Happy birthday









どうしよう、待ち合わせの時間に遅れてしまった、絶対準さん怒ってるよ。俺から持ち掛けた話なのに無責任だって。

しかも、それだけじゃない、今日は準さんの誕生日なのに。もっと早くに、一番最初におめでとうって言わなきゃなんないのに。


ああ、ほんとオレ何やってんだろ。これじゃあアホって言われても言い返せやしないよ。










―――――――……



昨日の夜、突然電話が鳴った。着信音で相手が誰かなんて直ぐに分かったけど、一応ちゃんともしもし、と丁寧に電話に出る。



『準さん?』

「ん、なに。」

『あのさ、明日は何かもう予定とか入っちゃった?』

「特に何もないけど…」

『じゃあ一緒に出かけない?』

「…どこにだよ、」

『うーん、特に行きたいところなけりゃ海とか…?』

「ばか、今は冬だぞ。」

『そーだけどぉ…いいじゃん!』

「…普通に近場でいいだろ」

『えぇー…じゃあ、まぁとりあえず駅で待ち合わせしようよ!10時ね!』

「いいけど…ちゃんと来いよ、遅れんなよ?」

『大丈夫!…じゃーおやすみっ!』

「…おやすみ」




こんな会話をした矢先だ、自分から誘ってきたくせに約束の10時をすぎてもう直時計の針が11を回ろうとしているのにヤツは来ない。

まさか、忘れてんじゃねーだろうな。忘れて寝てたりして。…うん、利央ならありうる。
さっきからかれこれ5回は電話をした。…が、5回とも受話器から聞こえてくるのはお留守番サービス。



「…ち、あんまり先輩を待たせてんじゃねーよ…」



何かちょっと嬉しかったりした自分が馬鹿みたいで、近くにあったベンチに腰を下ろしイヤホンを耳に付けお気に入りの曲を再生し、マフラーに顔をうめて目を閉じた。




―――――――……
――――――…
――――…




走るに走って、駅まで着いた。いつも準さんが待ってる場所に準さんはいなくて、もしかしてもう帰っちゃったのかな…なんて思い辺りを見渡した。

(あ、いた…!)

ベンチに座ってる…あの白いマフラーは準さんだ!こっちには気づいていないみたいだけど…とりあえず、正面に回ることにした。



「…じゅんさーん…?」

「………。」



目、瞑ってるし寝てんのかな。
そう思ってそっと顔近づけてみるといきなりぐあっと準さんの目が開いた。



「…うわっ!」

「…遅いんだよテメェ…。」

「す、スイマセン!」



寝起きなのもあってなのか、いつもより声のトーンが低くて余計怖かった。



「っつか何やってたんだよ、電話にもでねーし…!」

「…え?…あ、サイレントマナーになってた!!」

「このアホ!」

「うっ…」



携帯を開くと準さんからの着信が5回、と表示されていた。ああ、もうオレってやっぱりアホなのか…。



「…事故にでもあったのかと思っただろ。」

「え?そ、それってもしかして心配してくれてたの!?」

「ちげーよ!事故にあったかもしんねー、ってだけで心配してたとか誰も言ってねーよ!」

「えぇ…。…あ、それよりさ、」

「…何。」

「準さん、おめでとう!」

「…は?なにが?」

「なにがって今日誕生日でしょぉ!?」

「……あ。」



え、自分の誕生日忘れてたの!?この人は!ある意味すごいよ!



「ま、まぁとりあえず、はい!これっ」

「え、なにこれ」

「プレゼント!」

「あ、あぁ……て、ぶくろ…?」

「うん。準さんさ、いっつも手寒そうじゃん!」

「…ありがと…。もしかして、これ買ってて遅れたワケ?」

「選ぶのに時間かかっちゃってさ!ほんとごめん!」

「…ばーか」

「…えぇっ」





口ではそんなこと言ってるけど、あげた手袋はすぐその場で使ってくれた。

それから、特に行く当てもなかったから近くの喫茶店で他愛もない話をして1日を過ごした。



そして、気づかなかったけど準さんを家まで送ってからの帰り道、なんとなく携帯を開いてみると1通メールが着ていた。



「…準さん、から?」



今まで一緒だったのに何だろう、と思い開いてみるとそれはプレゼントをあげてから直ぐ送られたメールだったことに気づく。

内容は、




from:高瀬準太
sub :Re:  
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うれしかったよ


ありがとう




すき
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とだけ、書いてあった。けど、オレにはそんなの十分過ぎるくらい嬉しくて!



「…やべっ」



道端でニヤニヤしてるオレは末期かもしれないね。








何はともあれおめでとう!












あきゅろす。
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