気づいて13



そんなに俺は信頼できないのかと、古泉の支えにはなれないのかと。
そう思ったら、堪えていた涙がぽろっと溢れ出した。

「俺は、浮気されたのかと思って、不安で…!」

言うまいと思っていたのに、口からぼろりと今までの不安が零れ落ちる。
一度溢れてしまったそれを止めることは出来ない。
堰を切ったように、気持ちが溢れだした。

「ワイシャツから毎晩甘い匂いがするし、帰ってくるのも遅い」
「はい…」
「あんまり俺のことも構ってくれなくて、話もできない、コミュニケーションがとれない」
「………」
「こないだなんて、く、口紅がついて…!」
「…っ!」

霞んだ視界の先で、古泉の苦しそうな顔が見えた。
これ以上言ったら駄目だ、古泉を悲しませてしまう。
そう思ったけれど、ちゃんと言わなければと気持ちを奮い立たせて。

「たくさん、好きって言って欲しかったのに…!それさえも言ってくれなかった!も、怖くて…ッ!」
「ごめんなさい…!」
「どんどん、離れて行ってるんじゃないかって、いつか近いうちにサヨナラ言われるんじゃないかって怖くなって…!だから、だから…!」
「それ以上言わなくてもいいですから…」
「言われるくらいなら、自分で言った方が楽かと思ったんだ…!」

悲痛にそう訴えると、古泉はぎゅうっと俺を抱きしめてくれた。
暖かな、たくましい胸板に抱かれてひどく安心する。
やっぱり、ここが俺の居場所なんだ。

「辛かった、悲しかった、痛かった…!」

離さないようにしっかりと背中に腕を回して抱き返す。
さらに強く抱きしめられて、俺は安心からまた涙をこぼした。






「ちょっと!古泉君の奥さんが男ってどういうこと!?」

突然、後ろから甲高い声が聞こえる。
小さく古泉が舌打ちをしたのが聞こえて、俺はこいつが諸悪の根元かと、ゆっくり振り返った。
そこには、綺麗なお姉さんが腕組みをして立っていて。
あまりにも偉そうなその態度に、俺は顔をしかめる。
負けちゃいられないと、袖口で涙をぐいぐいと拭った。

「お前か、古泉にセクハラした奴は!」
「キョーン、パワハラだパワハラ!」
「五月蠅い!」

すかさずつっこみを入れてきた谷口、あとでタコ殴りにしてやる。

「とにかくお前!よく聞け!古泉は俺の旦那だ!」
「何言ってるの!男のくせに!良い?古泉君だって、あなたのような男と好きで結婚したわけ無いでしょ!」
「プロポーズは古泉からだったぞ!」

意味が分からんが、俺はとにかく必死で言い返した。
もし俺が傍観者だったらあまりのレベルの低さに失笑するね。
でも、俺はそれどころじゃ無かったんだ。











続く


あきゅろす。
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