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■正直な身体 (オズギル)







ありえない、とその言葉が何度も頭の中を駆け巡る。

自分の身体は自分自身のモノではないかのように、熱くて指一本動かすことも億劫で。触れられる度に身体に何かが走ったかのような感覚。それは決して悪いものではなく、けど良いとも言い難い。
粘着質な音と、酷く高い声。これは自分自身から発しているものだと、気づいたのはつい先程だ。

「や、め…っ、あッ…オズッ…」
「何?今更止まらないし止める気もないよ?」


乱されたシャツの隙間から冷たい手が侵入してきて、突起したものに触れられる。摘んで転がされて、今まで感じたことの無い感覚に身体が跳ねた。
こんな自分は知らない、こんな主人は知らない。
薄く瞼を開いたその先には、何時も傍にいた彼は居なく、一人の男が居て。その男に触れられる度に上がってしまう息や声は自分が出しているとは考えられない。
これも全ては、自分の勘違いから始まった事だと思えば遣る瀬無い気持ちでいっぱいだ。




面倒だと珍しく素直な感情を顔に浮かべて、ギルバートの上から退くオズ。安堵する気持ちと疑問とが交差してベッドの上で寝転がったままのギルバートを起き上がらせて、窘めるかのような表情を浮かべながら口を開いた。

「あのね…どうしてそうなるのさ?ギルはオレの事抱きたいの?」
「抱、抱くっ!?まさかっ!」

ブンブンと音さえ聞こえそうな程強く頭を左右に振り否定を示すギルバートに少しだけ笑みを浮かべるオズ。それもすぐさま取り払って、表情を真剣なモノへと変えながら尚も言い聞かせるように言葉を続ける。

「じゃあ、まさかオレがお前に抱かれたいとでも思ったの?」
「…ッ……そ、それは…」

オズの言葉に居心地悪そうに目線を逸らす。まさにその通りで、でもそれは違ったみたいだとようやく気づいた時にはもう遅く。少し離れたベッドの上に座るオズの空気がガラリと変わり、冷や汗さえかきそうなこの状況。
怒らせてしまった、とやはり従者としては遣り切れない現状にかける言葉も見つからず上半身を起してベッドの上に正座する。

「ふーん…それで、何でオレの所に来たわけ?気持に応えようとオレを抱きに来たの?それとも、まさかオレの気持ちには応えられないと言いに来たとか?」
「……いくら考えても俺は、お前を、抱、抱くとか、そんな事は、無理だと思った。けど、お前の事を主人としては好きだから…」
「後者の方ね…逆は全く考えて無かったわけ、か。でもじゃあなんであんなに気持ちよさそうな顔してたのかなぁ?」

その言葉が理解できず首を捻れば、にやり、と人の悪い笑みを浮かべて近づくオズに自然と恐怖を感じて後ろに下がる。酷く懐かしいその笑みの先には、自分にとって良くないことが起きると頭ではしっかり理解していて。けれど自分の勘違いから招いてしまったこの状況に最善の策は全く浮かばない。

「解んない?キスしてた時、気持ちよさそうにしてたけどね」
「なっ、何…」
「ま、ギルは心は鈍感だけど身体は素直みたいだから?直接解らせてあげよっか」

ニコリ、と天使のような微笑みの裏に隠された黒い部分に、ヒッと声を上げながらも覆いかぶさってくるオズに為す術は無かった。







「ギル…感じやすいね…もうこんなになってる」
「ひ、アっ…」
「……可愛い」

ずり下ろされた下着から飛び出てきた自分のモノを上下に扱き先端を弄られる。トロトロと零れてくる蜜を指で掬われて、剥き出しの胸元に塗りつけられた。

「ぅ、ア…」
「こんなんでも感じちゃって、この先もつのかなぁ」
「…な、に…?」
「意識飛ばさないようにしないとつまんないからね」

オズの言っている言葉の意味が理解できない、とそんな表情を浮かべていた所為か、にっこり頬笑みを浮かべながら頭を撫でてくる。一体、どうしてこんな事に、と与えられる感覚に思考は止まったままだ。

