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■たまには (ブレギル)









彼が自分の手によって変化していくのは気分が良い。

けれど最近はその変化の方向に少しだけ不満もある。



「や、ン、…ヤメ、ロっ」

肩を押されて唇と同時に身体も離れていく。壁に背を当て荒い息をさせながら、顔を歪めほんのり染まった頬をさせつつこちらを睨みつけるギルバートに、苛虐心が燻られる。

「こんな、ところで…」
「こんなところ?ではどこなら良いんデスカ?」
「っ、それは…」


目線を下に向け言葉を選んでいるような彼に、苛立ちを覚える。きっと彼の頭の中は、時間帯やら場所やらそういう真っ当な意見でいっぱいだろう。此処はレインズワース家での客室。窓から明るい日差しが差し込みどんな表情も見逃さないし、隣の部屋にはシャロンがいるだろうと、暗にそう匂わせるような発言。
好きで堪らない癖に、と自嘲の笑みを浮かべつつ少し離れた距離を縮めるべく一歩踏み出した。

「く、来るなっ!」

威嚇する猫のように肩を強張らせ強い眼光で睨みをきかすギルバート。少し怯えの入った感情に自然と笑みが零れてしまう。

「何故です?私達、愛し合っているんでしょう?」

くくく、と零れた声に彼の眼が見開き、恐怖で顔が固まった。
(…アァ、その顔は良いですね)
何時からだろう、彼が自分に対して敵対心剥き出しの、本当は思ってもないのに意地を張ったような、そんな表情を浮かべ始めたのは。昔はもっと素直で多少は嫌っていただろうが心底憎んでいるわけでも無く。偶に会うたび少しずつ自分の影響で変化していく彼を、次第にその変化を楽しみにしている自分自身。敬語も辞めさせ、言いたいことは言い合える、そんな関係を着々と築きあげ今に至っている。
そうなるようにさせたのは自分、けれど少しだけ以前の素直な可愛らしい子供の部分も多少は残して欲しかったと、自分勝手にもそう思うところはある。

「アレ?そう思ってたのはワタシだけですか?」
「……っ…違う」

悔しそうに拗ねたようにそう呟くギルバートの頬に手を当てて今度は逃げられないように頭に手をまわしてしっかり押さえた。
視線が絡む、その僅かな時間が切り取ったかのように夜の雰囲気に変わる。顎を固定し、その薄ら濡れた唇に舌を這わす。

「っ…やめ」

顔を固定され動けないのにも関わらず口元が開き抗議の声をあげるギルバートに、益々可虐心が肥大し開いた口の中に舌を潜り込ませた。

「んッ、ふ…ンッ…や…んッ」

暴れかけた身体が次第に力が入らないのか大人しくなる。足を絡ませ身体さえも固定させると、強請るかのように胸元の服を掴まれ僅かに引っ張られて、一瞬眩暈にも似た感覚に陥った。

「んんッ…ハぁっ、ん…ぁ…」
「……まぁ、このギャップも堪らないんですけどネ」
「……?」

トロン、と濡れた瞳と唇が目に映り身体の中心が熱くなる。
確かに、普段意地っ張りな彼が快楽に飲まれて従順になる様子は酷く卑猥で。勿論そういう風にさせたのは自分だという認識もあるが、偶にはギルバートの方から欲しがって欲しいと思う瞬間もある。それが今だとするならば、と一度瞼を閉じて思案した。

「……ブレイク…?」
「……」

伺うような声が聞こえて目を開く。ギルバートの瞳には意思が宿っていて、少し時間が経ちすぎたかと眉を寄せた。

「どう、したんだ…?」
「いえ、別に?」

にこ、と浮かんできた策を見抜かれないように何でもないと笑みを浮かべ、彼の頬に口付を落とす。理性が戻ってきたギルバートの頬はそれだけで赤く染まり、やめろ、と身体を捻った。

「も、離せっ…っ!」

今更だと、益々笑みを濃くして彼の中心を強く握る。布地の上からでも僅かに熱を感じ、その様子に気づいたのかギルバートが強く自分の身体を押してきた。
それに構わず片手でギルバートの肩を壁に抑えつけ、片手は性急に布地の上から扱く。必死で自分を押し返していた手の力が抜け、歯を食いしばってそれに耐えているが、ガクガクと震える膝や漏れる声が限界に近いことを示している。

「も、やめッ…あ、…はァ…っあ」
「…あんなに拒絶してたのに、もうイってしまうんですカ?」
「い、っ、…あ、…ブレイクッ…はな、せッ…」

扱く手を止めさせようと重なる手。全く力の入らないその手を掴んで、己のモノを己で扱かすように逆に重ねて動かした。

「ひ、あ、あ、…やめッ…」
「もっと強く握らないと気持ちよく無いですよ?」

頭を左右に振って快楽から逃れようとする彼に、どうして素直に受け入れないのか、と理性なんて早く捨ててしまえばいいとそう思う。快楽に溺れながらも何時だって聞こえてくるのは拒絶する声。勿論、それが彼の本心では無いと解っているし、この行為に対して積極的では無いということも解っている。
しきりに漏れてくる声が一段と増して、そろそろかと彼の耳元に顔を近づけた。

