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▼Be soaked jail(佐×政)





闇は真実を映す鏡

幾ら過去をひた隠しにし
息詰まる現在を密やかに生きていても

流行性感冒のようにじわりじわりと身を侵し
其れはいずれ白日の下に曝されてしまう

ならば如何する

知らぬ存ぜぬで隠し通すか
自ら露呈してしまうのか

どちらにせよ
其処には終わりが手招きしていよう





さぁ、如何する?

いっそ、其れすらも閉じ込めて目を瞑るか

密事の捕虜として喰われてみるか?















渇きを知らない、牢獄に─────




















「……アンタは…、………」



小さな地割れから沁み伝い落ちる雨の名残が冷たい石造りの床に弾けて、また不快な湿気を此処に生み出す。

いい加減、淀んだ空間とはおさらばしたい気分だ。



「…何で、嘘なんかつくんだ…?…」



とは言え両手首は共に枷に嵌り、壁の角に繋がれた鎖には牢の柵まで届く余裕は無く。



「自分が嫌になる似非なんざ止めればいい。…俺には出来て、何で幸村や他の奴には出来ねぇんだ…?…相手の、アンタと向き合う姿勢の変化を知るのが、そんなに怖いか…?」



牢の先の頭一つ分下ほどの壁に掛かる燭台の元で胡座で鎮座する弧面に、もう何度目かの質疑を投げかける。

だが弧面は一文字すら紡がない。
呼吸すら、掴めない。



「俺は…皆の知らないアンタを知ってる。……知り得たと自負してる。全てじゃなくてもだ」



幾夜過ぎただろうか。

この御時世だ。
捕らわれた理由は様々あるが…そのどれもが該当しないとなると、あとは知れたこと。

あの、陽が完全に落ちるまで身じろぎすらしない弧面が起こした、癇癪なのだ。



「互いに、いつかは無くなるんだ。…このまま逃げ隠れしながら一生を終える気か?……こんな墓場みてぇな所で死んだら、地獄で再会出来そうにないぜ」



逢瀬には隔たりが有り過ぎる。

忍の足ですら半日かかる距離、異なる身分、掲げる軍または仕える軍の相違…全て世間に晒せるものではない。
それが堪らなく焦燥を駆り立てた。



「……まだやりてぇ事が山ほどある。大半は、アンタとだ。…なのにこんなモンに繋がれてちゃ、何にも叶わねぇ…」



俺だってそうだ。

されどそれも運命だと甘んじて、敢えてそう在るしかなかった。

だが弧面は己が感情に芽生えたのが急過ぎた為に制御出来なかったのだろう。
今は、混沌の最中で葛藤が目まぐるしく暴れ回っているに違いない。



「これがthrillか…。…違うだろ?……、…わざわざこんなモンで捕らえる必要はねぇ、俺は…アンタの気が治まるまで此処に居る。」



だからこうして、俺は色々と投げかける。

少しずつ、アイツの苦悩や苦痛が端から解けていけるように。

帳が降りて、何事もなかったかのように笑みを浮かべ牢の内側へとやって来て俺を抱く腕や声や表情に、変化が見られるまで。



何とか、してみせる。

俺の命が、尽きてしまう前に。















─────…‥・















「…ねぇ…、…政宗。」



「俺様のこと、怒ってる…?…」



「はは……ごめんね…。毎日聞いちゃ、逆に怒って当然かぁ」



「…でも…ホントに、ごめん……」





昏睡が続く彼の手を布団からそっと出し、軽く力を篭もらせる。

あの地下牢での最後の日。
答えに辿り着いた俺様が直接に城へ送り届けようとしたのを拒んで、彼は呟いた。



(アンタは俺の所在を知らなかった…そうだろ…?…)



そういう事にしておけば俺たちの関係は変わらない、変わるのは許さないと言って意識を失った。

失って、ひと月。
躯はほぼ回復はしたものの、彼は未だ目を覚まさない。

屋根の終わりから庭石へと、雫がその身を散らせている。

離れの四方は雨に囲まれ、空は厚い雲が隠して地上には肌寒さしかもたらさない。



ふと、思う。

此処も、あの暗がりと同じ牢獄なのだ。

見出した答えが増殖し絡まってまた、分からなくなってくる。



「…どうしよう………政宗、…」



鍵を渡してくれるはずの手は、動かない。

その手を掴む自分の手が徐々に血色悪く、否応なしに震え始める。



「っ…起きてよ……、…ね…目、開けて…」





容赦の無い雨が濡れ囲む、しがらみに二人。

捕らえたのは誰。
捕らわれたのは、何?



終わりなどない、
其れ其の身が朽ちても。

終わらせない。

冷たく心を刺し続ける風を生む、此の雨が。















─────end.

…寒い(・∀・)
色んな意味で←

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あきゅろす。
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