「ッあ!痛ッ、や…め…」

ぎゅうっと自分のソレを握り絞められて思わず痛みに思わず声が出る。あまりもの痛覚に生理的な涙が一筋零れ落ちた。

「ゴメン。でも、イきすぎて失神とか洒落になんないし…それにオレ…」
「ッ……?」
「好きな子には虐めたくなるんだ」

覚悟して、って言ったでしょう?と、握られたままの体勢でふわりと耳元で囁かれる言葉に体中が熱くなる。オズの言葉に何も返せずにいると、耳もとでクスリと笑われてビクリと震える身体。自分の身体が全身敏感になっているみたいで、彼が何かする度に素直に身体は反応してしまう。まるでソレを望んで、悦んでいるかのようで、その事実に突き当り愕然とした。

「ギル…口開けて?」
「?…んッ…」

目の前で優しく穏やかに微笑む彼に何も考えれなくなる。自然と促されるまま口を開けば、ヌルリと入り込んでくるオズの舌。ねっとり濃厚な口付に、色々な疑問が浮かんでは消えていく。もうこのまま流されてしまいたい、と、既に流されている状況なのにも関わらず、与えられる行為に身体だけではなく心までもがオズに傾いていて。

「ふ…んッ…んン…」

気持ち良い、確かにそう思えて。触れる唇の柔らかさだとか口内で動き回る舌だとか、その行為の心地よさに頭がぼんやりと動かなくなり、何も考えずいつの間にか脱がされ剥き出しになった腕をオズの首に回す。薄く目を開ければ少し驚いた表情の、それでもすぐに微笑むオズに何だか心が暖かく感じて、もっと、と強請るかのように頭を引き寄せた。

「ん、はァ……ッ…」
「気持ち良い?」
「ん…」

可愛いなぁと、頭上で声が聞こえるが、優しく頭を撫でられる感覚にうっとりと瞳を閉じた瞬間、未だ握られたままのソレを上下に動かされて身体が大きく跳ねる。

「や、やめッ…ッ…ぅあッ」
「気持ち良いでしょ?」

確かにキスは心地よく気持ち良いと感じるものの、今与えられている感覚は心地よさとは無縁で衝撃に近いものだ。動かす腕を止めようと手で押さえるものの力が完全に抜けきって正直意味は無く。激しいまでの悦楽に頭を振ってそれを遣り過ごそうと努めて見ても、次に与えられた行為に頭が真っ白になった。

「痛っ…や…いた、い…オズッ…」
「んー?もうちょっと我慢して…確かこの辺…」
「ひッ…ぁ、ッ…痛っ」

ぐりぐりナカを抉るかのように一本の指がありえない場所へと入っていて。自分のソレを扱く手は止まず、けどもう一つの手の指は何かを探るかのようにナカを動き回る。痛さと羞恥と、もう自分でもよくわからない感覚に目の前がぼやけてくる。

「や、だ、いた、い…ふッ…」

自分の両腕を胸に抱きしめながら無情にも与えられ続けるその痛みと未知への恐怖に耐えきれず、ふえ、と涙が溢れてくる。何で、何故、と弱りに弱りきった自分の脳内はその答えを見つける事は出来ない。

「あぁ、泣かないで…ギル」
「オ、ズ…」
「困ったな…まさか初めてだったなんて…キスだけであんなエロい顔してるし現にさっきまであんなに色気ただ漏れで煽ってくるものだから、てっきり慣れてるもんだと思って」

