[携帯モード] [URL送信]
僕の所為(せい)で


※大人ステラ設定、ステラ視点32話










罪と呼ぶには頼りなく、愛と呼ぶには愚かしく




どす黒い触手のようなものが体の奥底から這い上がり、触れるところからステラを凍らせ、冒(おか)していく

「あ……ああ……」

過大な負荷をかけられていた、脆弱な精神が砕け散る

「いやぁぁぁぁぁっ!!」

視野を灼く白い光りが広がっていく――




喉が塞(ふさ)がったように息が出来ない

脳まで血液が行き届かず頭が眩(くら)み目が霞(かす)む

熱い、全身の血が沸騰しているようだ

意識を保つことが出来ず朦朧とする

火のように熱い息が肺を焦がす

熱で混乱した頭に、過去の情景がランダムに浮かび上がり流れ去っていく

インパルスのサーベルを受けた装甲が、フリーダムの攻撃で深く抉(えぐ)られた時に飛び散った破片が鈍く痛む

思い知らされる

これが死なのだと

奪って奪い尽くして、他人の生き血を貪(むさぼ)るように求めた自分の末路だと

すぐそこまで死が迫っていると言うのに、ステラの心は奇妙なほど穏やか

モルヒネとか言う、痛覚を麻痺させる薬を投与され、体中の血管を巡り浸蝕(しんしょく)されていく感じに似てる

指の先から腕まで、足の指から太股まで微動だにすらしない

破壊されたコックピットの中に凍てつくような風が吹き込む

人間じゃない、怪物

連合のエゴで作られた対コーディネーター用の兵器

強化人間(エクステンデッド)と言う皮を被った、飢(う)えた餓鬼(がき)

嫌悪の目で見られるのはもう慣れた

それを通り越すと諦(あきら)めに似たような倦怠感が生まれ、特に何の感情も湧かなくなる

ところどころが黒焦げ、剥げているシートに憔悴しきった身体の全体重を預け、微睡(まどろ)もうかと思った

――ステラ……

微かに聞こえる

ステラ

愛しくて懐かしい声

――ステラ……ステラ……!

どこか夢のように優しく感じられる

視界いっぱいに迫り、目の前を覆いつくすような紅い紅い瞳

シン――…

普段なら、穏やかな色を讃(たた)えて自分を見つめてくれるその目は、涙で覆い尽くされていた

この苦しみが報(むく)いなのだろうか

自分は今、煉獄の炎に灼かれているのだろうか

物心ついた時から、ナチュラルの大人を凌(しの)ぐ戦闘能力を身につけてきたが、今の自分では大切に思う人さえ守ることすら出来ない――

「シ……ン……」

ステラがその名を囁くと、シンは真紅の目からぽろぽろと涙を落とした

きっと、シンはまた苦しんでしまう

「守れない」は彼にとってのブロックワード

禁忌、絶命のコトバ

一生癒せない胸のつかえを残してしまう

場合によっては追い詰められ、精神崩壊すら引き起こしてしまうかもしれない

重い塊(かたまり)がどんどん膨れ上がっていくような胸の圧迫感を、少しでも紛(まぎ)らわせる為、ステラはそっと微笑む

「会いに……来た……?」

よく動かない手を懸命に差し上げると、シンが強くその手を握りしめてくれた

「シン……私……まも……る……って……」

途中からシンの声が遠くなる

ひゅっと喉を鳴らし、戦慄がステラの背筋を駆け抜ける

――こんなに、愛しいなんて……

ステラの胸をじわじわと失望が侵食していく

涙が後から後から湧き出ては頬を濡らす

「ステラッ……!」

思わず体を強張(こわば)らせるシン

語尾に切なげな響きが揺れた

みるみる顔色が褪(あ)せていく

悪夢のような歪んだ現実が、じわりと耳元から全身に染みる

生命を拒否する、暗い真空の海の彼方(かなた)に、確かにシンは存在(い)てくれた

その事実が遠い灯(ひ)のように、ステラの胸を温かくする

私は孤独(ひとり)ではない――と

スティング辺りが聞けば

「ステラらしくない言い草だな…」

口元を曲げ、澄(す)ました笑みを浮かべる彼にからかわれるかもしれない

子供じみた感傷だと、笑われるかもしれない

「シン……」

ステラの目は鮮やかな紅に惹(ひ)きつけられる




壊れそうな色が好きだった

光の具合で刻一刻と表情を変え、黄昏の空のような琥珀色になったかと思えば、赤く燃える炎を揺らめかせ、遠い、悠久の記憶の彼方へと沈んでいく

喜の感情を滅多に表に出さないステラだったが、シンといる時は些(いささ)か違う反応を見せた

些細な変化だったかもしれない

だが次第に柔らかな笑みを見せるようになったのだ

怜悧(れいり)な美貌の下には、驚くほど繊細な感覚を兼ね備えている

彼女は常に先を見ていた

何を見ていたのかと問われれば、ステラは当然かのように答えを吐く

死だ

自分か、相手の死

その瞳に魅入られているかのようで、ますます不安を募(つの)らせる

優しくて、少し切なげな色

人は自分を焼く炎の奥を覗(のぞ)き込まずにいられない

一億人のなみだと引き換えに私は死に逝く

だから――…




また明日と言ってくれませんか

同じ方を向いてくれますか

嘘に気づかない振りをしてくれませんか

私の世界に居てくれますか

目を閉じてくれませんか

寂しさを分けてくれませんか

涙を止めてくれませんか

愛を受け止めてくれますか




「好き……」

シンの体がどうしようもなく震え出す

堪(こら)えきれない嗚咽が、食いしばった歯の隙間から漏れる

嗚呼、そんな目で見ないで。



僕の所為で



(傷みたいに刻まれたきみの影を、今も独り追い掛けている)















また切なくなってしまった…

今度は明るいの書きます

そういえばスパロボでステラ生存ルートがあるのって本当なんですか!?

スパロボやったことないので、今知りました

詳しく調べたいと思います





































お題拝借、虫喰い・ニルバーナ様


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!