にやり、と古泉が笑った。
対照的に俺は顔を歪ませる。
嫌だ、こんなので感じるのは嫌だ！
しかし、嫌でも体は徐々に熱を帯びてきて。
「ふぇ…う、うあぁ…！？」
ぐにゃり、と視界が歪む。
頭がくらくらとしてきて、思考が正常に働かない。
逃げ出したいと思っていたはずの体も、自分の意志では全く動かなくなっていた。
すっかり力が抜けてしまった俺を見下ろした古泉は、再びエプロンの裾から手を差し入れてくる。
きゅ、とペニスを掴まれれば腰がびくりと跳ね上がった。
「ふやっ！あ、んぅ…！」
くちゅり、と濡れた音がもうして。
恥ずかしい、悔しい気持ちから俺は思いっきり唇を噛みしめる。
そうすれば、さらに刺激が強まって、俺はさらに強い力で唇を噛みしめた。
こんな、無理矢理なセックスで感じたくない。
頭の片隅にほんの少し残った理性とプライドにしがみついて、無理に耐える。
途端ぷちっ、と何か切れるような音がして口の中いっぱいに鉄の味が広がった。
きっと、いや、確実に唇が切れたのだろう。
こんな屈辱、耐えられない。
いっそ気を失えてしまえばいいのに、と切に願いながら、俺は唇を噛みしめたまま首を振った。
「ふうっ、んぅ、うー！」
「さっさといやらしい声聞かせて下さいよ、そっちの方があなたも楽でしょう？」
そ、と唇にひんやりとした指が触れる。
強ばって自ら力を抜くことさえ難しくなった俺の唇をゆっくりと撫でて。
その指使いがなぜか懐かしく感じられる。
(ああ、付き合い始めた頃とかこんなんだったよなぁ…)
古泉はとても優しくて、絶対に俺の体が傷つかないようにしてくれた。
安心だなんて出来ない状況だとは分かっていても、優しくされていることに慣れた体は徐々に力が抜けていく。
そのことにさらに涙が滲んだ。
古泉は優しかったのに、どうしてこうなってしまったのか分からない。
何がいけなかったんだろう、やっぱり俺が素直じゃないから？
ちょっとは素直に好きとか、愛してるとか言葉にしていればもう少し長い間愛してもらえたのかも知れない。
「ふあ、あ、アアァ！」
口が開いた途端、甘い声が口からついてでた。
自分でも驚くくらい、甘ったれた上擦った声。
こんな気持ちの悪い声なんて出したくないのに、聞かれたくないのに！
なのに、快楽にとろけた体は敏感に反応してしまい、どろりと欲液が滴り落ちた。
続く
