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*短編小説*
【重なりの刹那】


私は今、青々とした空の下
1人の少女を待っている。

長い髪、凛とした雰囲気
心を溶かすような笑顔



…全く

何故こんな事になったのか


悪評高き名の知れた暗殺者ともあろう者が、



…他人に情を持つなどと。






【重なりの刹那】







「ほら、早く走れ!」

「そんな事言ったって、私足遅いもん!」

「時間に遅れたら俺のせいになるんだからな!」

「もぉぉぉ!イジワルッ!」


遠くから声がする。

聞き慣れた部下の声と
もうひとつは、彼女。


「…硝子には敬語を使えと言っただろうジャック」

低く、冷静を装った声で部下の名を呼ぶ。
本当は今すぐにでも彼女の名を呼びたかったが、心を落ち着かせて言葉を抑えた。


「承知してます」

ぎこちない言葉遣いで返事をするジャック。
我が部下となるまでの経緯と、私に対しての不信感が見て取れる瞬間であった。

「私はタメ口でも良いよ?普段はタメ口で話してるんだし」


ジャックの顔を見る。
その瞬間、奴は顔を逸した。

硝子は私の大切な友人故に私と同等に扱え、と あれほど言い聞かせたのだがな…。

ジャックめ…


「んじゃ、俺は行きますんで」


私の視線などお構いなしに、ジャックは何事も無かったかのように立ち去った。


風が吹く

草がざわざわと騒ぎ立てる



「…それで、今日は何?どうしたの?」


呼び出しておいて黙り込んでいた私に、硝子が問いかけてきた。
貴方が私を呼び出すなんて、滅多に無い事でしょう?
なにか大事な話でもあるの?
と続ける。

いつもならば、私は私を待つ硝子の為に ここへ来る。
決まって時間より遅めに来るので、顔を合わす度に硝子は怒り、笑ってくれた。


そして、今日は逆。


「用は無いのだが…」


私は闇に生きる者、私を狙う輩は幾らでもいる。



…そして、私に縁のある者を狙う輩も。


「お前に会いたくなってな」


偶然にも私と関わってしまったが故に狙われてしまった彼女。

常に同じ時間に会っていては、敵に狙われやすくなってしまう。
かと言って、真実を告げて彼女を困らせる気は無かった。



「?毎日会ってるのに?変なカニさん!」


硝子は訳が分からないらしく、首を傾げた。
勘づいてほしい気持ちもあったが、




硝子には知らずにいてほしい、とも思った。



「いや、気にするな。それより昨日の話の続き、早く聞かせてくれないか」


風が吹く

草が揺れる

この些細で平和な時間が、私に僅かな安らぎを与えてくれる


「…分かった!それじゃあ、昨日の続きからね!」


こうして再び


同じ時間が流れ始める。



the end.





*後書き*
某友人に捧げた、我が家では初の非公式CP(ヴィルヘルム×硝子)小説。
CPとか言いつつ会話文含め絡みが少な過ぎる←
でも硝子に話をさせると異次元になりそうなので止めました(笑)。
きっと『昨日の話』とやらもツチノコに出会ったーとかそんな話だと思う!(ぇ)



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