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改造魂魄




「あー、すっかり遅くなっちゃった!」


インコの事件から数日、残務整理の為に尸魂界に戻っていた由岐はようやく仕事を終わらせ、現世に戻って来たところだ。もう四限が始まっているであろう学校へ向かっている。










「何…これ?」


由岐は教室に入るなり唖然とした。授業が行われているだろうと思って入った教室は、机が倒れ、物が散乱していて、授業どころではない状態だった。


「由岐!遅かったじゃない!あんたがいない間に大変なことに…」
「由岐!どうにかしてぇ!」


教室に入った由岐を見つけるなり、千鶴とみちるがそう泣きつく。


「ど、どうしたのよ…この騒ぎ…」


何がなんだかわからない由岐は二人に尋ねる。


「黒崎君が…窓から入ってきて……」
「キスしたのよ!たつきと…あたしのヒメに!」
「……は?」


二人の予想もしなかった答えに由岐は目が点になった。


「一護が?たつきと織姫に?そんなことするわけ…」
「うん…あの黒崎君、すごく変だった…話し方とか…あと何もない所で一人で喧嘩みたいなこともしてたし…」
「何も…ない所…?」


つまり、霊的な何かが関わっているということになる。また厄介事に違いない。


「そう言えば、朽木さんはどうしたの?」
「あ、朽木さんなら黒崎が出て行った時に、追いかけて行っちゃったけど…」
「そう…わかった。ありがとう」


ルキアを見つけて事情を聞こうと、由岐は教室の外へと駆け出した。










「見つけた!」


二人の霊圧を探りながら走っていると、二人の姿を見つけた。一護は死神化している。


「ルキア!一護!」
「由岐!」


由岐が呼びかけると、二人が振り返る。

「教室…すごい騒ぎだったけど…一体、何があったの?」
「実は…一護に入れた義魂丸が好き勝手に動いてるのだ」


ルキアの言葉に由岐は眉を潜める。義魂丸は死神化するための丸薬であり、空になった体を預けるものだ。本来なら主人である死神に従うはずだ。


「そんなことって…あるの?」
「いや…恐らく奴は改造魂魄だ」
「改造魂魄…それは厄介ね…」


改造魂魄は人間離れした能力を持っている。人間である一護の体に入れてもだ。


「お、おい…由岐」


考え込む由岐に一護が恐る恐る声をかける。


「お前…教室行ったんだよな…?じゃあ俺っていうかあいつが俺の体使って…」
「織姫とたつきにキスしたこと?聞いたよ」
「うわあああぁぁ!」


一護は頭を抱えて叫ぶ。相当ショックを受けているらしい。


「と、とにかく、これ以上野放しにしたらまずいよね。事情はわかったから私も探すの手伝う」
「ああ、頼む」


頷くと、由岐はポケットから義魂丸を取り出す。これは大丈夫なのかと不安にもなるが、飲み込み、死神化する。


「何かあったら連絡する。じゃあね!」


そう言うと、瞬歩でその場を去った。









探すと言っても、当てのない由岐は闇雲に町内を駆け回っていた。


「あっ!」


目に入ったのは、オレンジ頭。屋根から屋根を飛び回っていて、道行く人々の注目の的となっていた。由岐も地面を蹴り、屋根へ登る。

「ちょっとあなた!」


その声で、一護の姿をした改造魂魄は走りながら振り返って由岐を見ると、何を思ったのか、引き返して近づいてきた。


「またもや綺麗な方!是非お名前を…!」


そう言いながら手を取って、唇を近づける。


「そこまで」


由岐は静かに一言言いながら、片手で一護のオレンジ頭を押し返し、もう一方の手で、手を取っていた手首を掴んだ。


「好き勝手やってたみたいだけど、その体、返して貰うわよ!」


由岐の言葉に改造魂魄は舌打ちをすると、高く飛び上がり、由岐の両手を振り払った。


「あっ!待ちなさい!」


そう叫ぶ間にも、全速力で逃げていく改造魂魄を、由岐も全速力で追う。


(…!虚の気配!)


由岐が足を止めると、すぐ近くに虚が現れた。


「またこんな時に…!」


虚を無視するわけにもいかず、ため息をつきながらも由岐は斬魄刀を抜き、虚に向かって行く。


「空気を読みなさいよっ!」


斬魂刀を振りかざすと、一撃で虚は消えた。


「…ああもう!見失っちゃった!…ってあれは…」


由岐は、ある人物を見つけて駆け寄る。


「浦原さん!」


彼だけではなく、雨にジン太、鉄裁も一緒にいる。そして彼らは揃って武装していた。


「由岐サンじゃないっすか。あ、聞きました?義魂丸のこと…」
「うん……あ、もしかしてあれ売ったの浦原さんたちなんですね?だからみんな揃って…」
「雨が間違ったの渡しちまったから俺達で回収すんだよ」


ジン太は久々に騒げることが嬉しいのか、自分の武器で素振りをしている。


「で、居場所はわかるんですか?」
「えーー…大体あっちの方ッスね。逢坂サンも行きますか?」
「行きます」
「そんじゃ、商品の回収と行きましょうか」









改造魂魄はすぐに見つかった。小学校の屋上に一護と一緒にいたのだ。

見つけるなり浦原は持っていた杖で一護の体を軽くつき、出てきた丸薬を回収し、この騒動はあっけなく終わった。


「帰るよー」


回収した丸薬を手に、浦原が踵を返すと、一護が慌ててたように肩を掴む。


「おい!それどーすんだよ!?」
「どうって……処分するんスよ」
「…!あんた、俺の姿が見えんだな!?一体何者……」


一護は返答が帰ってきたことに驚いている。そういえば確か一護は浦原に会ったことがなかったはずだ。


「ただのインチキ商人だ」


と、横から現れたルキアがそう言いながら浦原の手からひょいと丸薬を奪い取る。


「プッ……インチキ商人…」
「あっ、ダメっスよーそれ取っちゃ…」


由岐はその様子をクスクスと笑いながら一護の方を向く。


「お疲れ様ー。大丈夫?」
「…まあな。で、あいつ何者なんだよ?」
「んー……現世で死神の道具を売ってくれる人、かな。それより、早く身体に戻ったら?」
「あ、ああ」


一護は義魂丸が抜けて、倒れている彼の身体に近付き、身体に戻る。


「…………い、痛ってええ!」
「あ…傷だらけなの忘れてた……待ってて!今鬼道で……」
「……あいつ、他人の身体だと思って…」






「何だ浦原。お前の店は客に金も返さずに商品を取り上げるのか?」
「………しょうがない、じゃあお金を…」
「構わん。こちらはこれで満足している」
「……知りませんよ?面倒なことになったらアタシら姿くらましますからね」
「ああ。最近は面倒にも慣れた…」


決着が着いた所で一護を振り返ると



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