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さよならも云えない




「ねえ、沙慈。あの指輪が欲しい!」

休日、ルイスに「買い物に付き合って」と言われたので僕は付き添い、高級そうなブティック店が立ち並ぶ商店街をゆっくり見て回る

そうしたらルイスが何かを見ていた

店先のショーウインドーにきらびやかに光沢を放つ高価な宝石の数々

その中でもルイスは金色の指輪に目がいったらしい

「えっ!……きゅ、急に言われても!!」

僕だって出来れば買ってあげたい

とりあえず、値段を確かめようと値札を見たら、途方もない金額にただただ唖然とする

でも…この金額なら頑張れば買えそうかも

(ルイスの喜ぶ顔がみたい)

だから、試験休みの間にがむしゃらにバイトした

ようやく手に入れられたのに
覚悟を決め、僕はルイスに告白しようとしたのに

「ごめんね…沙慈」

「えっ」

「せっかく買ってもらったのに。すごく…綺麗なのに」

静寂が辺りを包む

「もう、はめられないの」
包帯に巻かれてあるはずの左手が、無い

「はめられないよ」

目尻に涙が溜まる

「ルイス……そんな」

指輪が手元から落ちる

シーツを握り締めながら

「ごめんねッ!…沙慈」

嗚咽を漏らし泣き崩れるルイス

病室を出てしばらく歩く
廊下の右端に力無く寄り掛かる

なんで……

なんで…こんな、ことに

「…ルイス」

指輪を入れた箱の色がよく見えない

青のはずなのに……視界が滲む

後から後から湧いてくる涙を止める術を…、僕はまだ持ち合わせてはいない



さよならも云えない



(ありがとうもさよならもごめんなさいも)





お題拝借、9円ラフォーレ様



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