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psychotic
バスケ



――――−




「行けー!徳永ーッ!」

「まかせときッ!!」


バスケットボールを受け取った淳は自信満々で笑った。



ダンッ!ダンダンダン・・・

ーシュッ!


ディフェンスを軽々通り抜け、ジャンプショットでリングの縁に当たる事も無く見事なシュート、淳の働きにより逆転勝ちで試合終了。

その瞬間歓声があがり淳はガッツポーズをして、皆が淳の元に集まりハイタッチをした。
楽しそうに皆が盛り上がっている体育の授業中、俺は一人制服姿で壁際からそれを眺めていた。


多分、俺が体育の授業に参加する事は二度とないだろうな・・・、龍一に禁止されてしまったからだ。
龍一は俺のクラスの時間割表を入手し、こまめにチェックするようになった。
また一つ俺の自由が奪われる。

束縛というのか、龍一の俺に対する執着が日に日に強くなってきてる気がする。




「何シラけた面してんねん」

気付いたら目の前に淳がいて俺の眉間を人差し指でグリグリと押し付ける。
俺は感情を表に出さず、無表情でその指をどけた。

「俺の勇姿見たぁ?ってか雅ぁ〜、何で見学してるん?」
「・・・体操着忘れた」

「そうなん?ドジやなぁ〜」

淳は笑って俺の背中を叩く、何がそんなに面白いのか俺には理解不能だが淳の心底愉快に笑う姿を見てると俺の暗い感情が不思議と薄れていく。

いつだってそうだ。

俺が龍一の事で悩んでいると、いつの間にか側に来て、その明るい笑顔と軽いノリで空気を変えてくれるんだ。

-フッ

「おっ!?やっぱマサァ〜は辛気臭いツラより笑った方が一億倍も可愛いで」
「男に可愛いって言葉はどうなんだ?喜んで良いのか?」

どうやら、俺は自然と笑顔になっていたらしい。
淳といると安心する、心が落ち着く、一緒にいて楽しい。よくわからないけど、これが友達ってやつだと思う。

昔は龍一の前でも自然に笑っていたと思うけど、それが思い出せない。

今となっては淳は俺にとって心の緊急避難所的な存在になりつつある。ほぼ教室内でしか関っていないのに友達と思える存在は淳しかいない・・・淳は俺の事どう思っているんだろう、ただのクラスメイト?知人?。

「なぁ、淳」
「なんやぁ?」
「俺らって・・・と、友達・・だよな?」

淳は俺の顔をポカンと口を開けて見ていたかと思えば急に腹抱えて笑い出し、また俺の背中を叩き始めた。
俺はだんだん恥ずかしくなってきた。

「なッ!何で笑うんだよッ!?」
「アハハハッ!ひぃ〜面白ッ!真面目な顔して何を聞いてくるのかと思えば、そんな事かいな!アホちゃう?」

ひどい、何なんだよ!俺は恥ずかしさを隠すべく淳をポカポカ叩いた。

「やめぇ〜雅ッ!痛い、いたい。アハハハ」
「笑いすぎだ馬鹿ぁー」

俺は淳を叩くのをやめて、ソッポを向いてしまった。ガキが不貞腐れたみたいな幼稚な行動に俺自身何をやってんだか・・・と思ってしまう。


「雅は友達やで!」


「本当?」

俺が振り向くと淳がニカッ!と笑った。面と向かって言われると少し照れくさいが凄く嬉しかった。


「ああ、まぁ・・俺てきに雅ァは友達っちゅーか・・・「危ないッ!!!!」

淳の言葉途中に叫ぶ声の方を向いた俺の顔面に向かってッ


-ドゴンッ!!


俺はその衝撃にバランスを崩し体育館の床に倒れてしまった。

「マサッ!大丈夫かッ!!雅ッ!」
「ゴメン雅人ッ!」

俺は一瞬何があったか把握出来なかったが、痛む顔を手覆いながらも自力で立ち上がった。
どうやら金子の投げたボールが顔面に直撃したらしい。

「気をつけろよな、マジで」
「雅人ッ!マジでゴメン・・・って雅人ッ!血ぃ!血ーッ!!」

ん?俺が顔から手を離し、両手を見るとベットリとしたモノが・・・

「うわっ!」

勢い良く鼻血が出ていて口元と、白いYシャツを真っ赤に染めていた。
うわぁ〜・・・制服のジャケット教室に置いてて良かったぁ。

「雅人ッ!本当にごめん!先生、俺雅人を保健室に連れて行きます!」
金子が教師に向かって大きな声で伝え、了解を得ると俺の肩を担いだ・・・と思ったら。
「ええよ金子、雅は俺が保健室に連れて行く。俺もさっきジャンプした時に筋痛めたっぽいから、アイシングしたいと思っててん。ついでや、ついで!」

「あ、あぁ・・・じゃあ頼んだ徳永。雅人本当にゴメンな!」

「雅は俺に、まかせとき」
「大丈夫だから気にするな。出血は多いみたいだけど大した事ないから」

金子の変わりに淳が俺の肩を抱き、保健室に行く事になった。



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