悲壮美-tragic beauty- 11



リンゴで先走りを掬い上げ、しばらく遊んだ後。
古泉はひくつく尿道口を人差し指と親指で広げた。
一気に乾いた空気が皮膚を乾かし、痛みを伴う。
ぴりぴりとした痛みを感じながら、俺は古泉を睨もうと顔を上げた。
しかし、目的である場所に目が向く前に、俺の視線は自らの下半身で止まってしまう。

なぜかって?

古泉がリンゴが潰れるのではないかという位、ぎゅうっとそれを握りしめていたからだ。
すでに数滴、果汁が陰毛を濡らしている。

「喉、乾いたでしょう?ここにジュースでも差し上げましょうか?」
「ば、かじゃねぇ、の!?」

俺は途切れ途切れにそう、反論した。
こいつは絶対に脳味噌が危ない。
一度は医者にかかるべきだ。

そんなことを思いつつ、とにかくバカな真似はやめさせようと古泉を諭す。

「おい、んなもんかけたって何の意味が…!やめとけ、今すぐだ!」
「意味がないことを僕がする訳ないでしょう?」

にこり、と不気味なほど綺麗な顔が微笑んで。
形のよい唇からは死刑宣告が発せられた。

「媚薬ジュース、飲まして差し上げます」
「いや、や、熱うぅう!」

ぐじゅりとリンゴが潰れてぼたた、と果汁がペニスに降りかかる。
冷たいはずの果汁も、俺にとっては熱い物に感じられた。
それほど、俺の尿道は乾きを訴え、潤いを求めていたのである。
どうにか意識をそらそうと躍起になるが、それは叶わない。
それどころか、余計に熱いペニスを意識してしまって俺は涙をこぼした。

「ヒアァア…!やだ、やだぁ…!」
「慣れない体では辛いでしょう?」

だったら今すぐやめろってんだ。
心の中では悪態をついてみるが、もちろん状況は何一つ変わらない。
それどころか、なんと奴は俺の太股裏を持ち上げて、ぐいっと体を二つ折りにした。
赤ちゃんがおむつを換えてもらっている時のような、そんな格好。
あまりの羞恥に俺は目を瞑り、できるだけ顔が隠れるように顔を枕に埋める。
唇もきゅ、と噛みしめてとにかく耐えようと体に力を込めた。
しかし、そんな抵抗が出来たのも束の間。
突然触れたこともないような場所に指を這わされて、俺は悲鳴を上げた。

「ヒイッ───、っ!?」
「こちらも使ってらっしゃらないようで」

クスクスと笑い声が降ってくる。
慣れない異物感と、訳の分からない状況に俺の我慢のダムは決壊した。
一気に今から起こることが怖くなり、現実味を帯びてきて。
恐怖からの涙も壊れたように溢れて止まらない。
溢れ出たそれは、すぐに枕に吸収されて、生地の色を濃く染めた。






続く


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