*短編小説*
【暗然―笑み(後編)】
【暗然―笑み(後編)】
「フィリが、一人でつらい思いを背負ってるんじゃないか、と思って…」
フィリはきょとんとした顔で私を見た。
「何でそう思うの?」
「フィリの笑った顔が楽しそうで、…寂しそうだから」
「ふうん…」
よく分からないな、と続けられて、それもそうだよね、と苦く笑う。
「本当に、楽しそうだと思ってるんだよ?だけど、なんだか怖くて…」
「怖い?」
「フィリが、私の知らない所で苦しんでいるんじゃないかって。それで…」
『それで…』その先を繋ぐ言葉が思い浮かばなかった。
「…」
自分はよく分かっていたつもりなのに、自分でもよく分からなくなってきた。
私…なにが言いたかったんだろう…
「…シルヴィアは踊るの、好き?」
不意にフィリがそんな事を聞いてきた。
「え…」
困惑気味の私を余所に、彼は話を続けた。
「虹色の泡で飾れば、どんな場所でも精霊達の舞台になるんだ」
彼は小さなしゃぼん玉を目一杯吹き、空を指した。
「ほら、あんな風に」
見上げると、しゃぼん玉が太陽の光を反射して空を虹色に染めていた。
「…きれい…」
思わず漏れた言葉に、彼はくすっと笑った。
「踊ろ!」
「きゃ!?」
彼が私の手を引いた瞬間、私は地面から離れてあっという間に上空に浮いた。
「精霊達とのショーの始まりだ!」
フィリがくるりと身をひねると、きらきら光る泡に混じって小さな光が集まってきた。
それと同時に、あの音楽が舞い戻ってきた。
フィリが七色の泡に囲まれて笑っていた、あの時の音楽。
あれは、精霊達の歌声だったんだ…
「…つらい思い、か」
精霊達と踊る中で、ふとフィリが呟いた。
「そうだなぁ、いつかその時が来たら話してあげよっか?」
「その時っていつ?」
「気が向いたら!」
フィリはけらけらと笑った。つられて私も笑った。
しばらくの間、小さな森に風の声が響き渡った。
…結局、フィリは何も教えてくれなかったけど、
あの笑顔は嘘じゃなかったから。
私、待ってるよ。
楽しい話じゃなくていい、明るい話じゃなくてもいい。
貴方自身の物語が聞きたい。
貴方がいつか、
本気で笑えるようになるのなら…。
the end.
*後書き*
あれ…少女マンガちっく…?
そんなつもりは無かったのに、シルヴィアさんが恋する乙女っぽいですね;ただ二人を仲良しに書こうと思っただけなのに…!
いや恋とかが嫌いなわけじゃないんですが。むしろ一途な子は好きですが。
肝心の相手が恋愛に興味無さそうなんで進展しないだろうなぁと(笑)。
フィリの暗然の理由はまた別の話で書こうと思います。最後まで読んで下さりありがとうごさいました!
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