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苦し紛れの愛ならやめて




朝焼けをを殺すほどの憎しみか、朝焼けを生かすほどの愛しさか




コックピット内で、ルイスはしばらくの間放心したように視線を宙に泳がせていた

喉はカラカラだった

気持ちを鎮めようと頭の中を整理したが、考えているうちにある考えに辿(たど)り着いた

刹那・F・セイエイ

ソレスタルビーイングの一員で四年前から沙慈の隣にいた人物

ルイスの胸は激しく動悸を打っていた

「関係……してたんだ」

後悔と悔恨――心臓が潰れたような声を押し出すルイスの瞳は、捨てられた子猫を思わせる

涙が溢れ出してきた

突然ルイスの頭が激痛に襲われ、常備しているカプセル型の薬を喉に流し込む

激痛と同時に、目からさらに涙が零れ出た

リボンズから放出された脳量子波が、ルイスの大脳皮質に届く

「ルイス」

リボンズの低い透き通るような声が鼓膜に響いた

「リボンズ」

最後に会ってからまだひと月も経っていないというのに、ルイスにはその声がひどく懐かしいもののように聞こえた

「大丈夫…なんかじゃないだろう?」

リボンズの言葉にルイスが一瞬息を詰まらせた

「涙を落とす場所がない、なんて思うのはやめた方がいい」

ルイスは自分の心の動きに自分自身で戸惑いを覚えていた

目に羞明(しゅうめい)を感じる

聞くルイスの顔の表情には明らかに激しい動揺の色が浮かんでいた

「あの時から…ずっと……」

紫色の唇が僅かに開き、奥歯の噛み合う音が聞こえるようだった

ルイスは無言で、自分の指先を見つめる

家族が焼かれて目の前からいなくなった時のこと……

と、同時に自分の左手の感覚を無くしてしまった

慟哭、虚脱、絶望

そのことが脳裏を掠(かす)めただけで、私の心は張り裂けそうになった

巨大な渦が水面を掻き回す

「大丈夫。君は僕達と同じ、世界に変革を齎(もたら)す仲間だ」

ルイスの胸の苦渋を推(お)し量(はか)るリボンズ

数秒間(ま)を置いてルイスは答える

「…うん、ありがとう。リボンズ」

その声が封じ込んでいたルイスの胸の防波堤の堰(せき)を切る

ルイスの双眸から一筋の涙が頬を伝う

(そうだ、終わらせなきゃ)

心の声は幾重にもせめぎあい、壊れた日々の亀裂へと追いつめられてゆく

苦悩し逡巡し、そして決断する時が間近に迫ってきている――

渦が消えるまで、ルイスは昏(くら)く淀(よど)んだ目で水面を睨み続ける

復讐という二文字に特に力を込めた




「いいのかい?」

呟いたリジェネが、澄ました表情でリボンズの胸の奥底を覗き込むように見つめている

「何がだい?リジェネ」

ワイングラスを左手に持ち、足を組みソファーに優雅に腰掛けている

「彼女を世界を統一する為の犠牲にして」

リボンズの後ろに回って、背中から手を回す

「まるで…人間みたいなことを言うね」

リボンズは口元を奇妙に歪めた

唇の間から空気が洩れるような小さな声を出したことで、それが苦笑であることがわかった

「そうかな?」

確証がないのか揺さぶりをかけた虚仮(こけ)威(おど)しに、リボンズはふくよかな笑みをリジェネに向ける

「変革は痛みを伴う」

大型のスクリーンに映し出されたダブルオーガンダムを見つめる

「統一された世界を創る為には、少数の犠牲は仕方のないことだろう?」

カマをかけたはずのリジェネの様子にも全く動じず、音すら立てずに薔薇色のワインを飲み干した

味蕾から電気信号を通って脳に伝わる味覚の余韻にしばし酔いしれた

天使の私的革命まであと僅か――…

指先で退屈を転がし嘲笑う



苦し紛れの愛ならやめて



(切に望むは覚めない眠り。いっそ、想いごと連れ去って。心の隙間に降り積もる白雪が何度も蘇っては私を沈めようとするから)














羞明の意味

まぶしさ、神経衰弱から強い光の刺激をおそれる病気









ルイスは勝手にイノベ設定

これは管理人が勝手にそう思い込んでいただけです

物質的にではなく精神的にリボンズのそばにいるのはリジェネではなくルイスだったりします

1話のルイスの金色の目が引っかかって仕方ない

本編での幸せを切に願います

























お題拝借、徒花様



あきゅろす。
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