「愛してますよ、ギルバート君…」
「っ、ん、アアッ…!」

びくびく、と身体を震わして達する。全く着崩れしてない服のままの状態とその悦楽に染まった表情が妙な違和感を引き寄せる。ふわ、と力が抜けギルバートの顔が肩に落ちて、耳元で呼吸を整えるように喘がれてぞくりと中心が慄いた。

「ベッド、行きますカ?」
「…っ、いや、だッ…」

まだそんな余裕があるのかと、彼の身体を全身で受け止め頭を撫でていた手が止まる。今や同じぐらいの身長の彼は正直重く感じるものの、支えきれないわけではない。仕方無いですね、と呟いてギルバートのベルトに手を伸ばした。

「な、にするんだっ、やめろっ」
「もー我儘ですねェ…ベッドが嫌なら此処でするしかないでしょう?」
「違っ、そういう意味じゃ無…ひッ」

ベルトを外し下着の中に手を潜り込ませ目当ての場所を見つけ出すと指の腹で強く押す。途端に暴れていた身体を固くするギルバートにくすりと笑みを零しながらツプリと指をナカへ入れた。

「い、たッ…ひ、動かす、なッ」
「乾いてて痛そうですが、でも良く無いわけでは無さそうですヨ?」

締め付けて離してくれませんカラ、と耳元で囁くと凭れかかっていた身体が離され指も角度を変えてナカを抉る。

「うぁッ…ッ」
「あぁ、急に動くからデスヨ?」
「お前がッ、あ、ッや、めッ」

壁に背中を当て悶えるように身体を捻るギルバートに目に毒だとこっそり心の中で呟きを洩らす。指の腹で前立腺を探りながら、動かし難い服を脱がせながらも拒絶にならない拒絶を繰り返す彼に溜息を零した。

「そんなに悪い子だと嫌いになってしまいますヨ?」



「え……」



呆然と愕然と目を見開き傷ついたかのように表情を無くすギルバートに動かす手が止まる。
別に本心では無く何時もの冗談のつもりだった。その一言で彼からの抵抗が一切無くなるとは思ってもみなかった。
基本、自分は情に弱いと認識がある。愛する者ならもちろんその情愛も深い。けれど捻くれた部分を持ちあわす自分もまた自分なのだ。

「良い子にできますカ?」
「…ん」

こくりと頷くギルバートに歪んだ笑みを隠すように手で覆う。ナカに入ったままの指を動かし、切なげに眉を寄せ傷ついたままの金の瞳に舌を這わす。

「っ…」
「…服、自分で脱げますか?」

頷く彼の表情は未だ暗い。安心させるかのように口付けると少しだけ表情が和らいで固く委縮していた身体が熱を戻した。
愛されている事もわかっているし、それを意地っ張りな彼は素直に口に出来ない事も知っている。そんな彼を愛おしく感じているし、だからこそ偶には自分自身にも快楽にも素直になれば良い。

「嫌われたくないのなら、素直に感じてなさい」
「…んッ……ん」

目のふちに快楽からか悲しみからか解らないが涙を溜めながらも、素直に上下する頭ににこりと微笑んで強くナカを抉った。









「ひ、んッ…あ、あ、っアア」
「気持ちイイですか?」
「ん、ンッ…い、イッ、きも、ち…イッ…」

壁に手を当て腰を突き出しながら、こくこくと頷き素直なままに声を上げるギルバートに、彼を貫いている自身の男根が脈打つ。

「あァっ…ん、イ、…あ、もっ…」

ギルバートも感じたのか逃げるように腰を引きつつも、うわ言のように気持ち良いと繰り返す。
壮絶、としか言いようがないその様子に負けてられないとばかりに両手で掴んでいる細腰を強く引き寄せ最奥を目がけて貫いた。

「ひ、アアッ!」

ポタポタと彼の精液が壁へと床へと落ちていく。達したばかりで愉悦に震える身体が崩れそうになるのを、突き上げを辞めない事で制する。

「あ、アッ、まっ…てッ、だ、め…アッ」
「ダメ…ですカ?」
「あ…」

しまったとばかりに声が漏れる。あんなに繰り返していた否定を何時まで押し殺すことが出来るのか、聞き洩らすことのないように気を張っていたところにようやく零した否定の言葉。
律動を止めて、掴んでいた腰から手を引く。繋がっているのは一部だけ。
さて、どうでるのか、と反応を窺うように恐る恐る振り返るギルバートに感情を殺して視線を受け止める。

