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■無知な子供









彼の主人がアヴィスへと堕ちて早二年。
ナイトレイの屋敷近くの広場に向かいながら、何時しか月一回程度のこの日が楽しみに感じている自分に気づき小さく息を吐いた。
確かに何時までも自分に慣れない彼をからかうのは非常に楽しい。その反応は今まで生きてきた中で一位二位を争うぐらい自分好みの反応だろう。
そして何よりも、あの小さかった子供が、ゆっくりと、けれど確実に大人になっていく過程を見るのも、実は密かに楽しみの一つなのだ。

「オヤ…早いですね。ギルバード君」
「…あ…ブレイク、さん…」

ベンチに座っていた彼を見つけ声をかける。振り返ったその表情はどこか暗い。何時もいろんな事で悩みを抱えている彼だが、何時もとは種類の違う悩みなのだろう。珍しく縋るような眼差しで見つめられて、それに笑みを返しながら彼の隣に腰かけた。

「上手くヤってますか?」
「…ハイ…多分…」
「ふむ…で、一体ナニが聞きたいんですカ?」
「っ…!」

曖昧に笑う彼の表情が一変して驚愕の表情へと変わる。解らないとでも思ったのだろうか。彼は表情に感情が出やすいタイプなのだと、何時になったら自分で気づくのだろう。
教えない自分も性質が悪いのかもしれないが、気づかない鈍感な彼にも問題はある。そんな事を考えていると、隣の彼が今にも泣き出しそうな表情を浮かべていて目を見開いた。

「あのっ…その…っ…」
「…何か、ありましたカ?」

その様子だともしかしたら思った以上に厳しい話なのかもしれない、と思い直して態度を引き締める。ナイトレイ家に何かあったのか、それとも彼自身に巻き起こっているのだろうか。考えれる部分が幾らでもあって、ギルバート自身から聞く方が早いと隣の彼の言葉を待つ。
歪んだ表情。瞳は徐々に潤んできて、今にでも零れそうな位に溜まった涙を見て何か違和感を感じた。

「あの…こんな事、ブレイクさんに聞くのは……でも、誰にも…聞けなくて…」
「何ですカ?良いですよ、別に何でも」

泣き出しそうな表情の中に羞恥が浮かぶ。自分が考えている最悪の事では無い、と理解して肩の力を抜いた。

「…病気なのかな…と思うんですが…でも、その…こんなところ、お医者さんに見せれない…し…」
「……こんなトコロ?」
「頻繁では…無いんですが…たまに…おかしくて…」

俯きながら、自分の質問など耳に入っていないかのように途切れ途切れに話すギルバート。僅かに覗く頬や耳は真っ赤に紅潮していて。
さすがに具体的な単語が無いと理解できないと、ボソボソ話し続ける彼の肩に手を乗せて中断させる。

「どこが、どうなってる?私はあくまで医者では無いので、経験の上でしか答えられないデスガ」
「…っ…あの……その…」

見上げた視線はすぐに逸らされる。
聞きたいことがあるだろうに、それを言えないという事はどういう事なのだろう。それに彼のこの戸惑いの中の羞恥心。病気だと思うのであればすぐに医者に見せるべきだろう。それすら躊躇している彼。

「…医師に見せたくないトコロ…ふむ…そういえばキミは何歳になりましたカ?」
「…え?…15歳ですけど…」

それが何か、と戸惑ったままの状態で首を傾げられる。純粋な金色の瞳は自分の質問の意図に気づいてない。
そうですか、と頷きを一つ。少ない情報の中から本質を見抜く為に、自分がここまでどうして彼の為に頭を使わなければいけないのだろうかと、自分の行動にうんざりしつつも再度尋ねる。

「ちなみにキミは今まで恋愛をしたコトはありますか?」
「恋愛?…無いと思いますが」
「……それは可哀想に」
「なっ、何ですかっ。またからかってるんですか」

染まったままの頬で潤んだままの瞳で上目遣いに睨まれても正直誘われているんじゃないかと勘違いしてしまいそうになる。15歳という事は世間一般から見れば大人として見られる。ならば味見程度に頂いてしまっても良いのかもしれない、とどこか遠くで思いながらも、見た目は殆ど子供、精神年齢もまだまだ子供な彼に手を出すのは犯罪だろう。
(…って、何故私が彼に手を出す方向で考えているんだ)
自分の考えに益々うんざりしつつも、逆にそんな彼に大人を教えてあげるのも悪くないと思い始めている自分自身。丁度良く、彼が悩んでいるのは多分そういう方向性のものだろう。ならば、と自分に様々な言い訳をつけ、纏まった結論の元に行動する事にした。

