☆★STAR★☆
加藤★きっかけB
「中学生は成長期だから直ぐに大きくなる!って言って母さんが大きめのジャージを買ってきたんだッ!俺には超ダボダボだけど、加藤君には調度良いだろ?」
真輝は俺の上着を脱がせると、暖めたタオルで俺の体を拭き怪我の手当をした後、ジャージの上着を無理やり俺に貸し付けた。
続けて真輝は俺のベルトを外そうとしたので、流石に驚いた。
「…ズボンは、そのままで結構だ。下半身は自分で出来るから手当てもいらない」
「そっか」
まだ全身が激しく痛いが体も自由に動かせるようになった俺は立ち上がると、フラフラとした足取りで、ここまでしてくれた真輝に礼も言わずに保健室を出た。
だが、本当に御節介な事に真輝は走って追いかけて来るなり、俺の腕の間に入り込んだ。
強制的に肩を貸してくれた感じだ。
「何だよテメー、帰れ」
「こんなフラフラな人を放っておけないよ!加藤君を家まで送ったら帰る!」
「…俺と一緒の所を見られたら、不良に目を付けられるかもしれねぇぞ?」
「うっ!それは…怖い。でも、大丈夫!」
「はぁ?」
「今の加藤君って、顔が凄い腫れてるから正直誰か解らないと思う!」
「……。俺が元気だったら多分、今の発言で真輝をブッ飛ばしてる」
「ひぃ〜〜ッ!ご、ごめんなさぃいッ!!」
「冗談だ。俺はソコまで鬼じゃない」
「冗談かぁ〜。良かったぁ!!…加藤君って鬼だと思っていたから本気にしちゃったよ」
「………。」
結局、真輝には家の近くまで送ってもらったが、俺の家路の途中には不良の溜り場がある。
念の為、溜り場に差し掛かる前に真輝と無理やり離れて俺は一人で帰った。
数日後、俺は、俺を集団でボコった上級生軍団を締める事にしたのだが、事情を知った国文慎吾さんが、俺に加勢してくれて、圧倒的な優勢であの大人数を残らずボコボコにしてやった。
二度と俺に歯向かわぬ様、徹底的に潰してやった。
さらに、それから数日経ったが、真輝と特別に接触する事は無かった。
真輝にとって困っている人を助けるのは日常茶飯事なのか、不良である俺を助けたのもアイツにとっては何気なくした行動だったのだろう。
別に特別な意味があって俺を助けた訳では無かった。
学校で会っても、ただすれ違うだけ。
今までも、こうして真輝と学校ですれ違っていたんだろうけど、俺にとってはどうでも良い一般生徒でカスみたいな存在だったはずだが、どうも…あの日以来、真輝の事が視界に入る。
だが、平凡な一般男子と、学校どころか地域でも悪名高い不良の俺。
接点など有る訳が無い。
真輝も俺も自分達の仲間と時間を過ごし、お互いに話しかけることも無く、真輝とはアノ日以来、何も無かった。
話すきっかけも無いし・・。
借りたジャージを返すという名目で真輝に話しかける事は可能だと思ったが、俺はそれをしなかった。
ジャージを返してしまったら・・・真輝との関係が、思い出が跡形も無く消え去る様で胸の辺りがモヤモヤした。
学校では自然と視線で真輝の姿を追い続け、家に居る時は真輝から借りたジャージを見てると心拍数が上がって変な感じだった。
何だこの感情…気持ち悪ぃ。
何でこの俺が、加藤充様があんなチビで、しかも男なんかが気になるのか、意味が解らなかった。
真輝で夢精してた朝は凄く自己嫌悪に陥った。
だが、日を増すごとに真輝は俺の注意を奪っていった。
よく笑う奴だが、困ったときや悲しい時、照れたり拗ねたり、表情がコロコロ変わって面白い。
真輝といつも一緒に居るツレが「歩夢」と呼んでいた事で、フルネームもわかった。
だが、真輝歩夢は同級生からは主に「ムー」ってアダ名で呼ばれていた。
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