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新年あけまして今年も地下生活



「よーーーーーやく、三ヶ日が終わりましたねえ」


疲弊しきった声色で呟けば、カブトくんがいい気味だと言わんばかりにニヤリと笑う。

正月三ヶ日の間ずっと、私は大蛇丸さんの手により振り袖を来せられていた。普段は滅多に着ない着物なんて着て、肩も腰もガッチガチにこわってしまった。
綺麗な着物を着られるのは嬉しいんだけど、限度ってもんがある。


「残念だね。アレを着てたら、大人しくて助かったんだけど」

「こちとらロクに動けないし食べられないしでストレスで死ぬかと思いましたよ。アレって大蛇丸さんの趣味ですかね?」

「さあ、多分……」


まあでも、正月に振袖なんて、大蛇丸さんにしては粋なはからいだ。大蛇丸さんの服装センスって、普段はイマイチだからなあ。あの腰のしめ縄っぽいやつとか……。


「……ねーカブトくん」

「なんだい」

「大蛇丸さんって、ぶっちゃけ服のセンス無いですよね」

キミってホントに怖い物知らずだよね


脳天にチョップを食らった。でも否定しないって事は、カブトくんも少なからずそう思ってるって事か。よっしゃ今度嫌がらせされたらチクってやろう。

攻撃を食らった頭頂部をさすりながらにやけていると、また何かロクでもないこと考えてるだろ、と図星をさされる。カブトくんったらカンが良い。


「…………あ、カンが良いカブトくんなら分かるかも」

「何が」

「大蛇丸さんが私を気に入ってる理由ですよー。何か聞いてません?」

「キミ、自分が何故ここにいるのか、本当に分かってなかったのか」

「だから、誘拐されてきたんだって言ってるじゃないですか」

「…………ボクは何も知らないよ」

「見当くらいはついてるんじゃないです?」

「知らない」

「ちぇー」


カブトくんの「知らない」が、嘘をついている響きなのは気付いていたけど、どうせ教えてくれないだろうし、それ以上は聞かなかった。
新年早々、不吉な事聞かされても嫌だしね。


「全くもう、無意味に存在することほど、退屈なこともありませんね」


暁に居たときは、自分が何故そこに居るのか、ちゃんと理由があったのに。主に寝食の確保だとか、楽しいからとか。
ここでは、大蛇丸さんもカブトくんも、私がここに居る意味を教えてくれない。大蛇丸さんに気に入られたからなんだろうけど、それじゃあちょっと曖昧過ぎる。
こうなったらもう、自分で何かしら意味付けするしかない。面倒だけど。


「あ、そーだカブトくん。こないだカブトくんに出された宿題、あれもう全部終わりましたよ」

「…………………」

あ、信じられない、って顔してる。


そう、年末から年始にかけて、私はカブトくんから宿題を出されていた。主に医療忍術の実技に関することなんだけど、コツさえ掴めば案外出来ちゃうもんだ。


「……後でちゃんと出来てるか確認するからね」

「ほらほらぁ、やっぱり名前ちゃんってやるもんでしょう?少しは見直しました?」

「あんなの、医療忍術の初歩中の初歩だよ。それに、ボクの教え方が良いからだとは思わないのかい?」

「ハイハイそーデスねーカブトせんせー」

「本当にキミは、人をいらだたせるのが上手い」

「よく言われまーす」


元気良く手をあげたら、褒めてないから。と冷静なツッコミ。カブトくんは、コントには向いてない性格だなあ。

陰気だしグロテスクだし閉鎖的だし、何かと気の塞ぐようなことばかりだけれど。まあ大蛇丸さんの意図が分かるまで、当分の間はこっちでも、マスコットキャラ的な感じでいきましょうかね。


「今年も精々宜しくお願いしまーす」

気のない新年の挨拶をすれば、カブトくんからもやはり、気のない返事が返ってきたのだった。


(あ、カブトくんお雑煮たべたい)
(自分で作りなよ)




遅くなりましたが、今年も宜しくお願いします。


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あきゅろす。
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