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■どっちが!?












「いくよっ」
「ちょ、痛っ…ぅあっっ!」

室内の窓からは明るい日差しが射しこめていて。その中、嬉々とした声が聞こえ柔らかなシーツに無理矢理押し付けられる。その細い腕のどこにそんな力があるのか、両足を大きく広げられて持ち上げられてその上から圧し掛かられた。
自分よりかなりの身長差がある主人に抑え込まれ、柔軟では無い自分の身体は悲鳴を上げる。更に掛け声と共に入ってきた主人の陰茎。痛みに顔を歪めていると上から小さく笑い声が聞こえ視線を上げる。恐ろしくも綺麗な笑みを浮かべた主人が、小さく厭らしげに目を細めたのを見てかぁ、と顔が熱くなった。


主人であるオズとこういった関係になったのはつい最近。彼がアヴィスから戻ってきてからすぐの事だ。
いつもべったりくっ付いていたアリスから珍しく離れて自分の元に来たと思えば、ムードも何も無くキッチンでのいきなりの愛の告白。10年間想っていた自分とは違い、彼が自分の気持ちに気づいたのは昨日だと、そう告げられて思わず立眩んだ。ふらついた自分の身体を支え、時間は関係無いよ、とそう一言。自分の気持ちを解っていたのだろう、慰めるような労わる様なそんな声色でそう告げられて。けれど、どこか断ることを許されない雰囲気にその告白を承諾するしかなかった。


決して主人から少なからず想われている事実が嫌だったわけではない。ただ、先日気づいた、というオズの言葉に心から喜べるほど純粋では無くなってしまっただけで。その告白の言葉が、お腹すいたーとか眠い寝る、とか、そんな日常会話のようにあっさりと告げられたものだから、正直、本心なのか冗談なのか主人なのにも関わらず疑ってしまっただけだ。
あれから数日しか経ってはいないが、もうイヤというほど十分に愛情を身体で示され、少しでも信じていなかった自分が間違っていたのだと何度も何度も厭きるほどに教え込まされて。それでもまだ圧し掛かってくる主人を拒絶することも無駄だと悟ったのは昨日。そして今も尚、よくも飽きずに自分の身体を抱けるものだと感心しつつ、どうしてそんなにも余裕があるのかと、10年前は微塵も感じなかった色気が何故こんなにも溢れているのかと、少し疑問に思いながらも行為に身を任せる。


「何、ギルってば考え事?真っ最中に?随分、余裕だね」
「っ、ぁ…ちがッ…痛ッ」
「痛いのが好きなくせに」
「なッ…ぅぁッ」

ギリギリまで抜かれて一気にまた奥へと押し入る。苦しくて痛くて、厭きるほどしているというのに、まだ慣れない痛みにシーツを握りしめて耐える。最後の方は痛みにも慣れてまだ楽なのに、と、目を閉じ歯を食いしばりながら漏れそうになる悲鳴を噛み殺す。

「ギール?口、開けて?」

律動が止まったかと思えばそう話しかけられて閉じていた瞳を薄ら開く。自分の好きな、オズの優しい表情。これも惚れた方の弱みなのか、その表情にうっかり絆されて素直に口を開けば主人の指が口の中に入ってくる。
しまった、と思った時にはもう遅く。主従関係である自分が主人であるオズの指を噛むなんて事は出来ないだろうと、意地の悪い笑みを浮かべるオズに、この姿こそが本物の主人なのだと、また騙されてしまったとばかりに恨めしげに睨みあげた。

「な、にんんにゃっ…」
「何すんだって?可愛いギルの声を聞くためだけど?」
「っ!?」

何を言っているんだと、あの頃の自分に比べて今はもう大人でそれなりに低い声なのに、とオズの台詞に何も返せない。寧ろ、反論したところで上手く流され返され、結局は主人の思い通りに進むだけなのだ。
ならばと、今まで大人としての威厳や小さなプライドを早々に捨てた方が楽だと、諦め半分強制半分で口内を動き回るオズの指に舌を這わせる。

「っ、ギルってば…もう待てないの?」
「んなッののないッ…ふ、っアッ!」
「そっかーゴメンなー焦らして」

違う、と頭を左右に振っても確信犯の笑みを浮かべるオズは半ば性急に律動を再開させる。
15歳とは思えない主人のソレが容赦なく自分のナカで暴れ、相変わらずな痛みに自分の足を支える主人の手を上から握りしめる。
やめてくれ、と、せめてもう少しゆっくり、と、言葉にならない声が室内に響き思わず自分の声に赤面した。

「片手だと動きずらいなぁ…ギル、片足自分で持って広げてよ」
「ゃ、あッ、いッ…んにッ」
「…無理じゃないよね?ギルならできるよね?」
「んぁッ…ぅ、いッあ、ひッ………ンんッ」

