Walking with 阿呆
デイダラが、変な女を拾ってきた。
どう変なのか、と聞かれたら困るが、とにかく変だ。
まず、自分は異世界から来たんだと言い張る。この時点で怪し過ぎるが、どうも敵のスパイという感じはしない。
これは、長年の勘だ。
そして行くあてが無いから、居候させて欲しいと言う。
まあ、本当に異世界から来たのならば行くあてなど無いだろうが。
極め付けは、自分がいた世界には、俺達の世界を記した書物があり、これから起こる出来事がある程度分かるという。
これが本当なら、暁にとってかなり重宝する存在となるだろう。
……………だがしかし、
「サソリさぁん。ヒルコから出てきて下さいよー。引き込もってばかりいたら、大きくなれませんよ?まあ、もう大きくはならないだろうけど」
この女、うざい。かなりうざいひたすらうざい。
さっきから俺の後を付いてまわっては、ヒルコから出てこいと催促してくる。
「マジで、ヒルコより本体の方が可愛い……えっと、動きやすいでしょ?」
…………無視。
「サソリさーん。引きこもりの事、何て言うか知ってマスか?ひっきーって言うんデスよ?」
…………うぜぇ。
「……………ああ、いっそ脱がせたい」
…………今の一言は、聞かなかった事にする。
名前を無視して、暁のアジトに向かうために足を進める。
「デイダラ君、疲れました」
「これ位で疲れたとか言ってんじゃねーよ、うん」
「疲れたモンは疲れたんデスよ。サソリさん、おんぶー」
「…………」
「冗談ですスミマセン睨まないで下さい視線で殺されそうデス」
阿呆な発言が多いくせに、変に小心者だ。
歩いているうちに暇になったのか、名前は歩きながらルンルンと歌いだした。
「あっるっこー!あっるっこー!私はー元気ー♪歩くのー大好きー!どんどんゆっこっおー♪」
当然、歩きながら歌うのだから、名前の息は次第に切れてくる。
「はぁ……はぁ……………疲れました。サソリさん、おん「死ね」
ヒルコの尻尾を向けてやったら、真顔で謝られた。
ようやく静かになった名前と、デイダラと3人で歩き続けてしばらく、俺達は暁のアジトに着いた。
「ふっへー。ここが暁総本部ですかー。陰気くさー」
そして案の定、名前は勝手に扉に向かって行って、勝手に結界に引っ掛かって勝手に跳ね返されていた。
「ぐぇ!!ちょ、何ですかこれは!」
「結界だ阿呆。ちょっと待ってろ、解除するから、うん」
デイダラが印を結び、結界を解除する。
ブン、と音がして結界が消えるなり、名前はリベンジとばかりに扉に手を伸ばした。
「こんにちはー!今日からお世話になりますよー……って、」
扉を開けた状態のまま、名前の動きが停止する。
一瞬おやと思ったが、原因はすぐに判明した。俺はデイダラと顔を見合わせる。
暗闇の中から真っ赤な双眸が、名前を睨んでいた。
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