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海色リズムアンドブルース

※SSSログ、2期15話刹マリ




透き通った音色、楽器のような調べ

誰もが魅入られるような繊細な美声の持ち主に、普段ポーカーフェイスを気取っている刹那自身も聞き惚れていた

今はカタロン支部内にある子供部屋で、マリナ自らが作曲した曲をオルガンで演奏している

負傷した右腕の怪我も自然と治癒していく気すら感じる

刹那はしばしその音色に耳を傾(かたむ)けた

「マリナは音楽が得意なのか?」

楽しそうにオルガンを演奏するマリナの手が止まり、鍵盤から指先を離した

「私、音楽の先生になりたかったの。普通の家庭に生まれてたらね」

どうあっても変えられない宿命を受け入れ、ほんの少し彼女表情に影が残るが、すぐに刹那を不安がらせないよう微笑みかけた

「そうだったのか」

彼女は嬉しげに話すので自然と声も弾む

「歌もよく歌ってて…」

小さい頃から歌だけはよく両親に褒められたと言う

「マリナは…」

「?」

「マリナはそういう方が向いてる」

「刹那……」

「一国の皇女よりも」

常日頃から国の情勢に目を配らなければならず、心休まる時のないアザディスタンの皇女の時よりも、音楽が好きな飾り気のないどこにでもいる普通の女性として生きる方が

「刹那も戦わない方が似合うと思うわ」

過去形で答えるのではなく、現在進行形で刹那に語りかける

そこには彼を咎(とが)めたり、叱ったりする色はなく、静かな笑みがあった

「マリナ……それは」

もはや戦うことでしか生きられない刹那にとってその一言は禁句かもしれない

「似合ってる」

それでも言わずにはいられない

時折、愛に飢えているような眼差(まなざ)しを向けてくるから

「貴方は戦いを望んでなんかない」

神妙な表情でマリナは口を開く

「そんな…はずは……」

刹那の曖昧(あいまい)な反応にマリナは憂いを帯びた顔つきになる

「本当の貴方は、戦うことでしか生きられないの?」

気遣う彼女に刹那は毅然と答える

「だが…誰かが戦わなければ世界は歪む」

戦いが戦いを呼び寄せる悪循環を断ち切らなければならない

「ねえ、刹那」

マリナが眉間の皺を人差し指でちょこんと突(つつ)く

「私の前では気負わないで」

意表を衝(つ)かれ口ごもる刹那の前で、取り澄ましていたマリナの顔に、突然いたずらっぽい笑みが弾ける

「マリナ?」

ソレスタルビーイングのことも、ガンダムマイスターであることも、歪んだ世界さえも頭から切り離して

無理強いしてまで痛みと向き合う必要もない

何も考えなくていい

「本当の自分でいて」

いまいち意味が掴めないのか、考え込む刹那にマリナは労(いたわ)るような視線を送る

「マ……リナ」

傷ついた刹那を抱き留め、髪を撫でる

「ただのソランでいていいの」

「…ソラン?」

刹那の役目を演じる刹那は胸に痛みを覚えながら答えた

「そう、ソランは戦わなくていいのよ」

刹那は赤子のようにマリナの優しい手に縋(すが)る

生まれてきた日に抱きしめてくれた母の体温を求めて

「ソラン」

涙が頬を伝い落ちた

「俺は……本当の…本当は……戦いたく………ないのか?」

マリナは後から後から溢れ出る刹那の涙に触れた

愛と罪

二つの感情の狭間で、刹那は揺れ動いた



色リズムアンドブルース



(それはどこまでも切ないラブソング)



久しぶりの更新でごめんなさい
そういえば今年初めての更新ですね

本編での興奮が覚めやらぬで…

刹那とマリナ様の距離がますます近づいたみたいで嬉しかったです

本編がどこに向かうか分からず常にキャラ死亡フラグが付き纏っているので、二次創作で補えるところはなるべく補いたいなーと思ったりしてます

性格が正反対のシンと刹那のただひとつの共通点



お題拝借、ニルバーナ様



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