しゅんと困惑気味で語るオズの言葉にぽかんと口を開くもそれに対する返答が浮かばないし、正直少しだけ悲しくなる。まさか実はもう別の誰かに抱かれていたとかそんな風に思われていたなんて、とまたホロリと目尻に溜まった水滴が頬を伝う。そして何より、申し訳ないとそんな表情を浮かべつつも、後ろを弄るのをやめないオズに悲しみよりも怒りが溢れてきた。

「も、やめろッ、痛っ…いッ…っ、あッ!?」

止めさせようと、上半身を起き上がらせた瞬間に背筋を通る強烈な何か。ビクリ、と身体を反らして起き上がりかけた身体はそのままベッドに逆戻りする。

「見つけた」
「ひ、あっ…あ、っや、ッ…?」

何が起こっているのかよくわからない。ある一点を集中的に押されその度に身体は跳ね上がる。何でそんな所、と疑問すらも浮かばないほどの悦楽に萎えかけたそれは心なしかまた元気を取り戻していて。

「此処ね、前立腺。男でも気持ちいんだって。医学書も読んでて損は無かったなぁ」
「あ、やッ、…く、ッ…ぅあッ」

この状況にそぐわないのんびりとした声が通り抜ける。何故医学書までもを読んでいるのか、とか、何でそんなに余裕なのか、と突っ込みさえいれる事さえできない現状。ぐちゅぐちゅと粘着質な音が止んだかと思えば増やされた質量と共にまた室内に響き渡る。自分の聞きたくもない甲高い声とともに。

「気持ちい?いいよね、だってギルの此処、こんなだもん」
「ふ、あッ…ッ…やめッ…」
「ウソ。気持ちいいんでしょ?ほら」
「ひ、ああぁっ、アっ…!」

嬌声がより一層強まったかと思えばつま先から頭の天辺までを突き抜ける快楽。身体は大きく跳ね胸に抱いたままの腕が痙攣するかのように震えた。
白濁の液体が自分の腹の上に飛び散っている。荒く呼吸を繰り返しながらも、増やされた指は止まることなく動きその度に小さく漏れる声。
半ば呆然と、達したばかりで何も考えたくないほど疲れているのに、止まらないどころか動きが激しくなってくる指にわけも解らず彼の名を呼んだ。

「どうしたの?怖くなった?」
「っ…」
「ま、これからだから、本番は」
「なっ…!?」

爆弾発言に大きく目を見開く。これ以上、一体何がと、考えれば解る事なのに動かない頭は答えを導かない。動揺していると指を引き抜かれそのままオズが近づき、ちゅ、と額に口付られ思わず目を閉じる。指を抜かれたことの安堵感は、先ほどのオズの言葉のおかげで心の底から喜べることではなく。次は何が、と身構える自分に優しく口付けを落とすオズ。

「ギル…目、開けて」
「ん、…?」

瞼に口付られて、少し窺うかのように促されるまま目を開く。開いたその先には何時ものオズの笑顔。自分が好きだなと感じる瞬間のオズの表情に、同じように口元を緩める。

「ギル、オレのこと好きだって気づいた?」
「……ん」
「身体は正直なのに、ね。まだ解んない?」

指で胸の上の赤く染まった粒を弾かれ思わず声が出る。自分の声にかぁ、と頬を染めつつも、尋ねられたその言葉について思い巡らす。
オズの事は好きだし、けど性の対象としては見れない、とそう結論を出したはず。けどそれは自分がオズをどうこうしたいとそう考えれないだけであって。逆にオズからの行為は実際、幸せな気持ちにもなれるし、けど不安な気持ちも勿論ある。主人の気持ちに応えたいと思うが、本当にそれが良いのかと問われれば違うと思う自分もいて。正直、本当によくわからない。
ぐるぐると思考に耽っていると、軽く息を吐く音が聞こえて焦点を戻す。仕方がないな、と苦笑を浮かべながら、両頬に手を添えられ触れるだけの口付を一つ。

