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女王様

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僕は早めに教室に戻り、自分の席に座ると男どもが僕に群がる。

彼等は自分達の事を僕の“ファン”だと言っているが、僕からしてみれば、美しい僕に魅了され自ら奴隷となった下僕達だ。


「天宮君、喉かわいてない?大丈夫?」

喉か・・・そこまで渇いていない。けど、たしか売店で新発売になったカフェラテが有ったな、飲んでみるか。

だが僕は今まで、控えめで気品が有り性格良しのキャラで通している。だから安易に“新発売のカフェラテを買って来いよブタ野郎、しょうがないから飲んでやる”なんて本音は言わない。

あくまでも控えめに遠慮しつつも欲しいものをねだる。

「大丈夫だよ、気を使ってくれて有難う。そう言えば売店でカフェラテが新発売になったみたいだけど、皆はもう飲んだ?」

「飲みました!」

下僕の一人が答えた。僕は内心でニヤリと笑う

「良いなぁ〜、実は僕はまだ飲んでいないんだ。美味しかった?」

物欲しそうに上目遣いで彼を見上げると…

「か、買ってきます!是非飲んでみてください!!」
顔を真っ赤にさせて、彼は走って僕のカフェラテを買いに行った。

また別の下僕が僕の肩を揉みだす。

僕に触れることを許されているのは、天宮莉央ファンクラブの幹部のみらしい。

「天宮君、今日も可愛いね」

「天宮さまより綺麗な人を見たことが無い」

男達は口々に僕を褒め称える。
当然だ。
美しいものに美しいと声をかけるのは自然な行為。

僕は美しいッ!

おまけに、性格も良くて気立ても優しい・・・表向きはね。

外見も中身も美しい僕は、彼等にとって正に神の様な存在だ。


息を切らせながらカフェラテを走って買ってきた男に微笑みながら礼を言う。
それだけで彼は僕に見惚れて幸福そうな顔をした。


僕はこのクラス・・・いや、この学校の女王様、女神なのだ。

皆、僕にひれ伏すが良い!

心の中で高笑いをしている時だった--



-ガッ!!


机からはみ出していた僕の足が蹴られた。

「邪魔、そんな短い足を出すなよ!誰かが転んだりしたら危ないだろ?」

「こッ、近藤一輝ッ!!!・・・くん」

飲んでいたカフェラテを吹いてしまう所だった。

…そうだった!コイツとは同じクラスなんだ!
何て事だッ!!今、僕の足を蹴ったぞコヤツ!しかも相変わらずの発言…許せぬ!

だが、ここで怒ってしまってはダメだ・・・黒い炎がメラメラと燃え上がる内心が表情に表れないように一生懸命努力する。


「こんなオトコオンナに鼻の下伸ばして、お前等もアホ?ねぇ、アホなの?」

僕の下僕達にまで難癖をつけてきた。

「天宮君の悪口を言うなんて許せん!」
「そうだ、そうだ!近藤!貴様何様のつもりだ!?」

下僕達が僕を愚弄した近藤に怒り始めた。

ざまあみろ!皆の衆、もっと言うのだ!

表面上では困った顔をしながら「僕は大丈夫だから、喧嘩は止めてよ」なんて綺麗ごとを言うが、僕は心の中ではニヤニヤする。


「皆から責められている俺を見て、本当は愉快なんだろ?」


-ギクッ!


近藤は邪悪な笑みを浮かべて俺の顔を覗きこむものだから気まずくて、つい視線を反らしてしまった。


「天宮さまを侮辱するな!」

「そうだ!天宮君に限って、そんな訳無いだろ!天宮君は見た目以上に心も綺麗なんだぞ!」

僕の信者達が次々に口を開く。

「・・・そうか?俺はコイツが自分を偽っている様にしか見えない。聖人君子の様な発言が嘘臭いし、何だかんだで結局は皆を良い様に、こき使っているじゃん?自分の事を女王様か何かだと勘違いしている痛い男に見えるのだが」

何て鋭い男だ・・・近藤一輝、恐るべし!

しかしその発言により僕の下僕達のブーイングを一斉に浴びることとなった・・・が、近藤は全く気にも留めていない様に涼しい顔をして彼等のバッシングを聞き流していた。


心臓に毛が生えている、とは彼みたいな男の事を言うのだろう。

クラス全員を敵に回しても、近藤は発言を訂正したり僕に謝ることは無く笑って言い返していた。


僕は怒りを通り越して、少し関心してしまった。


近藤の言っている僕への見た目の事はあくまでも近藤自身の意見であり、僕の内面部分については・・・あながち間違いではない。



授業開始のチャイムが鳴り、教師が入室した事により騒ぎは収まった。

普段通りに授業が始まる。

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