「…治したいデスカ?」
「え…治るんですか?」
「エェ…多分キミが悩んでいるのは此処の事でしょう」

そう言いながら指さしたその先にあるものにギルバートはこれ以上ないぐらいに真っ赤に顔を染めて小さく頷く。半信半疑な視線を浮かべながら、けれどどこか期待を向けられて、そんな彼にニコリと悪意を消した笑顔を浮かべながら彼の手を引いて立ちあがらせた。

「行きましょうか」
「どこに…ですか?」
「二人きりになれる場所ですヨ」

暗に此処では無理だろうと、そういう意味を込めた発言に、ギルバートは何かを決心したかのように大きく頷いて少しだけ強い視線へと変える。そんな彼の様子に満足げに微笑んで、この辺で一番近い宿目指して歩き出した。






「ひ、んッ…ほ、本当にっ…ぁ、っ…治るっ…ですかっ…っ…?」
「こうしないと治らないんですヨ。子供から大人へ変わる皆が通っている道なので、我慢しなサイ」
「ぅぁッ…でもっ…ますます、酷くっ…」

何も知らない純粋すぎる彼は、初めてで強すぎるであろう快感に戸惑いを隠せない様子で。ベッドの上で自分の手によって扱かれている状況に息も絶え絶え羞恥心で涙さえ流している。
可虐心を燻られるそんな彼の痴態に自分の理性なんてものは最初から無かったとばかりに追い詰める事を辞めない自分。

「っ…みんなっ…?ブレイク、さんも?」
「そうですよー懐かしいデスネ…私も最初はキミのように戸惑ったモノです」

そんなわけが無いと、内心細く笑みながら手を更に激しく動かす。上下の単純な刺激にさえ身体全身を震わすギルバートは戸惑いながらも従順に、その快楽を快楽とさえ知らずにいる。無知な子供の溢れんばかりの情欲の色は濡れた瞳からだけでは無く熟れた唇からも染まった体中からも轟かせて、それを自分の手によって変化させているのだという事実が酷く愉しい。
薄ら口元に浮かぶ笑みを抑えきれないまま、大人になりきれていない身体を弄ぶその行為に珍しくも興奮を覚えた。

「ぅ、ぁっ…な…んか…変っ、ですっ」
「どこが、どうなんだい?」
「っ…ぁ、手…めて、下さいっ…な…か…で、るッ」

自分の手に重なってくる手。全く力の入ってないその小さな手で否定を示しても無意味だと気付かないぐらいに切羽詰まった表情。逆に添えられた手によって行為を促されているような感覚を覚える。
小さく零れる声が次第に甲高く響き、涙で潤んだ金の瞳がぎゅっと閉じられて。全身を大きく震わせたかと思うと自分の手の中に吐き出される白濁。

「ハ、ぁッ…っ…ッ」
「沢山出ましたねェ…若いって良いですネェ」

自分の手についた白濁の液体を舌先で掬い、ギルバートに見せつけるかのようにその頬を舐めあげる。驚愕の表情を浮かべながら息さえ整えないままに口を開けたままの状態で固まる彼に口の端だけをつり上げた。

「精液ですヨ?成人した男性は皆、出るモノです…まぁキミのは少し異なってるかもしれないネェ」
「え…っ…どう、いう…」

意識的に不安そうなギルバートの視線から顔を逸らす。これから彼に行う行為は何時ものように弄ったり苛めたり、そんなレベルでは無い。それが解っているからこその躊躇いや罪悪感、けれどそれを上回るぐらいの衝動。
自分の中にどうしてこれほどまで強い欲求があるのかなんて、それを考えれば火傷だけでは済まない予感。その自分の直感に従って、今は目の前の彼を如何に自分にとって都合のいい、大人、へと作り変えていく事のみ集中すれば良いと自分を納得させる。

「ブレイク、さん…僕…あ…オ、レは…みんなと何か違うんですか?」
「……そうですねェ。けれどキミはもう疲れているだろう?今日はココまでに」
「っ、大丈夫です。…ブレイクさんだって、他の人だって…マスターも…通ってきた道なら」

君の主人の事は知らないけれど、自分やその他大勢は通らなかった道だと心の中だけで留めながら、自分の言葉に被せてくる程、強い意志の持ったギルバートの視線を受け止めた。哀れな程に世間を知らない子供だと、けれどその無垢さが自分の心を掻き乱す。

「解りました。キミがそこまで決心しているのであれば…」

白々しいまでの台詞に意図がある事すらも気づいていないギルバートは、その言葉に小さく頷く。今から何をされるのかも解らないのに簡単に上下する頭を見ながら、彼の行く末が少しだけ心配になってしまう。だがそれも今は関係ないとばかりに、上体を起こしかけた彼の肩をもう一度ベッドに縫い付けて、瞬く瞼に口付けを落とした。











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