「ギル…考えるんじゃなくて、感じたままの答えは?」
「感じた…まま?」
「そ、好きか嫌いか…さぁどっち?」

そんなの答えは一つしかない。これでは今まで自分が悩んで過ごしてきた時間が全くの無意味で。眉を寄せながら反論すべく口を開きかけた瞬間、唇が押しあてられる。先程とは違う深くて濃い口付けが頭の中の靄を薄くさせ反論する気も失せて自らも舌を絡ませた。

「ん…ン……はァ……」
「どっち?」

どれぐらいの時間が過ぎただろう。握りしめたままの乱れたオズの服は皺になってしまっているだろう、と遠くの方で考えつつも、長く濃厚な口付けにぐったりとけど心地よく、ぼんやりと目を開けて小さく息を吐く。再度投げかけられた問いに、薄く笑みを浮かべて呟いた。

「…横暴、だ」
「知ってるでしょ」
「あぁ…もう、解っているんだろう?」

好きか嫌いかなんて、目の前の主人は解りきっているはず。嫌いであればこんな行為を受け入れているはず等無い。好きだからこそ、彼に惹かれているからこそ、再度、従者に戻りたいと告げた時も当の本人が一番感じているはずで。
頬に添えられた手がいつしか両足を掴まれてて、自分のその格好に顔が熱くなる。

「言葉って重要だよ?ギルがもし、従者だから、とかそんな事を考えて受け入れてるならもう触れない」
「っ…」
「ギル自身がどう感じているか、だよ」

オズの指で解された部分に当たる熱に身体が震える。これから行われるであろうその行為は、自分の一言で決まるのだ。
卑怯だ、と心の中で呟いた。自分が肯定しても否定してもどちらとも都合が悪い。肯定すればそのまま貫かれるだろうし、否定すればもうオズは触れてこなくなる。後者はもう従者としての存在も危うくなりそうだし寧ろ触れられないというのは寂しい。前者は未知の恐怖が待っている。
腹を括るしかないのだろう。残された道は一つしかない。恐怖に囚われて大きな過ちをしてしまうよりかは、先へと進んだ方がまだ良い。
ハァ、と大きくため息を吐いて、オズの首に腕を回す。

「…好きだ」
「オレも、愛してるよ」
「なっ、…ッ、ぅああっ!」

その言葉に身体が熱くなる、と同時に襲ってくる衝撃。貫かれ、始まった律動に絶えず嬌声や粘着質な音が室内を響かせて。
その言葉の重みだけが頭に残って、それは何だか温かく幸せな気持ちにさせて、後りは全て消えた。








「腰が痛い…」
「ギルが悪いんだよ。初めて、のくせに煽ってくるし。オレ、若いんだからあんまり我慢出来ないよ」
「煽っ!?…ッ…次は加減してくれ」
「もう次のお誘い?ギルったら積極的」
「…会話にならない」

シーツに包まりながらベッドの上で自分の両足を抱えその上に顔を乗せる。動けない自分とは違いもう服を着て元気なオズに悪態を吐く。
あの後の最後の方の記憶は無く、残ったのは気だるさと心の中に残った温かさ。残ったモノがそれだったのなら、これで良いのだろうと、どこか遠くで安心する自分。

「ま、これでようやく恋人関係ってわけだから…」
「…?」

ふと近くに気配を感じて頭を上げると、幸せそうな表情のオズの顔。オズが幸せなら自分も幸せだな、と考えていると。

「っ!」
「ま、これからも覚悟しててね。ギル」

手を取られその甲にキスをされる。優雅で完璧なまでのその動作。
顔をあげたオズのニヤリと口元を釣り上げた笑い方に、羞恥心で震える身体。

「……も、どうにでもしてくれ」

結局、最初から彼の中ではこの道筋を知っていたのでは無いかと思ってしまう。余裕さえ見えるオズに諦めたかのような言葉を吐き捨て、真っ赤に染まった顔を隠すかのようにまた抱えた両足に顔を埋める事しか出来なかった。


















策略




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