カブトくんハピバ!
「カブトくんハッピーバースデー!!」
台所でパパッと作ったカップケーキ片手に押しかけてみれば、ものの2秒で「何を寝呆けてるんだい?」と迎撃された。失礼な、寝呆けとらんわい。
「カブトくん、誕生日でしょう。2月29日」
「そうだけど今年は閏年じゃないしそもそも何でキミが僕の誕生日を知ってるんだい」
「まあ細かいことは気にしない気にしない!」
全然その気じゃないカブトくんにカップケーキを手渡す。わざわざ早起きして作った、自信作だ。
「……これを、僕に?」
「ホントは好きな食べ物でもあげたかったんですけどね。誕生日に魚の塩焼きデーンと贈られても困るでしょ」
「……何で僕の好きな食べ物知ってるの」
「さー何ででしょー」
「なんだコイツ気味悪い」という目で見られたことには、気づかないフリをする。どんなに厭なヤツでも、一方的に友達宣言をしている以上、誕生日を祝わないというわけにはいかない。
どんな鉄砲豆喰らったような顔するかにも、興味あったしね。
さて、どんな反応をする?
「…………ありがたくないから、気持ちごと返却するよ」
「こらこら待ちなさい!人の善意に対して何ですかその態度は!」
「キミの善意は善意に思えないんだよ」
何か前に誰かさんにも同じようなことを言われたような。……いや、失礼だ。
「そんな警戒しなくても、小麦粉と砂糖とバターと卵とふくらし粉に、ちょちょっと善意を加えただけですってば!」
「その善意が詳しく成分表示されてないから警戒してるんだよ」
何で私、こういう反応されるんだろ。日頃の行いが悪いからかな?いやでも悪いって言っても、コイツに比べたら可愛いモンでしょう。
「……良いですよ、じゃあ大蛇丸さんにあげて来ます」
「………………」
「カブトくんにあげようとしたんだけど、カブトくんがそれは大蛇丸様に差し上げなさいって言ったから持って来ましたって言ってあげて来ます」
「分かったよ食べれば良いんだろ!」
流石はカブトくん。話が分かる。
しかし私は、どうしてこうまで警戒されるんだろうね?今までそういった類の悪戯はしたことない筈なんだけどな。
「お味はどうです?」
「…………普通だね」
「素直じゃないですねー。美味しいって言えば良いのに。まあ良いや。いつ効果が出るか、楽しみですね」
カブトくんが最後の一口を飲み込み終えたあとにそう言えば、彼は何とも言えないじとついた目で私を見る。
「…………何か入れてたのかい」
「さーあ何でしょうね?そいつばっかりはお楽しみってことで。ではさらばー」
しまった、という表情のまま固まっているカブトくんを残し、私は部屋を出る。
ホントは、何も変なもの入れてないんだけどね。いつもの嫌味とスルーのぶんくらい、精々入れてもいない毒物の効果に怯えるが良い!
ってことで。
「あーやだやだ、人に意地悪すると、結局は自分に返ってきますねえ」
盛大なブーメランのような気もするけど、気にしない気にしない。いつもの仕返しだもの、これくらいは許されるよね?
(カブトくん、お誕生日おめでとう!)
* * * * * * * * *
出遅れましたが。
[*前へ][次へ#]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!