不機嫌わるつ
愛を知らぬ少年Hは云う、
「愛だの恋だのって馬鹿じゃない。そんなものただのまやかしだよ。」
綱吉は急いでいた。ここ1ヶ月で一番急いでいた。
朝寝坊をし、道端で倒れているお婆さんを助け、交番に送っていったらもう1校時目が始まる時間だった。やっとのことで教室に着くと誰も居なかった。獄寺が机上に残していってくれたメモによると授業変更に伴い1校時は第一理科室に移動になったらしかった。
第一理科室。
それは綱吉の教室から一番離れた場所にある特別教室であった。
そんなこんなで綱吉はひたすら廊下を走っていた。
「あっ、」
流石ダメツナ。そのフレーズが脳裏に浮かんだ。
躓いた。
それも下り始めた階段の途中で。
すると角から人が出てきた。
落下の際、落ちる人より下で受け止めてしまう人のほうが危ないと聞いたことがあった。
「したのひと、どいてぇぇぇぇ!」
ああ、地面が近づく。
目をつぶり、衝撃を身構えた綱吉は想像していたより痛みが弱く、あれおかしいな、と目をあけた。
黒い。
あれ、廊下は薄汚れてはいるが黒ではなかったと思うなあ。実はもう俺死んだんじゃないかなあ。とか暢気に思った綱吉は次に頭の上から降ってくる一言で顔色を変えることになる。
「ねえ、重いんだけど。」
聞き覚えのあるその声は、
その声は雲雀恭弥のものであるという重大な事実に気づいた綱吉は蛙のようにぴょんと飛び起き、顔を青く染め、がたがたと震えだした。
「すっ、すいません!あの、お怪我は、」
「君と一緒にしないでよ。あるわけないでしょ。君は、」
すっと手を頬にあてられ、綱吉は俯き、肩をびくっと震わせた。
ツキッと何かよくわからない痛みが雲雀の中に走った。
「あ、あの、」
一瞬、たった一瞬だけ、何故か雲雀の顔が苦しそうに歪むのを綱吉は見逃さなかった。
「やっぱりどこか痛いんじゃ…」
やはりどこか痛めてしまったのではないか、と心配そうな綱吉から乱暴に手を離すと、雲雀はチャキ、と何時もの相棒を取り出して言った。
「目障りだよ。早く消え失せてよ。咬み殺されたいの。」
「ひいっ!すすすすすいませんでした!」
だだだだ、と走っていく綱吉の背中を見つめ、愛を知らぬ少年Hは思った。
あの不愉快な感じは何だったのだろう、と。
少し調子が狂うよ。
気付いてない雲雀さんでした。なんかわかりにくかったかもです。お題サイト、水葬さまからお題を頂いてまいりました。近々続きも書きたいです。←結論。
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