指から零れ落ちた命
※警告!
ギアス最終回ネタバレ要注意、SSSログ
私はブリタニアの皇帝に推挙(すいきょ)され、神聖ブリタニア帝国第100代皇帝になった
皇帝専用の豪華な装飾が施(ほどこ)された執務室には、立派に皇帝としての勤めを果たしているナナリーと、悪逆皇帝ルルーシュをその手で撃った、正義の象徴ゼロがいた
「ゼロ」
「どうしました?ナナリー皇帝」
枢木スザクは紅蓮との戦闘中に戦死
枢木スザクという人間はもういない
スザクさんは死んでしまった
以前のようには話せず、少々寂しさを感じるも、凛とした強さを秘めるナナリーは、数々の執務を熟(こな)しながら
「貴方はもうゼロでしかないのですね」
悲しげに言葉を紡(つむ)いだ
仮面の下の表情は見えないが、彼は無表情なのだろう
「そうですよ…。私はゼロである限り、ゼロという存在でしかないのです」
しばらくの間、沈痛(ちんつう)な沈黙が流れる
「でしたら常に、今までのゼロらしい振る舞いを忘れないで下さい」
真実を知る数少ない歴史の証人として、現状に甘んじない為に、ゼロとして生きるスザクにも、ブリタニアの皇帝である自分にも言い聞かせる
「自分自身を犠牲にし、世界中の悪意を自分に向け、押し付けの優しさだが、誰よりぶっきらぼうで、優しかったルルーシュお兄様をを忘れないで…!」
と、少し言葉のニュアンスを変えて伝えた
もはや、表立って伝えることは許されない
ゼロレクイエムを遂行した、ルルーシュの命を…想いを踏みにじる行為など、ナナリーには到底出来ない
それは、ゼロとして生きることで罪を償(つぐな)わんとするスザクも、同じ十字架を背負うナナリー皇帝と同じ気持ちだった
「肝に命じておきましょう」
ナナリー皇帝の意志を汲(く)み取り、ユフィやルルーシュの意志を継ぐ決意を改めて固く誓う
「ゼロさん」
車椅子に座り、窓際から澄んだ青空を仰(あお)ぎ、見つめるナナリーに呼び止められ、振り返る
「何だい?ナナリー」
スザクの声が、優しく脳裏(のうり)に響く
「お兄様やユフィ姉様の願いを……忘れないで下さいね」
告白したところで何も変わらないことは分かっていた
スザクとの距離が元に戻るわけでも、自分の心が元に戻るわけでもない
「イエス、ユアマジェスティ…!」
深い諦念(ていねん)と化したような思いに触れながら、ゼロは振り返らずその場を後にした
指から零れ落ちた命
(どうか…この、癒えぬ傷痕を消して)
ルルーシュがいなくなった後の世界
ゼロ(スザク)とナナリーは重い十字架を背負っていかなければなりません
ナナリーの悲痛な叫び声が、未(いま)だに頭から離れないです
お題拝借、闇に溶けた黒猫様
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