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*短編小説*
【ある談笑日和の悲劇】



――硝子の家に着いてから小一時間。
アイツは未だ現われない。

「何やってんだアイツは…」

恐らく敵に見つからないよう遠回りしているのだろう。
かと思いきや突然現われる事も少なくない。アイツはそういうヤツだからな。

「俺はさっさと基地に帰りたいっつーのに…」


片や左を向くと、

「でね!昨日はUFOから宇宙人が降りてくるのを見かけて…」

硝子が飽きもせずに訳の分からない話を続けている。
何故アイツはこんな意味不明なヤツが好きなんだ?
絶対俺が拾ってきたやつらの方が100万倍カワイくて100万倍ふにふにで…





「―ジャック、もしかして基地の猫達の事考えてる?」



【ある談笑日和の悲劇】



「…うわぁぁっ!?」


いつの間にか硝子の顔が目の前にあって、俺は柄にも無く驚いてしまった。

「あは、やっぱり図星なんだー」

硝子は屈託の無い笑顔を見せた。
暗殺業を行なう俺にとっては超が付くほど目に悪い。
もちろん硝子がそんな事を配慮するワケが無かったが。


「な、何で分かったんだよ…」

冷酷無情であるはずの暗殺者が猫好きだというのは知られていても恥かしい。


「だってジャック、猫達の事考えてると口の端が上がるんだもん」

「ニヤけてるって言いたいのか、お前は」

「まぁね!」


クスクスと いたずらっぽく笑う硝子に一瞬殺気立ったが、刹那、



「硝子に手を出したら…貴様を殺す…っ」

背後から更なる殺気と突き刺さるような眼光を感じたので視線を逸した。



「あ、かにぱん!」


やっと来たー!と はしゃぎながら、硝子はソイツに駆け寄っていった。
さっきまでの怒気は消え、何事も無かったかのように振る舞うソイツ。


幽玄紳士ヴィルヘルム。
冷酷非道と名高く、付けられた通り名は数知れない。

しかし「死神の魔術師」と謳われる俺の上司も、たった一人の人間、しかも いかにも弱そうな硝子という女にだけはひどく優しい。


「…要は単なるデレオヤジだな」

そう呟いたら髪の毛の先が5センチほど切れた。
隣では明らかに殺気を放つヤツが俺を睨んでいる。


「俺、先に基地に戻ってますから」


これ以上ここにいると俺の命が危うい。(元凶は俺だが。)
俺は『アイツが来るまでの間』硝子を敵から守るという任務だった為、それを果たした今なら基地に戻れると思った。



が。



「あれ、もう帰っちゃうの?ジャック」


俺が立ち上がった途端に硝子が話しかけてきた。

「もしかして用事?あ、猫のお世話しなきゃいけないとか?」

「まぁそんな所だ…です」

『硝子にはタメ口を使うな、迷惑をかけるな、手を出すな』というのが このデレ上司の命令だ。
だから俺としては硝子には極力関わりたくない。

硝子、頼むから それを察してくれ…
そう思いながら俺は外に出ようと窓に手をかけた。



「そっか…せっかく3人分のお菓子用意したんだけど、残念だなぁー…」



硝子の空気の読めなさは筋金入りだった。
寂しそうな表情を見せた硝子に、アイツが黙っているハズがなかった。


「…ジャック、どうすれば良いか…分かっているだろうな…」

地を這うような低い声と共に、俺に鋭い目線が送られてきた。
…もう諦めた方が懸命だ。



「…もう暫くここに居させて下さいお願いします」

「ホント!?」

「…。」



こうして、俺が最も苦手とする連中2人と過ごす時間はますます増えていく………。



end.





*後書き*
これも友人に捧げたヴィル硝+ジャック小説。
何だこのgdgd文は!(←お前が書いたんだろ)
3人をギャグ路線に持っていったら上司が恋愛バカになっちゃったよアッハ(殴)
とにかく3人は普段ほのぼのしててほしい。主に硝子の電波な発想と語りで。←

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