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■休日(ブレギル)









「おまえなんかっ、顔も見たくないっ!!」

日もまだ昇りきってない時刻。
よく朝からそんなに大声が出せるものだと、半ば感心しつつも言われた台詞にブレイクは瞬時に反応できない。バタン、と大きな音を立てて扉の向こうへと消えていくギルバートは何故か全裸の上からシーツを巻きつけているだけの姿で。
眠い、と欠伸を一つ。寝起きで回らない頭は一向にこの状況の原因について回答を出さない。
最初に起きたのは自分。隣で眠るギルバートがあまりにも弄りたいぐらいに子供っぽい寝顔だった所為か、寝ぼけながらその瞼に口付けを落とした。何度か繰り返していると彼は目を覚まし、理性を取り戻した瞬間にあの台詞。
何故ギルバートはそんな事を言ったのか。それを考えるよりも眠気が先に来てしまい諦めてこのまま、また眠ってしまおうかと考えたところで、今まで自分が包まっていた筈のシーツがなくなっている事に気づく。

「アァ…そういう事ですか」

昨夜はギルバートを一通り苛めて弄って。体力の限界を超える勢いでたっぷり愛情をかけて散々啼かせた。意識を失ったギルバートの隣で同じように眠りについた自分。同じシーツに包まっていたはずなのに、先ほど彼がそれを持って行ってしまったのだろう。
服は着つつも冬と春の境目の季節。寒い、と呟き身体が震えた。
すっかり目も覚めてしまい、シーツに包まったままのギルバートとを追いかけるように部屋の扉に向かった。

「…オヤ?」

リビングに居ると思ったのだが見当違いだったらしい。主人のいない部屋は静まり返っていて、僅かに耳を澄ませば水音が聞こえてくる。
シャワーですか、と呟きながら浴室へと向かうと案の定目的の人物をすりガラス越しに見つけて笑みを零した。
(…でも、ダメですねぇ)
驚かせてあわよくば浴室で、と考えたところで、自分の胸元を押さえ溜息を零す。まだ、ギルバートにも伝えていない事実。この胸の刻印はまだ彼には知らせない方がいい時期だと判断して踵を返す。
まだ彼の主人がコチラには戻ってきてはいない。主人を失ったギルバートがいくら自分に本当に好意を向けていたとしても、もし彼が戻ってきたら、と考えてしまう。愛情を疑っているわけではないが、ギルバートにはまだいくつかの選択肢を残していたかった。
(自分本位…本当は怖いだけなのか)
自分の考えに苦笑し、その終りの見えない思考を無理やり中断させる。今、考えたところで仕方のない事なのだからと。



がちゃ、と扉の開く音が聞こえソファで寛いでいたままの状態で視線だけをそこに向ける。いかにも風呂上がりな彼の身体は全身薄らピンク色で、自分がもう少し若ければこの瞬間に押し倒していたと自負するぐらいに艶っぽい。ギルバートは今、大人と子供の境目だろう。こちらを睨みつける視線はどこかまだ子供らしく、しかし身体から溢れる色香は大人のモノ。
自分も少しは影響しているのだろうと、口元を釣り上げれば彼の視線が鋭くなった。

「何ですか?顔も見たくなかったのでは?そんなに見つめないで下さい」
「っ、睨んでるんだ!早く出ていけっ」
「酷いですネェ…昨晩はあんなに愛してあげたのに」

その言葉にギルバートの顔が瞬時に赤く染まる。顔を逸らし悔しげに歪める表情も、また良いものだと笑みを深くしながら突っ立っている彼をこちらへと手招きする。

「……何だ?オレは出て行けって言ったんだぞ」

そう言いながらも素直にこちらに来るギルバート。可愛いですネェ、と心の中で感じながらも、中々座ろうとしない彼の腕を取って引っ張った。

「うわッ」
「あー、暖かい」

向き合わせになって座るような形。締め付けるかのようにギルバートの腰に手をまわして力強く抱きしめると、冷め切った自分の身体に熱が伝わってくる。
背はもう同じぐらい。自分の膝に乗っかった状態のギルバートの肩に額を寄せてその温かさを奪うかのように密着させる。

「は、なせっ!!何…」
「君がシーツを持ってった所為で寒いんです。だから責任取ってもらおうかと」
「自業自得だっ!」

腕の中で暴れるように身体を捻るギルバート。本当は嬉しくて堪らない癖に、と目の前の彼の首筋に噛みついた。

「い、たッ…」
「ん、甘い…ですネェ」
「おまっ、ヤメロッ」
「それに、良い匂いですし」

噛んだ痕を一舐めすると大げさな程に反応するギルバートの身体。口では否定ばかりなのに身体は本当に正直で。その反応を楽しむかのように首筋に吸いついたり鎖骨に口付けたりを繰り返す。