ナカを勢いよく抉られ、口内に入っている指で舌を抓まれて、更にニコリと笑いながらの脅迫。ブランクはあったものの長年染み付いてきた従者としての性質上、その言葉に逆らわない方が身のためだと大人しく頭を上下に動かして。羞恥でどうにかなってしまいそうだと思いつつも、目の前の主人の恐怖に比べたらと、自分の右足を片手で支えてそのまま右へと広げる。

「イイ子だね、ギルは」
「…………ン…」
「ご褒美あげなきゃ、だね」
「ひゃ、ああぁッ…!!やっ、アッ、やッ、ゃ、えッ」

一瞬、主人がまた天使のように、と思えばすぐにガラリと悪魔のような笑みを浮かべた男に変貌する。途端にある一点ばかりを狙うかのように突き上げてくるオズにどこがご褒美だと、反論すらできずに喘ぐ事しか出来ない自分。
ふと、喘ぎながらいつの間にか痛みは薄れ、全身に痺れるような感覚が走っている事に気づく。その自分の身体の変化に頭が真っ白になる程の気持ち良さに、戸惑いながらオズの顔を伺った。

「ん…?知らなかった?ココ、ギルのイイところ」
「ふぁ、アッ、や、あぁッ」
「ま、何時もココ狙えば最終的に意識飛んじゃうから覚えて無いのも仕方無いかもねー」

主人の台詞が遠くの方から聞こえてくる。にこやかに笑いながらも律動を止めないオズの顔が段々とぼやけてきて、突かれる度に頭の天辺までを突き抜ける快楽に身を捩る。
何も考えられない、何も考えたくない、それぐらい全身に広がる痺れや疼き。的確なまでにソコを狙って激しく腰を動かすオズの顔が酷く真剣な表情へと変わっていて、自分だけでは無いんだと、オズもちゃんと感じてくれているんだという事実に胸が締め付けられる。

「あぁ、あッ、オ、オズッ、ア、んッ、オズッ、アぁッ」
「可愛いなぁ…こうなっちゃうと止められ無いんだよなぁ」

いつの間にか口内に含まれていた指が無くなっている事にも気づかずに、振動のまま快楽のままに声をあげる。自分の片足を支えていた力の入らない手はど何時しかシーツに落ちていて。
ソコを突かれる度に自分が自分で無くなる感覚。もっと、もっと欲しいと、オズの腰に足を巻きつければゆるりとその足を持たれてまた押さえ付けれらる。もどかしいとばかりに頭を振れば、どこか苦笑混じりの主人の声を最後に、理性が消えた。






「はぁ…」

身体全身の重さに溜息を洩らしつつ痛む腰を押さえて立ち上がる。ナカからトロリと零れる白濁の液体に顔を顰めながら、床に落ちてしまっているシャツを拾い上げて羽織った。
ベッドを振り返れば気持ちよさげに眠る主人。結局、途中からの記憶が全く無いのは何時もの事で。またどうせオズが随分と無茶をしたんだろうな、なんて思いながら彼の頬に口付る。

「寝込みを襲うなんて大胆っ。ギルってば何時からそんなやらしい子になっちゃったの」
「っ、オズ!」
「…何?朝っぱらから大きな声…いやもう夕方かぁ。いやー時間が経つのは早いなぁ」

上体を起こしながらのんびりと欠伸をするオズの台詞に、先程までの行為を色々と思いだして顔に熱が集中する。長時間寝ていたのだろうか、それとも長時間もの間、行為に没頭していたのだろうか。それは主人に聞くまでもなく自分の身体の重さが教えてくれる。

「湯、浴びてくる…」

記憶が飛んだ時の自分を想像したくないとばかりに、無理やり会話を終了させてシャワーを浴びに部屋から出ようとする自分。その後ろから優しい声色で呼び止められて、思わず振り返った。

「ギルが俺の事、愛してるのは十分解ったから、今夜はもうちょっとのんびり苛めさせて、ね」
「ッーー知らんッ」

必要以上に大きな声で、大きな音を立てて扉を閉めて寝室から抜け出す。きっと笑っているだろう、主人の声は隣の部屋から小さく聞こえてきて更に羞恥を煽る。
最初はあまり乗り気じゃない自分が、いつの間にか主人に強請っていると、その事実を数日前に付きつけられて。けれど記憶が無いのだから、事実なのかどうかも怪しいしましてや自分がそんな事、と頭を左右に振って思考を中断させる。
この先考えると、悪い予感がする。きっと一生立ち直れない気がする。

きっとまたからかっているんだと今はそう思い込むことにして、気だるい身体に鞭打って足を進めた。









はまっているのはどっち




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