流れる沈黙
警告!
ギアス最終回ネタバレ要注意、SSSログ
黒の騎士団の英雄“ゼロ”によって、解放されたナナリーは、何も言わず、ゼロと共に黙って一人の青年の亡骸(なきがら)を連れ帰った
自らの命と引き換えに、すべての罪と憎しみを一身に背負い、ゼロに討たれ悪逆皇帝と呼ばれた、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアだった
彼はゼロとなったスザクに抱かれ、道を空けた市民に疎(うと)まれ厭(いと)われながら運ばれていく
そのあとを、青年の血で服を汚し、泣き濡れた顔のナナリーが従う
「ナナリー、ルルーシュを殺した僕が憎いかい…?」
霊安室に変わり果てた姿のルルーシュを安置したあと、スザクが尋(たず)ねた
スザクとルルーシュ
彼等は生と死の狭間(はざま)に、危ういバランスで立っていた
「憎いんだったら僕を憎んで。彼は一切抵抗しなかった」
相手の了承の上でやった行為だが、スザクは身の置き所のない気分になる
「私がスザクさんを恨むとお思いですか?それは違います」
スザクを覗き込むナナリーの顔は歪み、小鳥のような声は震えていた
不器用だが優しかった青年は、今は何も語ることなく、目の前に横たわっている
2人は黙って寄り添う
スザクがナナリーの手を取り、自分を繋ぎとめようとするかのように握りしめる
「私は…ダモクレスに悪意をぶつけさせようと、考えていました」
「うん」
「お兄様も私と同じことを考えてました」
「でも、ルルーシュは…」
「お兄様は……自分自身に、悪意をぶつけさせようとしていました」
「それが、ゼロレクイエムの始まり。ルルーシュが切望した“誰もに優しい世界”を作る為、彼自身が立案した計画…」
「私はお兄様の真意を知らなかった。いえ……知ろうと努力もしなかった」
彼は黙って、いたわりを込めた視線で彼女を包みこむ
しばらくスザクとナナリーは同じ思いの中、佇(たたず)んだ
人は、手にした何かが失われる日を知らず、失われたのちに過去を悔やむことから逃れ得ない
何度も、何度も――
「お兄様の望む明日は……」
「ナナリーの考えとは違った、だよね?」
「はい。なのに!私は、お兄様を信じきれなかった!!」
「でも真実は、違った。ルルーシュの、本当の思いは…………純粋だった」
「知ろうとすれば信じられたはずなのに…!」
これは、自分の無知の知
ルルーシュの真意に気づくことが出来ず、それどころか、苛烈(かれつ)に罵(ののし)り、深く傷つけてしまった
自責の念に打ちひしがれるナナリーの切なる思い、苦しみを、スザクはすべて感じとっていた
考えてもすでに意味のないことと知りながら、彼の心もまた、それを探して彷徨(さまよ)う
「ごめんなさい、ごめんなさい、お兄様…!」
彼女の切ない声がスザクの胸を刺す
「だから…だから!目を開けて下さい…お兄様……!もう一度、私に優しく、微笑んで下さい…!!」
「ナッ、ナ……リー……」
「お兄様……お願い……!わた、しの、お兄様…!お兄様、お兄様、お兄様お兄様ッ!!」
それ以上見るに堪えなくなり、スザクは席を立ち、そのまま去って行った
彼がこの場を後にしてから数時間が過ぎた
ナナリーは1人で霊安所に立ち尽くしたまま、未(いま)だ動けなかった
「お兄様…」
落ち着きは取り戻したが、彼女の目は今も涙で曇っている
「私はまだ、お兄様の元へ行くことは出来ません。お兄様はそれを望まれてはいないから」
誰より優しかった、兄、ルルーシュは、ナナリーが優しい世界で生き延び、生を全(まっと)うすることを望んでいた
「ですからお兄様の魂が救われるよう…せめて、レクイエムを歌わせて下さい」
太陽の光のように、壮麗(そうれい)でまばゆい旋律をのせながら、ナナリーは歌い始めた
ルルーシュがいる、天国にも響くよう心を込めて
あまりの歌声の美しさに、誰もが足を止め、その透明な声と、心を内側から優しく撫でる旋律に酔いしれた
この歌声と音楽を聞いたら、悲しさを和(やわ)らげ、誰でも間違いなく慰められる
皇帝直轄領・日本は、暫く(しばら)の間、大いなる安らぎに呑みこまれた
流れる沈黙
(聴こえたのは、鎮魂歌)
ナナ嬢は両目も見え、足も動かせる五体満足設定です
ナナ嬢って歌、うまそう
ナナ嬢のキャラソン、優しい世界も全部聞きました
これ、書き終わった時間が3時間くらいだったな
昨日…コソコソ電車の中で書き上げました(笑)
最愛のランペルージ兄妹に対する思いが強くて、何度も見直して推敲しまくったので…!
お題拝借、闇に溶けた黒猫様
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