「っ、や…め…ッ」

ビクビク反応させながらも両手で肩を押されるが力は全く入っていないのは、この行為を心の底から嫌がっていない証拠だろう。
(そんな事だから、ワタシみたいな人間に誑かされてしまうんですヨ)
こっそり苦笑をもらしつつも、ギルバートの反応が楽しくて中々止められずにいる自分。小さく漏れる声も、体温が上昇してくる身体も、段々と艶を増してくる。

「やめ、ッ、ブレ、イクッ…!」
「何ですか?」
「何っておま、え、ッ、昨日散々シタだろう!それにオレは怒ってるんだからなっ」

身体を捻って彼の身体をソファに押し倒す。案の定、抗議の声が上がり睨みつけているようで誘っているかのような視線を受け止めて口元をつり上げた。

「昨日は昨日。今日は今日です。それにこれはキミが朝一で言った言葉のお仕置きみたいなものですカラ」
「なッ」

声を失ったかのように口を開けつつ言葉を発する事が出来ないぐらいに驚愕した表情。普通の判断能力を持つ人間ならば、理不尽すぎる自分の言葉にそれこそ怒って当然なのに、自分の下にいる彼は今や冷静な判断さえできないのだろうか。
益々濃くなる笑みが、彼の表情を更に引き攣らせた。

「今更、謝罪を口にしても、もう遅いですカラ」
「な、な…」
「大人しく感じていれば、少しだけ優しくしますヨ」

その言葉に目を見開き抗議の声を上げるために開く唇。その唇に言葉を発する事が出来ないように噛みついた。





「ひ、ッ…ぅ…もう、イかせて、くれッ…」
「ハァ…もう少し我慢なサイ」
「ハッ、ぁ…ッ、ムリ、だっ」

程良く筋肉のついたしなやかな足を肩にかけながら、より深くへと押し入るように腰を打ちつける。その度に悦楽から逃れようと頭を振って両手でソファの端を掴んで身体を後方にずらす彼。無駄な事を、と掴んでいる彼の腰を引き寄せれば、小さくあがる艶を含んだ声と大きく痙攣するかのように震えるギルバートの身体。

「ふァ、あ、や、ァッ…」

律動を激しいものへと変えれば噛み締めていた唇から引切り無しに漏れてくる嬌声。ようやく従順に素直に声を出し始めた彼に口の端を上げて満足げに微笑んだ。

「んッ、あ、アッ、あ、」
「イイですカ?」
「ぁ、ッイ、イイっ…ん、いいっ」
「イイ子ですネ。デハ、ご褒美に後ろだけでイかせてあげます」
「っ!や…む、りッ…昨日もッ…ひァあッ」

頭を撫でながらそう囁けば、すぐさま上がる反論の声。想定内だと丁寧にリボンの形で括られた彼自身をぎゅうっと強く握りしめば面白いように跳ね上がる身体。

「昨日も、そういえばそうでしたネ」
「イ、きた…っ、は、なしっ…ぶれい、アぁッ」
「アァ、もしかして朝っぱらから怒っていたのはコレが原因デスカ」

コクコクと必死で上下に動く頭。閉じた瞼からは生理的な涙がいくつも零れていて。前立腺目がけて腰を打ちつけながらの律動に、息も声も絶え絶えなギルバートの表情は壮絶なまでに艶めかしい。視界からも聴覚からも繋がっている部分からも感じる彼の全てに気を抜けば持って行かれそうになり、ぐ、と息を止め律動を一旦止めてそれをやり過ごす。

「…っとに、淫らな身体ですネ。まぁ、私がそういう風に変えたのですケド」
「ぁ、ふッ…も」
「イきたいですカ?ならば可愛らしく強請ってみて下サイ」

自分のその言葉に驚愕の表情を浮かべ、金色の瞳から溜まっていた涙が零れる。その涙があまりにも綺麗で美味しそうに見えて、舌で舐めとりそのままギルバートの口の中へと挿入させる。

「ん、ふッ…っ」

うっとりと目を細め、大人しく与えられている口付けを受け入れる彼。首に手が回って強請るかのように強く引き寄せられ、深くなった口付けと共に未だ入ったままのソレも更に奥へと迎え入れられて。思わず眉を寄せながらも懸命に舌を絡ませてくる彼が本当に愛おしい。
だが、それとこれとは別なわけで。
無理矢理にも唇を離せば開いた口の隙間から赤く濡れた舌が追いかけるように出てくる。名残惜しそうに切なそうに表情を歪ませ、目が合えば照れくさそうに視線を逸らす彼に声を出さずに笑い頬に手を当て視線を戻させる。

「…キスが好きなのは解ってるケド、何時までもこの状況のままで良いんですかネェ」
「ッ、痛ッ」

縛られたままの彼のソレを上下に扱けば、止めてくれと言わんばかりに自分の手を掴もうと手を伸ばしてくる。その手を逆にもう一つの手で掴みとり彼の胸へと抑えつけ、未だ扱くのを辞めない自分に頭を左右に振って快楽をやり過ごそうとするギルバート。

