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意地悪な上司って、どんな会社にも居る。



窓は無し。人が通れる様な通気孔も無し。
ドアはひとつ、勿論鍵がかかっている。


……以上が、この部屋の脱走計画下見まとめだ。
全く、何で窓が無いんだか。あ、地下だからか。



「………ふう、」


結構広い部屋の中を隅から隅まで探索して、私はベッドに座って一息つく。

そう簡単に抜け出せるとは思ってなかったけど……

「はぁ……どこから抜け出すのが得策デスかねぇ……」



「やめて下さいよ、逃げ出すなんて」


突然聞こえた声に、私は急いで振り向く。

開いた扉の前に、眼鏡の男が立っていた。



「…………カブト君?」

「……何故名前を……大蛇丸様から聞いたんですか」

「いえ、一方的に存じております」


一応警戒して、ベッドから降りて立ち上がる。
カブト君は右手にトレイを持っていて、それをベッドの脇にある小さなデスクに置いた。



「あなたの食事です。食器は、後でまた取りに来ますので、置いたままで構いません」

「はあ、どうもありがとうございます………って、ちょっと待ってちょっと!」


部屋を出ようとしたカブト君を引き止めると、カブト君は億劫そうに振り向いた。


「何ですか?」

「何で敬語なんデスか?」


何を予想していたのかは知らないが、カブト君は「何だそんな事か」という顔をする。


「……大蛇丸様から、丁重に扱う様に言いつかっていますから」

「扱うって、私はモノじゃないデスよ」

「僕に言われても困ります」

「デスよねー。まあともかく、敬語は無しの方向でお願いします」

「………は、」

「いやぁだってアナタ、眼鏡キャラかつ腹黒キャラでしょ既に。これで更に敬語キャラが追加された日には、カブト君キャラ的に美味し過ぎじゃないデスか」

「……………」


ありゃ。リアクション無しですか。ノリ悪いなぁ。
いやいや、そんな全力で何だこの女馬鹿じゃねぇのみたいな顔しないでよ傷付くなあ。



「カブトくーん!聞いてマスかー?」

「……………」

「おいおい無視デスか。メガネー。丸メガネー」


反応無し。何か物凄く冷ややかな目で見てくるし。


「ちょっと、何とか言ったら……」

「煩い。少しは黙れ」


おっ。


「ったく……人が下手に出てれば、よく喋るね君は」

「下手に出なくてもよく喋りマスよ」

「あーそう」


おお、本性出しやがったな腹黒メガネめ。



「全く。大蛇丸様も、何を考えているのやら………こんな、大したこともないガキを囲うなんて」


何ですなにか文句でも


何でここの人は、事あるごとに私を侮辱するわけ?
確かに美人って訳じゃないけどさぁ……。くそっムカつく。



「じゃあ君には敬語なんて使わないから。大蛇丸様には、君から弁解しておいてくれよ」

「イェッサー」


ビシッと敬礼をすると、カブト君の顔は少しくらい綻ぶ………と思ったのだが、違った。

相変わらず絶対零度、霜焼どころか体の芯まで氷付けになってしまいそうな視線が突き刺さる。



「何ですか?」

「………いや、何でも無い」

「言いたい事があるなら、言えば良いじゃないデスか」


暫しの沈黙の後、部屋の中に殺気が満ちる。


「……大蛇丸様に気に入られたからって、あまり調子に乗らない方が良い。ここには、君を良く思う人間はいないよ。僕を含め、誰一人」

「ふぅん。そりゃわざわざ、御忠告どうも」


カブト君なりの殺気を出している様だが、カブト君より遥かにヤバいS級犯罪者な人たちに囲まれていたせいで、ちっともこたえない。

だいたい私だって、好きでこんな所に来た訳じゃないっつーの。誘拐されたんだっつーの。



「……そのふざけた態度も、出来れば直した方が良い。いくら大蛇丸様のお気に入りだからと言って、あまりここの住人を苛つかせると、うっかり殺されてしまうかもしれないよ」

「うわぁ、うっかり殺されるって切ないなあ」



脅える様子を全く見せない私が気に食わないのか、カブト君は舌打ちをして部屋から出ていってしまった。



「……うむ、どうやらお友達になるのは難しいみたいデスね……」


ため息をついて、私はすっかり冷めてしまった御飯を口に運んだ。





(敵だらけの巣窟。頼れるモノは、己だけ)


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あきゅろす。
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