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■悪ふざけの延長線 (ブレギル)









「あ、やめッ…!」


しん、と静まり返った暗闇に小さく怯えた様子の声が響き渡る。

それと同時にちゅ、と湿った音と共にまた嬌声が上がり、ブレイクは自分の腕の中に納まる子供に笑みを浮かべた。


「初々しい反応ですネェ…もっと苛めたくなるんですが」


解ってますか?と目線で問いかけると、見上げるその瞳は理解ができないと大きく見開かれ、目尻に溜まった水滴が重力のままに零れ落ちた。


子供、と言ってもあくまでもブレイクからしてみれば、だ。腕の中にいる青年は身体も心もあの頃よりずっと逞しくなった。身長だってこのままいけばいずれかは自分を追い越すほどの成長スピードだ。いつまでも自分の好きなようにはできないだろう、その事実に少しだけ身体が重くなる。


(私も…堕ちたものですネ)


最初はただの悪ふざけだった。何時ものように弄りがいのある彼をとことん追い詰め、過剰な反応をするその様子を見て楽しんでいただけだった。いつしかエスカレートし、無理やり酒を飲ませた所、あまりにも色気が増大し据え膳食わぬは、と美味しく頂いてしまった事がきっかけだったのだろう。

しかし何時のことか、現状に対し行く末に対し弱りに弱り切っている彼に対して自分の中でナニカが目覚めた。それはあっという間に自分の中で増大し続け、戸惑いを覚えることよりも先にどういう策略の下で彼を自分のモノにする事を考えていた自分に気づいた。


「恋って何なんでしょうネェ…」
「っ、ぁッ…?」


細長い彼の両足を大きく広げシーツに抑えつける。それほど柔軟では無いのだろう、眉を寄せ苦しげに喘ぎながらも、自分の独り言のような言葉に閉じたままだった目が小さく開いた。


「な、に?」
「何でもないですヨ?私の事を気にする前に…そろそろ入れますけど大丈夫ですか?」
「ぅ、アッ!」


ぐちゅ、と卑猥な音と共に彼の身体が大きく跳ねる。何時まで経っても慣れないこの身体が壊したくなるほど愛しくて、その大きな感情のままに突き上げた。

挿入の独特の感覚にぎゅっと閉じた瞼。感覚に慣れる為か必死で息を繰り返している青年に、待つ時間も惜しむかのように律動を始める。


「アッ、待ッ、て、やッ、アッ、あッ」

律動と共に嬌声を上げ頭を左右に振りながらその行為を受け入れる彼に対して、一体どこまで許されるのかと、もっと酷くしたら彼はどうなってしまうんだろうと、ぼんやりとした頭で考える。

ふと、彼の腕が自分の首に巻きつき引き寄せられ挿入が更に深まった。

「ひ、あ…はァっ、んッ、ぶれ、いく…」
「どうかしました?」


根本まで飲み込み、その熱さに顔を歪めながらも、必死で自分の名前を呼ぶ彼に優しく尋ねる。汗で額に張り付いた黒髪を手で払い、その額に口付けしつつ彼の金色の瞳を見つめた。

「ブレ、イク…」

言葉を濁すかのように名を呼んだ後はぎゅっと唇を閉ざしてしまう。不機嫌そうに見えるのは思い違いではなさそうで。
不思議そうに首を傾げていると、目線も顔ごと逸らされ端整な横顔と共に首筋が目に入る。思わずその首筋に喰いつくように唇を寄せて吸いつくと、切ない嬌声が聞こえズシリと身体の中心が更に重く感じた。

「ぅあッ!おま、えっ」
「いやー私もまだまだ若いですね」


膨張した自身を内壁で感じて、ギロリと自分を睨みつける彼。頬を染めて涙目なので威力は半減なのだけど。

そういう表情が煽っているっていうのを何時までも学習しないんですから、と心の中だけで呟いて、止まっていた律動を繰り返す。途端、切なげに眉を寄せた彼に違和感を感じて、その律動を中断させた。

「どうしたんですか?痛くは無いですよね?此処、こんなですし」
「やッ、ァ、やめろ、バカっ」


見せつけるかのように彼自身を握りこめば、可愛くない言葉が返って来て思わずにっこり微笑む。


「馬鹿とは酷いですねェ?折角、君が何か言いたそうだったから止めてあげたのに…このまま今思っていることを言わないようであれば、明日は動けない身体になってるかもしれませんよ?いや、明日だけじゃなく明後日カモ?」


青筋を立てて笑みを浮かべたまま凄めば、ひ、と声を漏らして眉を垂らして怯えた様子で窺うように目線を合わせてくる。一々煽らないで下さい、と呟いて、彼の一瞬の恐怖を取り除くべく、その薄い唇に吸いついた。

