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早退




「おまたせぇ〜雅ぁ」
淳がカーテンを勢い良くあける。


「椅子にジャケット掛けて有ったからついでに持ってきたで」

「ごめん淳、色々と有り難う、助かった」
俺が淳から自分の荷物を受け取ろうと手を伸ばすが、その手を淳がつかんだ。

「何?」
「何が何やねん!はよ帰るで?」

淳が俺の手を掴んで歩き出した

「え?淳、帰るって?」
「言葉の通りや!貧血の雅ぁを一人で帰す訳ないやろ、せやから俺も雅ん家行く」


困惑する俺をよそに淳は歩みを止めない


「授業はどうすんだよ!それに淳、ジャージのままだし鞄だって俺のしか持ってないじゃん」

「授業は普段どおりサボりや、気にするな!制服は家にも予備が有るからエエねん、鞄はいつも持ってない、俺は常に手ぶらや。携帯と銭だけはしっかり持ってるから安心してええで」

「・・・・」
俺は結局何も言い返せなかった。ただ一言



「ありがとう」



とても小さい声で言ったのに淳には聞こえていたようで、にっこり笑顔で

「ええねん」
と、返された。

淳は俺の歩くスピードに合わせて、事あるごとに「大丈夫か?」と声をかけてくる。
心配かけて申し訳ない気持ちと、淳の優しさに心がほころぶ。


普段よりゆっくりと歩いた為に、倍の時間がかかったしまったが無事に駅について、電車に乗り込む。
朝はひどく込み合うこの電車も今の時間は流石にすいていて、二人で並んで座る。


ガタンゴトンと走行中の電車独特の雑音、となりには淳。

「高校の友達が俺の家に来るの、龍一以外では淳が初めてだ」
「ほんま?」
「本当」

淳はニコニコと上機嫌、俺もそんな淳といると穏やかな気持ちになる。

俺の家が有るホームに着く、電車を降りて駅を出ると、また二人並んで歩き出す。

通いなれた住宅街を淳と歩いている・・・何か不思議な気分だ。
しかも俺の手は淳にずっとにぎられたまま。淳の大きな掌に包まれる感覚は嫌じゃない。




程なくして俺の家に到着した。
ごく一般的な一戸建て、庭には母の好きなハーブが植えられている。

「ついた」
「ココ?」
「ここ」
「そっか、じゃあゆっくり休むんやで?」

淳の手が離れた


「え?淳、もう行くのか?せっかくだから茶くらい飲んでいけよ」

「迷惑ちゃう?」

「そんな訳ないだろう。あがれよ」

俺から淳の手を掴むと玄関に招き入れた。

「ほな、おじゃまします!」
「誰もいないから気とか使わなくて大丈夫だぞ?両親はいつも夜遅いから」
「そー・・・なんや」

淳はソワソワとしていて妙に落ち着きが無い。
「トイレならそこの奥を右だから」

「あ、お、おおきに」

教えてやったがどうやら違うようで淳は礼だけ言ってトイレには行かなかった。




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