気づいて16
その後はもう散々だった。
俺の恥ずかしい大告白を古泉の同僚たちに、しかも谷口含めて皆に聞かれてしまった挙げ句、ものすごい拍手と声援を送られた。
「正直男の嫁さんとかどうかと思ってたけど、お前の嫁さんはさいこーだな」
とか
「古泉、キョン君を俺に貸してくれないか」
などと言われた上、谷口からは
「いやぁ、お前の破壊力は最高だったよ。女だったら惚れてたが、お前だから惚れるどころかにやにやが止まらなかったぜ」
とバカにされた。
絶対に後日締め上げてやる。
もう、恥ずかしいやら居たたまれないやらで俺は周囲をきょろきょろと見回しながら、体をわなわなと震わせた。
とにかくこの場から逃げ出してやろうと俺は古泉を突き飛ばす。
そしてエプロンの裾をぎゅう、と握りしめて叫んだ。
「お、ぉお仕事中失礼しました!」
あとはもう後ろを振り返らずに逃げ出してやろうと、踵を返し、走りだそうとした。
しかし、それは叶わない。
谷口に襟首を捕まれたからだ。
「な、なななにをす…」
「ほれ、ちゃんと二人で帰れ」
谷口はコートと鞄を持って立ち尽くす古泉をちょいちょい、と指さす。
確かに、あの状態の古泉を一人でおいて帰るのは可哀想。
ちょっと立ち止まって、恥ずかしさから古泉を上目遣いで睨みつけると、奴はどうしたんだと聞きたくなるくらい、ヘラリと笑って駆け寄ってきて。
恥ずかしい奴め。
「ちょっと、待ちなさいよ!」
それまで哀れな格好のままへたり込んでいた女上司が声を張り上げる。
まだ何かあるのかと、俺が眉を下げると、何故か谷口がつかつかと歩み出て。
そして、女上司の前にしゃがみ込む。
「課長、まだ諦められないんですか?」
「谷口、あんたは引っ込んでなさいよ!私はあのクソ男に用が…」
「キョンが言うように、あんたのその古泉に対する接し方は異常だ、完全なるパワハラだよ」
谷口のその言葉に、女上司はぐっと唇をかむ。
「キョンがあんたのこと訴えでもしたら、完全にあんたは有罪判決ものだぜ?そろそろ諦めた方がいいんじゃねぇの?」
そう、谷口は告げて立ち上がる。
こちらを振り返ってにやりと笑うと。
「こっちのことは俺がどうにかしとくから、お前らはとりあえず帰れ」
谷口がこんなに頼りがいがあると思ったことはない。
心底谷口に感謝をしたいと思う。
「おお!俺、良いこと言ったな!かっこいい!」
…前言撤回だ
続く
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