気づいて7
こんなに古泉が怒りを露わにしたのは初めてのことだ。
いつも温厚な古泉を怒らせてしまったのが申し訳なくて、俺はエプロンをぎゅっと握りしめる。
でも、今更引き下がることなんかできない。
「も、ぅ…ダメだろ?俺たち…」
握りしめた手のひらを見つめながらそう呟くと。
いきなり古泉に手首を捕まれて立ち上がらされた。
はっとして顔を上げれば、強い力で引っ張られる。
おい、どこに連れて行くつもりだ!
訳が分からず抵抗する俺を古泉は寝室へ引きずり込んだ。
そのままベッドへ投げ飛ばされて、冷たい汗が全身に滲む。
暗い部屋の中で、古泉のぎらついた瞳だけがやけにはっきり見えた。
「な、にする…!?」
ベッドの上に転がる俺の上に乗り上げると、古泉はネクタイに指をかけ、しゅるりと外す。
ここまできて、なにをされるか分からないような鈍感ではない。
怖くてたまらなくて、逃げだそうと身を捩る。
しかし、古泉はそんな俺の両腕を掴むと、そのままネクタイで縛り上げベッドサイドに固定してしまった。
「や、だぁ…!嘘だろ、なぁ古泉!」
しかし、古泉は何も言わない。
ただ、俺のエプロンを捲り上げ、その下に着ていたTシャツを力任せに引き裂いた。
ズボンは下着ごと引き下ろされ、情けないことに俺はエプロン一枚の格好になる。
「こんなのやめろよっ!」
ぽろぽろと涙が溢れてきて、俺は子犬のようにうるさく泣きわめいた。
腕が傷つくのも構わずに、暴れまくる。
あまり力は入ってはいないだろうが、古泉を蹴り上げた。
途端、頬に熱が走る。
パン────ッ!
乾いた音が部屋に響いた。
「いい加減五月蠅いんです、黙っていただけませんか」
酷く冷たい声が俺に降りかかる。
もう頭は真っ白で、何も考えられない。
今起こったこともはっきりと理解できないほど、頭が混乱する。
そんな俺を気遣うことなく、エプロンの裾から無遠慮に男らしい綺麗な指が忍び込んだ。
全く反応していない俺をぎゅうっと握り込み、早急に刺激を始める。
しかし、恐怖とショックから俺の体は快楽を拾おうとしない。
そのことにじれた古泉は、サイドテーブルから小さな小瓶を取り出した。
どんなものが入っているか知っている俺は、ぎゅうっと唇を噛みしめる。
するとぎゅっ、と鼻を摘まれてしまい、俺は呼吸が出来なくなってしまった。
「んーっ、んっ、んうぅう…!」
絶対に口を開いてやるものか、と耐えてはみるものの。
すぐに限界はやってきた。
「ぷはっ!あ、むぐぅ…」
勢いよく口を開けて空気を吸い込むと共に、口の中に甘い液体が大量にこぼれ落ちる。
吐き出すことなんて出来なくて、俺はそれを飲み込んでしまった。
続く
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