お兄さんと諸事情
さて、「リーダーの許可が降りるまで、一応ここに置いておこう」というイタチ兄さんの一言で、暁のアジト(の、ソファの上)でくつろいでいる私。
マジ暇です。
皆はどっか行っちまうし。ひーまー。
「ねぇ、暇ですよ」
暇なので、そこにいた人(見知らぬ人影だが)に話しかけてみる。
私は昔から、見える。
………何が、って……
「アナタ、何で死んじゃったんですか?ん?サソリさんに殺られた?へぇ、大変ですねぇ忍って」
……こういうのが見える。
うむ。流石、S級犯罪者の巣窟。
ゴロゴロいやがる。
「でも、ユーレイと話しても、暇な事に変わり無いですねぇ…………ん?」
ふと、ある黒い人影に目がいった。
「…………うちは、の……方、ですか?」
なんとなくそう思ったので、あんまり自信無かったけど話しかけたら、人影はこくりと頷いた。
「あぁ、イタチ兄さんにくっついて来たんですね」
こくり。
「…………勘弁してあげて下さいよ。あの人………」
「誰と話してるんだ?」
「うわぎゃあぁぁ!?」
いつの間にか背後に立っていた御本人様に話しかけられ、びっくりしてマジで飛び上がってしまった。
気配無ェなオイ。
「びっくりしたぁぁ!!声くらいかけて下さいよ!」
「かけただろう。で、誰と話していたんだ?」
「いや、なんつーか、電波交信?」
「訳分からん」
イタチ兄さんは足をくんで、向かいのソファに座った。
くそう。良い男は何をしても絵になるな。
「……リーダーは、1週間程でこちらに来られるらしい。その時に事情を話せ」
「アイサー、ボス!」
「(ボス……?)まあ良い。それよりお前は、異世界から来たと聞いたが……」
イタチ兄さんが、興味深そうに聞いてくる。
「イエース。そうですけど?」
「…………お前は、俺の事を『イタチ兄さん』と呼ぶ」
「ええ、まあ……兄さんですから……」
「……………どこまで知っている?」
……………あ、
しまったぁぁぁぁ!!!
この人、事件の事は隠し通す心意気でした!!!
そこに、真相を知っている私!!!
やべぇ消される。
「えーと、どこまで知っているかと聞かれたら、結構な部分まで知ってるんデスけど……」
うちは一族のエピソードは何度も読み返しましたから、そりゃもう隅々まで。
「……………マズイ、ですよね……?」
「…………ああ」
ですよねー。
ヤバイ。まさかのまさか、こんなシーンで死亡フラグ?予想出来ねぇよチクショー。
「……………」
イタチ兄さんの手が、私に伸びる。
くしゃ、
「…………口外、するな」
…………え?
…………な、
……撫でられた?
「え……あの、ちょ………イタチ兄さん?」
「あと、兄さんて呼ぶの止めろ」
「それは無理デス」
即答すると、兄さんはちょっとだけ笑って、アジトの奥へと消えて行った。
「………優しい、ねぇ……」
イタチ兄さんの後ろ姿を見送った後、私はさっきの人影を呼び止めた。
「あー、ちょっとそこのうちはの方、」
黒い人影は、ただそこにつっ立っているだけ。
「あのさ、マジであの人…………勘弁してあげて下サイね?」
(ああ、こんな良い人が悪者だなんて。世の中って理不尽)
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