☆★STAR★☆ 2 俺も変な所で意地っ張りなんだよな…。 早く仲直りしたいのに、慶斗が相手だとついつい自己主張が強くなってワガママになってしまう。 たぶん、これも慶斗に対する俺の甘えなんだろうけど…。 俺は授業中、どうしたら良いのかずっと悩んでいた。 落ち着いて話を聞いて貰える様に帰りは慶斗と一緒に帰ろうと思ったので、次の休み時間には俺から慶斗の席へ行った。 「慶斗、今日の放課後さ…一緒に帰ろう」 「俺も同じ事を思ってた。学校では話に集中出来ないし…俺か歩夢の家でゆっくり話そう」 「うん」 : : そして、放課後 慶斗は俺の席へ来ると、俺も席を立ち上がった。 二人一緒に学校を出ると駅までの道を二人して無言のまま…重苦しい雰囲気のまま歩いた。 「……。」 「………。」 沈黙を破ったのは慶斗の方だった。 「なぁ、歩夢。どっちかの家でゆっくり話すって言ったが歩夢の家じゃなくて俺の家でも良いか?歩夢の家も何気に集中出来ないよな」 「…うん。いいよ」 確かに、俺の家は母さんも姉も空気を読まずに急に部屋に入ってくるし、そうなった場合は話の腰を折られる事間違いなしだ。 俺たちは慶斗の家に向かった。 : 佐川家に到着すると、慶斗の家族は誰も居なかったが取りあえず俺は慶斗の部屋へ案内された。 普段からよく来ている部屋で、今まで自室の様に寛いでいた慶斗の部屋だが、何だか今日は凄く居心地が悪い。 喧嘩中?の様な感じで、お互いにピリピリとした空気を醸し出しているからだが、折角慶斗の部屋に来たんだから床に置いてあるジャンプを拾ってベッドで寛ぎながら読みたい。 しかし、いつもは慶斗の傍で、慶斗の部屋でリラックスしていても今は無理だ。 早く仲直りしたいのだが… 慶斗が飲み物を取りに行ってる間に俺はベッドを背もたれにして床に座った。 慶斗は入室すると俺の目の前にある背の低いテーブルにコップと茶菓子を並べて、俺の隣に、俺と同じ様にベットを背もたれにして座るなり頭を上げて後頭部をベッドに乗せると目を閉じて深呼吸の様な溜息を吐いた。 俺が横から慶斗を見ていると慶斗はゆっくりと目を開いて俺を見た。 「で、歩夢。宮本くんの家に泊まっていたんだって?」 直球で聞いてきたので、俺は一から全て慶斗に話した。 慶斗との電話の後でコンビニへ行き、キングと再会して事の成り行きでバイトする事になった事。 仕事の体験から初めて、本気で仕事をする気になり3日間頑張った事。 田中さんの事。 事細かに、この3日間の事を話している間、慶斗は相槌をうってくれて静かに聞いてくれていた。 : 仕事に関する全ての話を聞き終わった慶斗は不機嫌な表情から柔らかい、いつもの顔になっていた。 「そうか…歩夢、頑張ったんだな。歩夢、手を見せてくれ」 「手?いいよ」 慶斗は俺の手を取ると手の平を触った。 「歩夢の手の平、少しタコになってるな」 俺の手の平の中指と薬指の付け根の少し硬くなった皮膚をを触った慶斗は優しくソコを撫でた。 モップや窓を洗うときの棒状の道具を使用した時に出来たタコと思う。 「手がこんなになるまで仕事を頑張ったのか。歩夢は真面目だから一生懸命働いたんだろうな」 いつもの優しい俺の知ってる慶斗の表情だ。 穏やかな慶斗は大好きだ。 慶斗から褒められ頭を撫でられた俺は凄く嬉しくて目を細めて微笑んだ。 慶斗はそんな俺を見るなり、頬に触れてきた。 くすぐったい。 「なぁ、歩夢」 「歩夢の事だから一生懸命業務に没頭した事は俺も解る。歩夢ってそういう子だから。たださ…俺が聞きたい事はそれだけじゃないんだよね」 「?」 慶斗は穏やかな微笑みを表情から消した。 「宮本君に…何かされなかった?確か…宮本君にはカッコイイお兄さんもいる様だけど、彼とは接触しなかった?」 「……した」 声色は優しい感じだけど、どことなく冷たさを感じる…。 誘導尋問みたいな慶斗の質問に俺は目を逸らしたが嘘をつく事が出来ない俺は頷いた。 すると慶斗の声色が少し変った。 「お兄さんや宮本千秋に…変な事をされただろ」 「え!?」 全てを知ってるかのように断言する慶斗に俺は驚いた顔をして振り返った。 [*前へ][次へ#] [戻る] |