「早くオネダリしないと何時までもこのままですヨ」
「ひ、あッ…あ、ヤメ…」
「それとも苦しいのがやはりお好きですカ?」

違う、と掠れた声で反論しつつも、イきたいのにイけないこの中途半端な状態。ぐったりと身体の力は抜け切り幾度となく溢れる涙は想像以上にエロい。
しかし、残念ながら欲望のままに、とい時期は過ぎてしまった自分。ゆっくり長い時間をかけて相手を弄り苛めて悦ばして、娯しむぐらいが丁度良いのだ。

「あ、ハァっ…ねだ…っる…?」
「そーですネェ…ブレイク大好きって語尾にハートマークつけて言って見て下さい」
「ハァ!?」
「何ですか、その呆れた表情。良いんですよ別に、このまま永遠と生殺しの状態デモ」

ゆっくりと見せつけるかのように律動を始めれば、すぐさま聞こえてくる肯定の返事に、にっこり笑みを浮かべた。

「ぶ、ブレイク…だ、だ、…だい、好き……ハートって?」
「うーん20点ってとこですネェ」
「オマエッ」

そう呟けば、羞恥で真っ赤に染まったままの顔で、ぎ、と睨みあげてくるギルバート。そんな可愛くない彼の腰を掴み律動を再開すれば途端に眉は下がり悦楽のそれと変わる。
何か違う。もっと何か、と腰を打ちつけながら考えていると瞬時に閃き良い考えが思い浮かぶ。

「ん、アッ、ぁ…ン?…うぁアッ!」
「よいしょ、と…言葉だけではつまらないので、身体も使って下さい」

一旦自分のモノを彼の中から抜き取り、彼の身体を起き上がらせて逆に自分は寝転んで、その上に彼を跨がす。力の抜け切った身体は彼の力だけでは上体を起き上がらせる事が厳しいのか、両手で自分の胸を抑え身体を支えている。

「自分で入れて好きなように動かしてイイですヨ」
「なっ、な…そんなッ、こと…」
「まさか出来ないなんて、言わないですよネェ」

声を落としてそう呟けば、若干震え怯えの入った表情へと変わるギルバートににこりと微笑めば更に震えあがって、心外だと言葉を洩らす。
彼の腰に手を当て、挿入しやすいように促せば諦めの入った表情を滲ませ自分のソレを片手で掴む。ヒクつく部分にそれを当てれば息を止め、本当にやるのかと言わんばかりの表情で見つめられて小さく頷き促した。

「ッ、…あつ……ぁ…ん…」

じわじわゆっくりと濡れた中へと入っていく自分のソレ。じれったくなり掴んでいる腰を下から突き上げた。

「ひアッあ!」
「あぁ、すいません。鈍かったんで、つい」

すっぽり奥まで入ったソレに眉を寄せ苦しげに息を洩らす彼。
縛られ起ちあがったままの先端はトロトロと厭らしい位に蜜が溢れ、それを指で掬い見せつけるかのように舌で舐めとれば、かぁっと目の縁を赤く染め、ナカはきゅうっと締め付けられた。

「ッ、早く自分で動かないと私がしますヨ?」

腰を掴み一旦引き上げると再度強く落とす。

「ッ、あアッ」

それだけで何か感じ取ったのか、荒く息をさせながらすぐさま自分がやると言って、掴んでいた自分の手の上から手を当ててくる。
ふにゃりと眉は垂れ下り、嫌で嫌で堪らない、といった表情を浮かべつつも、決心したかのように口元を引き締めるギルバート。
精々娯しませてくださいネ、と呟けばそれを合図に彼の身体がゆっくり動き始めた。





そういえばとふと思いだす。昨夜も確か、最後はこうなっていた。

移動させたベッドの上で死んだように眠るギルバートを眺め、その癖のある髪を撫でながら思い出す。
最後の最後は、本能という言葉が当てはまるぐらいに自分の快楽を追い求め、感じたままの声を上げ腰を動かし何度も自分の名を呼ぶ。壮絶なまでに艶めかしく、けれど実はあの姿がギルバートの素の部分なのだろう。

「私だけが知っていると言うのも悪くは無いですネェ」

きっと目覚めれば今朝のように怒る姿が目に浮かぶ。
自分を見失うまでに快楽に溺れて、その姿を見られて。しっかりと記憶に残っているのだろうから、結局は、恥ずかしかっただけなのだろう。

「本当、キミは何時まで経っても可愛いですネェ」

ちゅう、っと額に口付て、たまにはこんな休日も良いものだと、ずっと厭きる事無く彼を眺め続けた。






普段は見せないけれど




あきゅろす。
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