「ん、ンッ…はぁ、んッ」


薄く開いた口の中に舌を潜り込ませば熱く濡れた彼の舌と触れ合う。珍しくも積極的に舌を絡めてくる彼に違和感の正体が掴めた気がして、同時にありえないとその考えを一笑した。けれど、夢中で舌を差し出す彼に、首に回った手がもっと、と強請るかのようにきつく引き寄せられる感覚に、先ほどの考えを呼び戻す。


(そういえば今回はこれが初めてのキスですねぇ…やっぱり彼が不機嫌だった理由は……)


ちゅ、と音と共に離れる唇を追いかけるようにして彼の赤く染まった舌が追いかける。完全に離れてしまった唇を、ギルバートは少しだけ切なげに眺め、しかしすぐにハっとした様子で首に回していた腕を外した。
一部始終を冷静に観察していた自分は、照れたように目を閉じる彼を見て確信に近いものを感じ取った。


「そーゆー事ですか…君は、」
「言うなっ、解ってるから…解ってる、から…」

「ふむ…解っているとは、自分の気持ちですか?それとも」
「っ…両方だ…解ってる、お前が…遊びでやってるのも…俺だけ…本気に、なってるのも」


最後の方はか細く聞き取れないぐらいに弱く悲しい声だった。ぎゅ、と目を瞑り眉を切なげに寄せる彼に、自分との行為で今まで彼をどれ程傷つけてきたのかを思い知らされた。

正直何時から、という疑問もある。月に一度会うか会わないかの自分たちに明らかに嫌ってますと顔に張り付けた彼。まさか好いていてくれて、しかも恋愛感情の方だなんて信じ難い。


「私が君の初めての男だから、それで勘違いしたのでは?」
「違う…もう、いいから…続けてくれ」


暗にその話題はもうお終いだと、逃げる彼をそう易々と逃がせはしない。少し意地の悪い質問だったとも思うし、薄ら目を開けて笑いたくもないのに作り笑いを浮かべる彼に苛立ちも感じる。そして何より、自分の考え感情を勝手に決め付け、無駄に傷ついている彼をこのままにしてはいけないと心が感情が叫んでいた。


「私の感情を勝手に決め付けないで欲しいですね」
「……けれど、事実…だろ?お前、ずっと服着たままだし…それに…」
「それに、なんです?」


服は脱げない理由がある。それだけは今はまだ譲れない部分だ。いずれは知ってしまう時もくるだろうけれど、今はその時ではない。
その他で変えれる所があるのであれば、と続きを促すかのように顎に手をそえクイ、と持ち上げた。

「それに…前にお前、俺で遊ぶのは愉しいって…」

「…それは普段、君を苛めて遊ぶ行為の事を示していたのでは?」
「違うっ…その、終わった後に…そう言ってた…」


セックスの後ですか、と足りない言葉を付け出せば直接的な言葉に顔を赤面させてこちらを睨みつけながら頷く彼。

正直あまり記憶に無いけれど、それが原因であれば彼の中の結論にも同意できる部分もある。


「それはすみませんでした」
「………」
「なんですかその顔は。私だって悪いと思えば謝りますけど?」


驚いた表情で見つめてくる彼に苦笑を漏らしつつ、最初の頃に感じていたモヤモヤとした気が晴れている事に気づいて笑みを深める。それと同時にいまだ彼のナカに入っている自分自身が我慢の限界だと言っているようで、仕方ないですね、と心の中だけで呟いて律動を再開し始めた。


「ぅアッ、あっ、ちょ、ッツ、まっ、て」
「スミマセンが話は終わった後にたっぷりと。今は、私の愛情を身体全身で感じてナサイ」
「え…やッ、アぁっ、アッ」

一瞬その言葉に驚いた表情を、すぐさま快楽の表情へと変わっていく彼に、翻弄されているのは自分ではないかと感じつつもそのナカを抉るように突き上げ絡みついてくる内壁に持って行かれそうになるのを抑えるかのように激しく腰を打ちつける。彼の嬌声が濡れた音が部屋中に響き、シーツの上で乱れる身体が快楽に染まった顔が自分を煽る。

(やはり君は私だけのモノにしたいですね)


行為が終わった後は彼が嫌がるくらいに愛の言葉を囁き続けるだろう。彼が悲しんだり傷つかない為には自分の過去や抱えているものすら見ない振りをするだろう。


それだけ、手放せない存在になってしまっているのだから。


(彼の主人がこの世界に戻ってくるまでは…)



律動の最中、少しだけモヤモヤとしたモノがまた生まれそうになる気配を察し、今は彼を感じることだけに集中した。














鴉が多分18才ぐらいの頃(適当)



あきゅろす。
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