2 開いたまんまの後ろの扉の辺りに、待ち人が立っていた。 僕は窓際の自分の席から立ち上がって、彼の元へパタパタと駆け寄る。 僕が隣に来るのを待って、ヒロくんは何も言わず下駄箱まで歩きだした。 歩幅の小さい僕に合わせた、ゆっくりとした歩き方。 こういうさりげない優しさが、ヒロくんの良いところだと思う。 「ね、ヒロくん」 「……あ?」 「お母さんがね、ヒロくん元気にしてるか心配してたよ。 今度ヒロくんの好きな煮物持っていこうかって話してた」 「あー……いつもすみません、っつっといて」 「うん」 ヒロくん家はちょっと複雑で、昔からよくお母さんがご飯をおすそ分けしてた。 僕とヒロくんが疎遠になりだしても、お母さんは相変わらずヒロくんの事を気にして、たまにおかずを置いてったりしてたみたい。 たまに空のパックがうちの玄関先に戻ってきてたりしたから。 「……ショウは」 「うん」 「何でここ選んだんだ?」 ちょっとだけ考える。 「んー……、中学の先生に薦められたから?」 「そ、か……」 「ヒロくんもいたしね」 特別何か狙ったわけでもないけど、ヒロくんは僕の発言に軽く目を見張って、それからちょっとだけ笑った。 変なこと言ったかな? [*back][next#] |