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愛しくも哀しい君へ

※ルルーシュ三周忌、幼少ユフィ←皇帝ルルーシュ

少々ファンタジー要素が入ってます






ある日、庭園を散策していたら、目の前に一人の童女が現れました

腰まである長い桃色の髪に、幾層ものフリルを重ねたドレスを着ていた彼女は、ルルーシュを見るとにこっと微笑みます

「あたし、ユフィっていうの。貴方は?」

表情が強張ったルルーシュは、自分の目を疑いました

親しかった自分の義妹と、そっくりな容姿をしていたからです

「……ルルーシュだ」

ぷっくりとしたほっぺたは、頬紅(ほおべに)をひとはけしたかのように暖かな薔薇色をしていました

「ルルーシュ。きれいな名前ね」

ユフィと名乗った童女は、警戒心もなく俺のそばに近づき、上から興味深げにルルーシュの顔を覗き始めました

「私は旅をしているの」

「旅? 君は他の星から来たのか?」

「そうよ。前の星はここより少し小さかったわ。それに、たくさんのお酒があった」

ユフィが楽しそうに話す内容を、ルルーシュはどこか、憮然(ぶぜん)とした表情で聞いています

「私にとって、何が本当に幸せか……見つけるための、旅」

「そうか」

胸に手をあてたユフィは、大切な物を慈しむように呟きますが、ルルーシュはまったく興味が湧かないようです

穏やかで、優しい季節

のりを敷(し)いたかのような薄闇に、白いごま粒のようにのりかかる星の瞬(またた)きが二人を見守ります

「ルルーシュ。貴方はどうしてそんなにうまく、嘘をつけるの?」

夜毎(よごと)――思い出します

愛されなければ、愛しさも哀しさも知らずに済んだ時のことを

傷に抱かれ、哀しみの雨に打たれ、暗き淵(ふち)で愛の言葉を探してる幼子を

「環境のせいもあるが……そういう性格だから、かな」

「ふーん」

納得したユフィは、ちょっと寂しげな表情をするルルーシュに問いかけます

「じゃあルルーシュ。うまい嘘のつきかた、ユフィに教えて」

不安そうに薄紫色の瞳を陰(かげ)らすユフィは、顔を上げて、ルルーシュをじっとみつめる

「教えてもいいが……誰につくんだ?」

「知らない人」

「大人か?」

そう問うと、ユフィの声のトーンが暗くなり、泣きそうに沈みます

「うん。私ね、すごく寂しいときがあるの。大切な誰かがそばにいてくれないときとか。必死に笑顔を繕(つくろ)おうとするんだけど、なぜかうまく笑うことができなくて……他の人の前で泣きそうな顔になるの」

ユフィの表情が突然悲しげに滲(にじ)みます

「瞳が自然と潤(うる)んじゃう。ここに来てから」

「なるほどな……」

少し涙ぐんだユフィの柔らかな髪を撫でると、あり余る知性を使ってルルーシュは考えます

そしてひとつの可能性を見いだしました

この子は純粋過ぎて嘘がつけないのだ

地球って星の中には空気と一緒に嘘がちりばめられていて、地球で呼吸した途端、嘘が心に入っていく

君は地球では生きていけない

地球で生きていける人間は、みんな嘘つきだから

嘘と知ってる嘘はどこまでも痛い

だが、嘘と知らない嘘はどこまでも救われない

「君はここを離れた方がいい」

「どうして?」

首を傾げたユフィは不思議がります

「ここじゃユフィの見つけているものは手に入らないからさ」

そう言われたユフィは、かなり不機嫌そうにほっぺたをふくらましていました

りすが木の実を詰(つ)め込んだような大きなふくらみ

「そんなこと……どうしてわかるの?」

口を尖(とが)らせたユフィに、ルルーシュは上機嫌で話しかけました

「俺が嘘つきだからさ」




「おはようございます。陛下」

瞼(まぶた)を開いたらそこには、厳(いか)めしい顔をした騎士服姿のスザクがいた

(夢だったのか……)

意識はまだぼやけていて完全に覚醒はしていない

開きかけた瞼に隠れたままの悲哀

消せぬ喪像の影

ユフィ、俺は星を見るたび、君を思い出す

俺は、君のもとでは生きられない

嘘つきの地球人だから

生きるために嘘をつき、嘘を忘れるためにまた嘘をつく

ユフィ、本当は俺も、君のもとに行きたい

芽吹いた孤独が生きる場所ではなく、嘘がつけない、静かで満ち足りた、小さな楽園を思わせる場所に






愛しくも哀しい君へ



(善意で転がした後悔の狭間)








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あきゅろす。
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