あと4日・忠告
現在、紅い夕日が美しい時刻。
今日一日を修行三昧で過ごした私は、疲れてベッドに倒れ込んでいた。
火遁はかなり練習して、まあそこそこ使えるようになった。瞬身の術も、使えるようになった。
問題は、影分身の術だ。出来ない。何故か全く出来ない。悲しい程出来ない。
ちょっと落ち込んでいたらサソリさんが、「お前が沢山いてもウザイだけだ。出来なくて正解かもな」と、慰めと取れなくもない慰めの言葉をくれた。
「はぁ、それにしてもチャクラを使うと、ホント疲れますねぇ……」
体全体がだるいため、起き上がる気にならない。
ベッドの上で意味も無くごろごろ転がっていると、
コンコン、
誰かが、私の部屋の扉をノックした。
「開いてマスよー」
気だるい口調で返事をすると、扉が静かに開く。
入ってきたのは、イタチ兄さんだった。
「イタチ兄さん!どうしたんデスか?」
訪問客が兄さんだと分かるなり、私はガバッと起き上がって、ベッドの上に腰掛けた。
「寝ていたのか?」
「いえいえ。寝転がってたんデスお気になさらず。それで、何か用ですか?」
「………………」
イタチ兄さんは扉を閉め、視線を左右に走らせた。
まるで、誰かが盗み聞きをしていないか、確かめているかのように。
そして、ゆっくりと口を開く。
「…………名前、単刀直入に言うぞ。トビには、あまり近付くな」
兄さんは、囁くようにそう言った。
…………ああ、何の事かと思ったら。
「アイツは、本当は……」
「…………うちはマダラ?」
私がそう続けると、イタチ兄さんは目を見開いた。
「……お前、本当にどこまで知って……」
「だから言ったじゃないデスか。結構知ってるって。それに、言われなくても、あの人には近付きマセンよ。私が全部知ってるってバレたら、何されるか分かんないし」
イタチ兄さんは、微妙な表情をしている。
きっと、ここまで知られているとは思っていなかったんだろう。
「それに私、暁に情報提供するとは言いましたが、自分に都合の良い事しか言いませんよ?死ぬのは嫌ですから」
ま、そんな事より。
そう言って、私はイタチ兄さんの腕を引いて、ベッドの縁に座らせる。
「お茶でも飲んでって下さいよ!イタチ兄さんが私の部屋を訪ねてくれたから、今日は兄さん記念日デスよ!」
「…………お前の言動は、毎回意味が分からない」
呆れている兄さんを残して、私は簡易の台所に行き、『部屋とYシャツと私』を歌いながら、ルンルンとお茶を煎れる。
お菓子は……
……ああ、昼間デイダラ君から巻き上げたチョコレートがあったな。アレにしよう。
しばらくして、お茶とお菓子を持って、イタチ兄さんの所へと戻る。
「おっ待たせしましたー!お茶とチョコレートを「……名前」
私の台詞の後半部分は、イタチ兄さんに遮られた。
イタチ兄さんが人の台詞に被せるなんて、珍しいな。
そう思って、何事だろうとイタチ兄さんを直視する。
「…………あ、」
私の目に映ったのは、
「…………名前、これは何だ?」
空中を浮遊する人魂を、手で追い払おうとしているイタチ兄さん。
……見える人と一緒にいたら、普段見えない人も見える事がある。
…………って、よく言うけど、マジだったんだ。
「ああ、それは私の部屋における自然現象ですので、お気になさらず」
「……気にするなと……言っても………」
気になりますか?まあ、普通は気になるでしょうね。
「それよりも、イタチ兄さん。さっきから、人魂を手で払う仕草が可愛すぎるんですけど、わざとデスか?」
「わざとな……訳が…………あるか……!!」
兄さん、頭にまとわりついてくる人魂を、追い払うのに必死だ。ああ可愛い。これ、何て生き物?
「お前はいつも……こんなの……を、見てるのか……?」
「ええまあ。つーかソレ、放っといて大丈夫デスよ。特に害は無いです」
「そうは言っても……気になる物は…………気になる……」
「………じゃあ、写真取らせて下さい」
「………断固拒否する」
その後イタチ兄さんは、なんとかお茶とチョコレートをたいらげて、部屋から出ていってしまった。
そして私は、いつかあの可愛らしい仕草をカメラに収めてやろうと、心に決めたのでした。
(あ。この世界のカメラって、でかくてゴツイんだっけ)
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