気づいて9




「すごくいやらしい顔してますよ」

ふふっ、と古泉は笑うと先走りでぬらぬら光る指先を俺の目の前に突き出した。
にちゃり、と透明な液体が親指と人差し指の間に糸を引く。
あまりにも恥ずかしいその行動に俺は目をそらした。
すると、古泉は俺の耳元で粘着質な音を立て。

「今からこれ、あなたのお●んこに入れて差し上げます」
「なっ、は、あぅう!」

屈辱的なせりふに言い返そうとしたが、言い返す暇もなく俺は悲鳴を上げた。
一気に人差し指の根元まで埋め込まれ、きつくてたまらない。
いくら後ろでのセックスに慣れていようとも、この異物感は消せなかった。
しかし、薬によって快楽を拾いやすくなっている体は、少しの刺激にも敏感に反応し始める。
俺の体について知り尽くしている古泉は的確に前立腺の場所を探り当て。

「コリコリしていますよ、あなたの好きなところ」
「あ゛、あっ!好き、じゃな…あ!」
「嘘をつく子にはお仕置きが必要ですね」

その言葉を理解できるような頭ではなかった。
たっぷり五秒くらいかかって、俺は漸く理解する。
酷く犯される、と言うことを。

「いやだ、いや!だめ、だ、ああぁああ!」
「残念、もう入っちゃいました」

愉快げに古泉は笑った。
しかし、そんなのどうでもいい。
俺は脳髄に響くような酷い快楽に意識を飛ばしそうになっていたからだ。
急に大人しくなった俺の頬を古泉に叩かれる。
まだ意識を飛ばすには早い、と言うかのように奥深くまでペニスを突き刺された。
肌と肌がぶつかり合う、乾いた音と、俺たちの結合部分から響きわたる水音。
そして、自分の喘ぎ声しか聞こえないこの部屋。
もう、気がおかしくなりそうだ。
早く解放してほしい。
そんなに悲しそうな目をして俺を見つめないで。

苦しい、苦しいんだ───




「何で、僕から離れるんですか」

ぐちゅぐちゅと腰を押しつけられながら問われた。
涙で視界が霞んで見えていたため、古泉がどんな表情をしているかは伺い知れない。
俺はうっすらと開いた瞳から、歪んで見える古泉にこう告げた。

「これ以上、一緒にいたら苦しくて死んじゃう…!」

そう口にした途端、ぎゅううぅ、と心臓が締め付けられた。
本当は一緒にいたかったのに。
愛されることの出来なかった自分が酷く哀れだ。
なのに、古泉はまたそれに腹を立てたのか。
涙で濡れた頬をもう一度、平手で殴られる。
もう、訳が分からなかった。
何で俺がこんな目にあってるんだ、どうしてなんだ。

快楽でぐちゃぐちゃの頭が、古泉の気持ちが分からないせいでさらにぐちゃぐちゃ。
もう、何も考えたくないと思った途端、欲望が弾けた。
頭が真っ白になり、快楽に体が打ち震える。
いつもなら、ある程度時間がたてば意識がぼんわりと戻るはずなのだが。
頭は真っ白なままで、俺は真っ白な世界に放り出された。












続く


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