忍び涙
この想いに色をつける
私が貴方だけの為に、色をつける
想い人を好きだと泣く想いに、ただいとしい色をつける
アヘッドが並ぶ格納庫
複雑な思いを抱えながら、ソーマはキャットウォークの手摺りに寄り掛かり、一人佇(たたず)んでいた
「私は超兵…。どんな任務でも忠実に実行する…」
感傷的な気分になり、自然と物思いに耽(ふけ)っていると周りに目がいかなくなる
「その為に生み出された存在……」
近づいて来る足音、人の気配に気づく
ソーマが振り向くと、そこにはアロウズの軍服を纏った金髪の女性が立っていた
「お邪魔してしまいましたか?」
「いいえ」
「失礼しました」
目尻を下げ、遠慮がちに詫びるルイスにソーマは興味を持ち名前を問う
「貴方は?」
「補充要員として着任した、ルイス・ハレヴィ准尉です」
「モビルスーツ部隊所属のソーマ・ピーリス中尉です」
相手が敬礼し、名乗ったのでソーマも返礼する
「申し訳ありません、中尉殿。軽々しく口をきいてしまい…」
「構わない」
既視感がふっと鼻先を掠(かす)める
「ガンダム……」
ソーマがガンダムと口にした瞬間、ルイスは歯軋りを立てる
それを目にした瞬間、ソーマは、この少女の深い心の闇を覗き見たように思った
ルイス・ハレヴィ准尉の抱える苦悩の前には、ソーマが味わう任務上の悩みなど取るに足らない瑣末(さまつ)なことに過ぎない
任務が終われば、ソーマの前から悩みは消える
だがこの少女は、これから先も一生、絶対に消えることのない傷を抱えて生きていかねばならない
そしてその傷は、これっぽっちも彼女の責任に負うところがない
脳量子波の影響からかソーマはルイスの記憶を見切っていた
ガンダムの武力介入により自分以外の家族、親戚、全てを失った――
好きだった男の子と惜しみながらも離別し、左手の再生治療が出来ず義手に交換せざるを得なかった現状――
そうした事実の中の一体どこにこの少女の非があるというのか
込み上げてくるもので、ソーマの心の裡(うち)が震えた
「貴方、無理をしている」
「えっ?」
「私の脳量子波がそう感じる」
憶測の掴めない様々な意識や感情が、脳の伝達情報を受信するシナプスを経由して流れ込んでくる
「貴方は心で泣いている…」
「そんなこと……」
ソーマの淡々とした物言いにルイスは口ごもってしまう
「誰かをずっと、想っている…」
明日へ続くと信じて疑わなかった今日の呼吸は、突然。なんの前触れもなく完全に停止した
思い出だけで生きていけたらどんなに幸せだろう
忍び涙
(憂いを飲んだ涙を吸い上げたら、貴方は笑って泣くのだろうか)
心で泣いてるルイス
それを見抜いたソーマちゃん
この二人の組み合わせが好きです
沙慈、会ったら真っ先にルイスを抱きしめるんだ!
お題拝借、揺らぎ様
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