ある時俺はロイに手紙を送った。

あと少しで帰るから

たぶんそんな内容だったと思う。
その手紙を送って一週間後に俺は東方に帰った。
てっきりついていると思っていた手紙は天候のせいで配達が遅れていて。
俺がついた日にその手紙もロイに届いた。
その夜、彼はそのカッターで俺からの手紙をあけて「君の字は相変わらず汚いな」なんて言って、でも嬉しそうに笑っていた。

「君から手紙をもらえるだなんて幸せだよ」





そのカッターで俺は服が破られるだなんて思ってもみなかったんだ。

「ひっー!」
「動くなよ、けがするぞ」

シャーっと俺の黒のタンクトップは縦に裂けた。
それから次はズボン、そして下着…

裂かれたズボンと下着からのぞくペニスとタンクトップからのぞく乳首を見てロイは笑った。

「情けない姿だな、“鋼の”」
「──!」

ぎゅうっと心臓が締め付けられる。
別れようと告げにきたのは自分だ。
しかも理由は話さない、ロイにとってはかなり理不尽な話だ。
だから嫌われるのも仕方がない。
あんただって俺を嫌いになった方がきっと楽。
だけど、
だけど。





思い出だけは壊さないで──





「イヤアァ!」
「イヤじゃないだろう、君のココは嬉しそうじゃないか」

くりくりと乳首をいじられて俺は喘いだ。
すこしいじられただけなのにソコは真っ赤に熟してツンッ、凝る。

「もうつきあう気もない好きでもない男にいじられて君はこんなに感じるのか?とんだ変態だな」
「違っ、きゃふぅ!」

両方の乳首を限界まで摘み、引っ張られ俺は気持ちの悪い声を上げた。

「お願い、やめて、やめて…ひっく…」
「……」

ロイはそんな言葉も無視して俺をいじり続けた。
そして胸の飾りを触るのに飽きたのか。

「自ら足を開け」
「イヤッ!」
「だったら両足とも左右のベッドサイドに括りつけてしまおうか?」

俺はびくっとしてロイをみる。
彼の目は本気だった。

「──っ」

俺は足をたてて少しだけ足を開いた。

「もっとだ」

しかし、これ以上開くのはイヤで俺は弱々しく首を左右にふる。

「そんなに足を縛られたいのかい?」
「ャッ…」

俺はその言葉を聞いて目を見開く。
そんな情けない格好にされたくなかった。
ゆっくりと足を開き始める。
すべてがロイにさらされてしまう。

「君のペニスが丸見えだ、鋼の」
「…」
「乳首をいじられただけでこんなに先走りをこぼして…」

ぐちゅっと音がしてロイの手が俺のペニスを握り込んだ。

「アァッ!?」
「こんなに可愛らしいペニスをハボックに触らせて…」
「してな…ひぐ!んぁ、ひゃあああぁ!」

いきなりじゅるっと口に含まれてしまう。
腰骨から脳天にかけてゾクゾクとした快感が一気に駆け抜け、俺は背を弓なりにしならせた。
それと同時に後ろの蕾につぷっ…とロイの指が挿入される感覚。
ずるっと奥まで入り込んだソレはしばらくは奥の方を乱暴にかき回す。
そして次に、浅い場所にある前立腺を的確に抉った。

「きゃあ!」

女のような声を上げてしまい、俺は唇をかんだ。
すぐに咥内に広がる鉄の味。

「やめなさい」

そういうとロイは俺の口の中に指を三本押し込んだ。

「んん…!ん…」

俺はそれが優しくされているみたいで、イヤでその指を噛んだ。
ロイの眉が寄せられる。
しかし、彼はなにも言わず俺の体内からいつの間にか三本入っていた指を引き抜いた。
それから強ばって力をなかなか抜くことができず、ロイの指を噛んだままの俺の頭をなでる。
俺はただ、顎から力を抜かせるためだけにそうやったんだと思うことにした。


だってそこから伝わってくる暖かくて愛おしいものに触るような心地よい感触に気付きたくなかったから


いつの間にか力が抜けた俺の口からロイは所々血の滲んだ指を引き抜いた。
そして、ゆっくりとズボンの前をくつろげ、熱く猛った自らを取り出す。

「欲しいかい?“エドワード”」


だめだ、ここで「欲しい」と言ったら今まで頑なに守ってきたものが崩れてしまう。
壊れてしまう。

分かっていた。

だけど

我慢することなんてできない





「下さ…ロイのおちんちん、エドのお尻に…」

ふっとロイが笑うのが見えた。
きっと俺を馬鹿にした笑い。


もう好きでもない奴に体を開く奴だと思っているのかもしれない。



でも違うよ?



俺は別れようとは言ったけれど誰より一番あなただけを




ずっと








愛してる









「この…ッ、淫乱!」

ズッと押し入る感覚。


ほら、そうなんでしょう?
あなたはそう思っている。


ガラガラと何かが崩れ、壊れる音を聞きながら、俺は快楽の渦に飲まれていった。










浮上する意識。
柔らかな布団と感触と大好きなあなたの匂い。
いつの間にかきれいに清められた体を起こそうとする。
が。

「──ッ!」

下半身に走る鈍痛。


帰らなきゃ


うつろな瞳でそう思う。
するとそこに入ってきたのは。

「…!」
「目が覚めたかい、鋼の?」
「てめっ…?ゲホッ!」

ガラガラに枯れた声。
ロイは俺に水を差し出す。
でもソレを受け取る気にはならなかった。


アルが心配する。
だから早く帰らなきゃ。

ロイから離れる方法を、言い訳を考える。

するといきなり顎を捕まれ、引き寄せられた。

「んー!?」

口付けられたところから流れ込む水と潤っていく喉。
そして離れていく唇。

「アルフォンスには私の家に泊まると連絡した」
「なっ…」
「少し出かけてくる」
「なっ、待てよ…!」

しかし、その声は彼には届かなかった。

俺は一人残され再び布団に潜り込んだ。

すると両手首に丁寧に巻いてある包帯。
ベルトで縛り付けられた挙げ句、俺が暴れたから相当傷が付いたんだろうななど考える。


さっきの情事のせいで再びおそってくる睡魔

重くなる瞼は重力に逆らえず落ちてくる。


そんな中

俺は


あのとき頭を撫でてくれた彼の大きな、暖かい掌を思い出していた






end.



あきゅろす。
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