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早足で通り過ぎた過去




世界というものは、ひどく小さなものとして考えられる

それこそヒトの概念の中で、最も脆弱で最も小さく、最も崇高なものといえよう。




C.C.専用の機体、ピンク色にカラーリングされたランスロットから降りてきた

「C.C.無事だったのか?」

「珍しいな。心配してくれるのか?」

「大事な戦力だからな」

「フッ、だからあれを取りに来た」

過去からは逃げられない、誰一人

今日からは動けない、誰一人

だからルルーシュは明日を求めた

我々は掌(てのひら)を合わせてできる薄い隙間を世界とも呼びうるし、くちびるを合わせた隙間をも世界と呼ぶことができるのだ

「では、護衛を頼もうか」

ルルーシュは空中要塞ダモクレスにいる、シュナイゼルの陰謀を阻(はば)むべく、蜃気楼で最終決戦を仕掛ける

「やはり出るのか?ナナリーをその手で撃つことになるかもしれないのに…」

「ゼロレクイエムの障害になるなら仕方ない」

いわゆる「せかい」というものは、人間が好む最も小さな自己意識の塊と呼んでも差し支えないであろう

「ルルーシュ。恨んでいないのか、私のことを」

C.C.は、負い目を感じるかのように俯(うつむ)き、重苦しい表情で呟く

「ギアスを与えたことで、お前の運命は大きく変わってしまった」

「…らしくないな。魔女のくせに」

そこには、いつもの飄々とした雰囲気を漂わせつつ、笑うC.C.は姿はなかった

瞬(まばた)きすらせず、ルルーシュの端正な顔をまじまじと見つめる

箱庭を好む我らは、そうした閉じた「せかい」のぬるま湯を、何よりも愛する性質を持っているのだ

そんな不安定な心の持ち主を見つめ返す、魔王ルルーシュ

「C.C.お前がくれたギアスが……お前がいてくれたから、俺は歩き出すことが出来たんだ。そこから先のことは全て俺の…」

魔王の気持ちを汲(く)み取ったC.C.は、アヴァロンに来て、初めて微笑を漏らす

「初めてだよ。お前みたいな男は…」

C.C.はルルーシュにゆっくりと歩み寄る

共犯者となった2人の間に通じ合う思いは、C.C.の心にじんわりと沁(し)みる

「C.C.…」

ルルーシュはそっと手を伸ばし、相手の体を抱き寄せる

初めてその体を抱いた時感じた愛しさが、切なさを伴(ともな)って蘇った

切ないのは、それが過去だとわかっているから

踏み躙(にじ)られたお互いを構築する薄い壁、対して差異のない思考、薄汚れた手、なにものにもかえがたい記憶

身体が火照(ほて)るような感じがあり、一方で脳はしんと冴(さ)え切ってゆく

「ルルーシュ、戻ってこい」

「ああ、出来たらそうしたいが…」

「私に笑顔をくれるんだろう?」

ルルーシュは意表を衝(つ)かれたように目を見開く

「…そうだったな」

ルルーシュは返事の変わりに、C.C.の血色の良い唇に、触れるだけの軽いキスをした

わずか数秒のキスだった

共犯者は愛する相手を思うが故に、双方とも黙って、名残惜しいが身を離す

「じゃあな…C.C.」

その表情の意味を知り、C.C.はそっと囁きかけた

「ああ…またな、ルルーシュ」

ルルーシュもC.C.も、目的を果たすが為、機体に向かい、踵(きびす)を返す

たとえ体が離れても、心はいつも彼の傍(かたわ)らにある

「ダモクレスまで、皇帝陛下の蜃気楼を護衛する」

「こちら蜃気楼、援護を感謝する」

それぞれの機体に乗り込み、プログラムを作動させる

黒く優美な姿を現し、虹色の炎に揺れる蜃気楼

白鳥を連想させるランスロットとともに、万感(ばんかん)の思いを乗せ、勢いよく飛び立った

まぼろしである

虚構である

真実である

いつわりである

ひとのこころである

残酷である

猜疑的である

てのひらにおさまるものである

ゆめをうちこわすものである

我らの夢である

かなわないひびである

かなえるべきひびである




あそこには、かつて自分のすべてがあった――

罪、夢、葛藤、真実、願い、命、愛してくれた人

彼女にとってひとつの時代が、今、終わろうとしていた



早足で通り過ぎた過去



(世界は永遠を狂愛する)



ジャンル別アンケのリクにお答えして、今回はルルCです

どーしても最終回前に書いておきたかった2人

Cルルは何度も書いたことあるんですが、ルルCは初めてなので緊張しながら書きました

シリアスなルルCって書くのが難しいよね

私的にはルルCの関係って、いろいろと超越した関係だと思ってます

ずっと気になってた、C.C.の本名が最終回で明かされることを信じて…















お題拝借、揺らぎ・闇に溶けた黒猫・9円ラフォーレ様


あきゅろす。
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