「っ、……ごめ、んなさい…」
「何で謝るんです?ダメなんでしょう?だったら終りにしますか」
「違っ、ぶれいくっ」

快楽に濡れていた瞳が悲痛の表情へと変わりポロポロ涙を零す。見ていて痛々しいほどに悲しみに歪んだ表情に僅かな良心が痛む。
泣く表情も可虐心をそそられるが、別に泣かせたいわけでは無いと思い直しギルバートの腰に手を当てて男根を抜き切った。

「や、あッ…」
「…?」

床へと崩れ落ちるギルバート。最後の否定は抜くなとそういう事なのだろう。子供に戻ったかのようにしゃくり上げながら床に視線を落とし肩を震わす彼に、苦笑を洩らしながらその身体を後ろから抱き締めた。

「違いますよ…抜いたのは君が嫌いになったわけではなく、どうせならベッドの上で、と思っただけですヨ」
「…ッ…嫌い、に…なって、ない?」
「まさか、好きですよ」

やりすぎたかと反省する。振り向いたその顔は涙で濡れていて、頬に伝う涙を舐める。それにぎゅ、と目を瞑り、その瞼に口付けた。

「……本当…に?」
「……」

至近距離で上目遣いで尋ねられ、胸が締め付けられるように痛む。
酷く可愛いし、同時に酷く傷つけてしまったとも思う。正直、今すぐにも押し倒したければ、一日中かけて彼が嫌がるぐらいに愛の言葉を告げたい。相反する想いが交差して、ギルバートの問いかけに対して間が空き、それに対しても悲しげに俯く彼に自然と零れる溜息。

「っ、…ふっ、ぇ…」
「あー、もう…」

どうくれよう、この可愛い生き物は、と涙を零し始めた彼の頭を胸に引きよせ抱きしめる。成長して大人びた容姿になっても、素の部分は脆くて弱い。そんな彼を知っていたのに、こうなることなんて考えればあの時点で解っていたはずなのに嫌いになると告げて強行してしまった自分に対して心の中で悪態を吐く。
震える肩を優しく撫で、まだ達していない自分の状態を思い返し困ったと気付かれないように息を吐いた。
持ち上げてベッドに運ぶか、このまま床の上で続けるか。それとも泣き止むのを待つか。思案していると、胸に埋めたままのギルバートの頭が動いて腕の力を抜く。

「どうしました?」

顔をあげたその表情は迷子になった子供のようで。ちら、と下を向くと何かに決心したかのように自分の下肢の方へと顔を埋めた。

「…っ、そんなことしなくて良いです」
「ん、ふッ…」

何を思ったのか、未だ達してない自分のモノを咥えるギルバートに焦る。自分からする事はあるが、彼にしてもらったり、ましてやしてもらおうと促した事も一度も無い。初めてだろうにも関わらず、一生懸命それを舌で口でやりかたもわからずたどたどしい動きなのに一つ一つの行動に腰が揺れてしまう自分自身。
嫌われたくないと、その一途な想いが今の状況なのだろう。そんなギルバートに愛しさを感じて熱が中心に集中する。

「そんなことしなくても、ちゃんと好きですカラ…」

頭を撫でてつつ離れるようにそう促す。ちらりと咥えたままの状態で上目で見られて、中心に熱が溜まって無理やりそれから頭を引き抜く。

「あ、ッ…」

少し遅く、白濁の液体がギルバートの顔にかかり、その様子に達したばかりの中心がズクリと重くなった。
何度か瞬きを繰り返し、顔にかかったそれを手で掬ってぺろりと舐める彼。

「苦い…」
「当たり前ですヨ…何やってるんですか」

上半身の己の服でギルバートの顔を拭きつつ、これはもう此処でするしか無いと諦める。彼のあんな顔を見てしまった後ではベッドまで行く時間すら惜しい。
ある程度綺麗になったかと腕を離せば、不安そうな視線とぶつかりそのままの彼を床に押し倒した。

「私の事、好きですか?」
「…好き」
「けど私はギルバート君以上に愛してますから」

不安な表情のままのギルバートの唇に口付ける。湿った音が室内に響いて、待てないとばかりに彼の足を床に押し付けて濡れたソコに押し付けた。

「…っ、あ…」
「これからたっぷり教え込みますよ、この身体にネ」
「ひ、ああッ…あ、あ、アッ」

一気に挿入して最初から律動を激しいものへと変える。不安な色を浮かばせた瞳はそんなこと考えられないとばかりに閉じて、余裕無く嬌声をあげる。
まだ昼にもなってないそんな時刻。時間ならたっぷりあるのだからと、体力の持つ限り自分の気持ちを彼に伝える事が出来ればいい。
激しさを増す行為に、そう締めくくれば後は何も考えず腰を打ちつけた。














愛のあるイジメ




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