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□延長線上 (ブレギル)







出窓からの強い日差しで目が覚めた。

ぼんやりとまだ覚めきって無い頭を緩く振りながら上半身を起き上がらせる。ふと、何かの気配を感じ隣に目を向けた。


「……ブレイク?」


何故、自分のベッドにブレイクが寝ているのだろう。何故、自分は裸なのか。と、思案していると昨夜の記憶が急に蘇り、数センチしか離れていないブレイクの傍から慌てて距離を取る。

無意識にずり落ちたシーツに手を伸ばして胸元まで引っ張り上げた。


「ん…寒、いですよ…」


自分の元へと引っ張り過ぎた為か、隣で眠っていた筈の男から機嫌の悪そうな声が聞こえるが、しっかり着こんで眠る男と裸の自分とどちらが寒いかといえばもちろん後者で。寒いのはこっちの方だと、けれど怒りよりもまず昨日の今日でのこの状況に朝から鈍い回転しかしない頭はぐるぐると混乱中だ。


(確か昨夜は…色々と言ってしまったはず…)


自分が今まで溜めていたいた想いを、本人であるブレイクに告げざる終えなかったあの状況。寧ろその状況を作り出してしまったのは紛れもなく自分自身。穴があったら入って埋まってしまいたいと、後悔してももう遅い。現にこの半端ない腰の痛みも、胸元に散らばる紅い印もそれが全て事実だと訴えているのだ。
もぞもぞと隣で動く男が起き上り、欠伸をしながら大きく伸びをしている。何で昨日の今日でこんなにもゆるい行動をしているのかと、自分は内心逃げたくて逃げたくてたまらない状況だというのに。
半ば自棄になってシーツを隣の男から奪い取るように身体に巻きつけた。


「おはようございます。朝から刺激的な恰好ですネ…まさか、あれだけシタのにまだ足りなかったですか?」
「ハァ!!??」

「いやー昨日のキミは中々ヨカッタですよ?最後の最後まで私のを締め付けて離さないんですから、よっぽど私の事が好きなんですね」

「な、なっ…」

自分のナカがどうとかこうとか、そんな事は知らないし気づけない。寧ろ自分の気持ちすらこの男にとっては自分を弄るネタになってしまっている事実に、怒りが半分羞恥心が半分で顔に熱が集中する。

本気になってしまった自分が悪いのだということは解っているし、この感情を相手に受け入れて貰おうなんてこれっぽちも思っていない。あの時は自分の感情が見破られてしまい、仕方なく口に出したまででそれを別にブレイクにどうこうして貰いたいわけではない。


「まぁ、冗談はこの辺で…昨夜の話の続きでもしましょうか?」
「っ…いや、別に良い」

「……昨日も言いましたが、また勝手に決め付けてるでしょう?それに君に私の何がわかると言うのです?」

「…っ」

若干低く暗い声に不覚にも身体が身震いする。顔は先程からずっと心の中の恐怖心の所為なのか見ることが出来ない。

ブレイクの言ったとおり、この男自身の事は何も解らない、何も知らないし聞こうともしない。自分たちは互いに利用するだけそれだけの関係性でしか無いのだから、その他の感情は不要なのだとずっと言い聞かせてきた。それが当たり前だと思ってきた。


「…悪かった」
「何に対しての謝罪ですか?まぁ多分それも見当違いでしょうけどね。どうせ、言ってしまって悪かった、でしょう?」
「……」


ぎゅ、と身体に巻きつけたシーツを握りしめる。何で自分にはこの男の考えていることがこの男からしてみればみれば解っていないとの事なのに、この男は自分の考えていることが解ってしまうのか。歯痒い気持ちのまま、少しだけ顔を上げれば、そこにはにっこり笑みを浮かべた何時ものブレイクの顔。


「うわッ!」

思ったよりも至近距離でのブレイクの顔に驚き声を上げながら後方へと身体をずらすが、ベッドフレームが背に当たり男の顔を直視してしまう。


「次は、どうして解るのか、ですか?君はね、顔に出やすいんですよ」
「っ、んッ…!」


顎を取られ頭を引き寄せられて、避ける事すら出来ずに口付られる。短く、けど深いキスに頭が真っ白になった。


「君は余計な事はあまり考えない方が幸せに生きられると思いますよ?まぁ、言っても無駄でしょうけど」
「っ、…何で…何でこんなことを…」


離れた瞬間に自分の口を手で覆い、呆然と呟く。情事の時以外でのキスはこれが初めてで。昨日は途中まで、自分が促さなければしようともしなかったのに。

意図が読めないこの行為に、この行為によって顔に集まってきた熱に、目の前が暈やけてくる。


「あぁ、泣き虫さんは卒業したのでは無いのですか?まぁ、私の所為ですけど」
「う、るさいっ…何で、こんな事するんだッ」


君も大概、鈍感ですね。私もでしたけど、と続けられた言葉と共にまたブレイクの顔が近づいてきて目元に口付される。ポロリと零れた滴を舐めとられ、その感触にブルリと身体を震わせた。






「私も、君と同じですよ。ギルバート君」























『悪ふざけの延長戦』の補足的なモノ



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