4 再び地面に足をつけたとき、僕はふらふらになっていた。 当たり前だけど、自転車とは比べものにならないくらいのスピードで、思ったより怖くはなかったけど、それでも精神的にすごく疲れた。 そんな僕にヒロくんは苦笑いを浮かべて、くしゃりと頭を撫でてくれた。 「…………ここ?」 家と反対方向にちょっと行ったところにある、小さなお店。 半分地下にあるみたいで、階段の奥に黒っぽい扉が見えた。 なんというか……お酒を出すお店っぽい。 店の脇にバイクを止めたヒロくんが、すっと階段を下りていく。 僕も慌ててその後を追った。 「あっ、おはようございます!」 扉を開けると、そこには僕のイメージそのまんまの“バー”があった。 薄暗い照明。 落ち着いた色合いのカウンター。 その奥にずらりと並んだお酒の数々。 床はお洒落な市松模様で、全体的に感じのいいお店だった。 そんな店内には、僕と同じか少し年上くらいの若者が溢れていた。 皆それぞれカラフルな頭で、昼間見た屋上の人達を思い出させる。 入口にいた一人がヒロくんに頭を下げると、つられるように店内にいる全員が次々に頭を下げていく。 すごい光景にたじろぐ僕に気付いたのか、ヒロくんの右手がそっと僕の左手を握った。 [*back][next#] |