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わかれを、わかれよ(クロウ)




子どもたちに土産を買ってやって、無心にDホイールを飛ばしていると作業着姿の遊星が前方を歩いていた。

「遊星!」

叫ぶものの、遊星は気付いた素振りをみせない。
そんなに小さい声を出したはずねぇんだけど。
首を傾げDホイールを加速させる。
目の前で止めてやればようやく僅かばかりだが遊星は反応した。

「どうしたクロウ」

遊星はいつも通りの反応で、いつも通りだった。
おい、これって、

「…………、」
「クロウ?」
「…………後ろ、乗れよ。送ってやる」

遊星は首を傾げつつもすまないと跨った。
俺は努めて平静になろうとグリップを握りしめ、Dホイールを発進させた。



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遊星のアジトである地下鉄跡に入ると、そこは変わりようがないほど当たり前の日常が転がっていた。
邪魔するぜ、と一言声をかけ中に入る。
遊星は着替えをするらしく奥に引っ込んでいった。
俺は先ほどの疑念の正体を探るために当たりを見渡す。
そして何気なく入った簡易キッチンに、証拠を見つけた。
ばたばたと踏みならすように歩けば、ちょうど遊星が私服に戻っていた。

「遊星!」
「なんだ、何かあったのか」

何があったなんて、分かりきった事だろう!
裾を握りしめぐっと言い淀む。

「……遊星、お前、認めろよ」
「いきなり何の」


「ジャックはもう死んじまったんだよ!」


部屋に響いた声は、家具を僅かに揺らした。
俺は言ってしまった自分の言葉に瞳が潤んでくるのを感じた。
次喋ったら、泣き出すだろう。
だが俺がここで言うのを止めてしまえば、遊星はダメになってしまうんだろう。
そんな事、絶対にさせたくない。

「………それは知って」
「じゃあ何で食事2人分作ってんだよ!」

先ほどの簡易キッチンには、遊星が食べた皿と、手つかずの料理が一つ置いてあった。
どうみても一緒に暮らしているジャックのものだった。

「なんでっ……何で一番お前が認めてねぇんだよ…!好き合って、またっ2人でって…認めろよ遊星!」

じゃないとどうしようもない。
ジャックが可哀想だ。
あまりにも悲しすぎるだろう。
涙が止まらない。
一緒に鼻水まででてみっともないことこの上ないが、構ってられなかった。

「認めろよ、遊星っ……!」


認めろ、遊星。
認めてやれよ遊星。
じゃなきゃ可哀想だろ。

ジャックも、俺も、


そして遊星、お前もだ。





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あきゅろす。
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