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一筋ノ光

一筋ノ光 ― 六 ―



「……氷凰様、コイツはどうなさいますか。」


それまで黙っていた片桐?さんが口を開いた


コイツとは勿論マサの事


俺は案外冷たい奴なのだろうか
もうマサがどうなっても良いと思っていたのだから


初めて人の温かみを教えてくれた人

そして、初めて人の残酷さを教えてくれた人


マサはもう、俺の中でそういう文字となって消えていた


「クス、約束だからね。離してあげなさい。」


そう氷凰が言うと、片桐?さんはマサの胸倉を持っていた手を持ち上げていた高さのままパッと離した


ドサッとうう音と共に地に落とされたマサ


地面には、氷凰に撃たれた傷から出た大量の血が血の海を作っていた


不覚にも俺は、それが綺麗だと思ってしまった


「それじゃあ、行きますか。あぁその前に片桐。」

「はい。」


氷凰がまた妖艶な笑みを浮かべそう言うと、呼ばれた片桐は背筋を直して返事をした


「零の足枷をとってあげて。」


氷凰がそう言うと片桐はポケットから何やら細い針みたいな物を取り出した

そして俺に近付き、しゃがんだと思うと足枷の鍵穴にそれを差し込みカチャカチャと動かしている


鍵、じゃないのに……開けられる、のか?

俺は初めて見る光景に、ただただ好奇心の目を向けていた


やること1分
カチャリと音がしたと同時に、足にあった重みがすっととれる

足をみると、見事に足枷が外れていた



「さぁ、行こうか。」


氷凰はまた俺に手を差し出す


今度の俺は、迷う事無くその手をとった





そして、数年後


俺はこの手をとった事に激しく後悔をした


一度選んだら引き返せない


俺は、その道を知らず知らず選んでいたんだ



あの時の俺にとって

たった一つの光だったから







            ‥…―End


後書き&長編予告



 

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あきゅろす。
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