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溶けるように解けていく魔法




※ルイスイノベ設定で本編捏造

リヴァ+黒アニュ+ルイ







アロウズ基地内に密接した部屋が隠蔽され、限られた空間内で共同生活を送るイノベイター達

限られたといっても大豪邸ほどの広さはあるので暮らすのにそれほど不自由はしないのだが




先日ルイスも仲間に加わり、リボンズとリジェネ以外のイノベイター全員に紹介され双方共に面識があった

ダイニングで用意されていた、野菜サラダと厚切りのフレンチトーストを食べているとあまり良くはない小言を耳にする

アニュー・リターナーが密偵(スパイ)としてソレスタルビーイングに派遣されると

年齢も性別もないと思っていたのだが、一応区切りはつけているようでアニューはルイスと年が近い女性だった

各自の生活リズムがあるらしいのか

イノベイターなら誰もが使いこなす脳量子波と呼ばれる意志疎通システムで会話が済むのか

予想してたより遥かに仲間内での協調性がなかった

リボンズの思惑が分からず脳量子波すら使えず、戸惑っていたルイスに最初に話し掛けてきてくれたのが彼女だった為か、アニューとは好意にさせてもらっている

ソレスタルビーイング

偶然とはいえイノベイターの仲間入りを果たしたルイスにとって、その言葉は憎悪の象徴にしかならない組織名

忌(い)まわしい記憶が体中の隅々まで刻まれ、傷となって油が絡みつくような痕(あと)が残ってる

食事を手早く終えたルイスは真相を確かめに直接アニューの元へ向かう

部屋から二人の声が漏れてくる

声質で誰だかすぐに分かり、左手で軽くノックをしてドアを開けようとする

ヴェーダによって全制御されているコンピューターがルイスの生体反応を確認し、頑丈にロックをかけていた自動ドアが開く

部屋内部は微かな照明はついていたが薄暗い

だが皮膚を通り越し、直接肌に感じる体感温度だけは、何かの力が作用しているのか――

やけに産毛が立つような生温さを感じる

アニューはリヴァイヴと一緒に真っ白なソファに座り、何やら細かい説明を受けていた

「やあ、ルイスじゃないですか」

「あら…ごきげんようルイス」

「どうしたんですか?」

何も言わず突っ立っているだけのルイスを奇妙に思ったのかリヴァイヴはゆっくりと近づいて話し掛ける

「リボンズから何か言づてでも預かってるんですか?」

反応を確かめながら様子を伺(うかが)う

まどろっこしいことを何よりも好かないにとってルイスは厄介な存在だった

相手の思考を自由に読めない

人つくづく間は不便だと苛立ちを感じたのがアニューにも瞬時に伝わったのか笑みを誘う

「リヴァイヴ」

「何?ルイス。怖い顔して」

リヴァイヴの顔を見つめながらルイスは訊(き)いた

「アニューをソレスタルビーイングの一員としてスパイに送るって、本当?」

ルイスの口ぶりから、彼女がこの一件をあまり快(こころよ)く思っていないのが汲(く)み取れる

「ああ、そうですよ」

「大丈夫なの?向こうには…」

「平気よ、ルイス」

「アニュー」

心配するルイスを余所にアニューは面白い玩具を見つけたようにあっけらかんとした態度で微笑む

「心配しなくたってリヴァイヴの催眠遠隔操作でうまいことやってくれるわ」

「でも…!」

困惑とも狼狽ともとれる複雑な表情が流れる

「それにねぇ……私、あそこへの先入楽しみにしてるのよ」

「楽しみ?」

「ええ、だって戦争根絶の為に動く劣等種の人間がうじゃうじゃいるんでしょ」

見つめてくるアニューの瞳にルイスの心中を探るような光がある

「それにしてもよく引き受ける気になりましたね」

言葉の端々に少し皮肉が込められているのを感じる

「あら、そんなに変に見えた?リヴァイヴ」

如才(じょさい)なく笑みで応じるアニューに、ルイスは一瞬背筋に悪寒を感じた

ひと癖もふた癖もある人物

これがイノベイターの普通の感覚を示すのだろうか―――

無言のままルイスは二人のやりとりに耳を傾けた

「いくらリボンズ自らの頼みとは言え僕だったら断ってました」

「ヒリングの言ってた通り脳量子波で意志疎通が出来ない人間って不便よ。だから見てみたいの。同じ事を繰り返す人間っていう生物のの愚かさを」

「アニューは物好きなんですから」

和(なご)やかに談笑する二人にルイスは眉根をいくらか曇らせ不安を募(つの)らせる

「でも……」

アニューはルイスの滑(なめ)らかな頬に手を添え、熱い視線を注(そそ)ぐ

「アッ、アニュー!?」

唐突なアニューの態度に、ルイスの顔に狼狽にも似た驚きの表情が流れた

「本音を言えばしばらくルイスに会えなくなるのは寂しいわ」

口調には明らかに不服そうな響きがある

「大丈夫ですよ。ルイスは僕等が守りますから」

不満げなアニューをリヴァイヴお得意の弁舌で諭し、彼は口もとに笑みを浮かべる

「そう?ならいいけど」

頷(うなず)きながらもアニューの顔からは不満の色が消えなかった

「あっ!それから…ヒリングにイタズラされてもうろたえちゃダメよ」

ルイスの胸のうちを見透かしたかのように、アニューが言葉を足す

「わっ…分かった」

瞬間ルイスの胸の奥底で何かがざわついた

それを押し隠し、何事もないような顔をしてルイスは頷いた

ヒリングのお気に入りの存在でもあるルイスは、何かと理由をつけられからかわれやすい

たった今彼女が見せた驚きの表情からそれが窺(うかが)えた

隠し事をしていたとしてもイノベイターの前ではすべてお見通し

自らの意志で脳量子波を遮断しない限り、嘘もすぐにバレる




初めてルイスの顔を見た時の印象が甦(よみがえ)る

帰る所を失った人間は皆あのような顔の表情になるのだろうか―――

目に映るルイスの横顔に、アニューは自分と同種の匂いを感じた




だからこそ思ってしまうのかもしれない




アニューが一瞬にして虜になってしまうまでのイノベイターに育ったルイスを、いっときも早くこの目で見てみたい、という欲求に駆られるのを



溶けるように解けていく魔法



(遊びはおしまい、また明日)









お題拝借、確かに恋だった様



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