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トーキング

そして慎太郎さんは真剣な顔をして俺を見た。


「私と初めてお会いした時もそうでしたが、歩夢君には警戒心と言うものが感じられないのです。邪な考えの男にノコノコ付いて行って、うっかり強姦されて欲しくないのですよ。今回の件で私は嫌われても良いです。私を含め男性に対して警戒するように指導をしているのですから…」

「…なんで…、何でそこまでするの?長澤さんに命令されたから?」

「違います。…確かに社長には歩夢君を見守れとの指示が下りましたが、この行為は私の独断です。恐らく、この状況を社長が見たら今度こそ私の首は飛ぶかもしれません」


慎太郎さんの返答に余計わけが解らなくなった。

よくよく考えれば慎太郎さんは確か異性愛者で確実に女性ともお付き合いしていた。
それに以前、俺の事に対して興味が無いとも言っていた気がする。

男の俺に性的なこの行為をしているのは長澤さんの為に動いているのでは無いの?
慎太郎さんにとって絶対的存在の長澤さんからの命令だから、本当は興味も無いし、触りたくも無い男子の俺にあんな事をしたのではないかと、少しだけ思っていた。

でも、長澤さんからの指示では無い。

逆に慎太郎さんにとって危険な立場になるかもしれないのに…

「なぜ……??」


「私にも…何故この行動をとったのか自分でも詳しくはわかりません。でも、また今日みたいな事が起こったとしたら、そして、今日とは違って君が最後まで犯されたとしたら……」


慎太郎さんは身を乗り出して、苦しそうな表情で俺の髪を撫でた。


「歩夢君が知らない男に強姦されて泣いている姿を想像したら胸が張り裂けそうな気持ちになるのです。純粋無垢な君が心無い男に汚されて悲しむくらいなら私自ら貴方に痛みを刻み、これをトラウマにして今後、君に訪れる危険を少なからず回避出来るのでは無いかと考えたのです」

慎太郎さんは俺の髪を指に絡めるようにして触りながら次々と言葉を紡ぐ。

「この学校に就任してまだ期間は浅いですが、教師として貴方をずっと見守っていました。…とは言っても教師としての御勤めもあるので見守ると言っても限度もあり、始めは社長の指示なので仕方なく業務的に見てましたが…」

慎太郎さんは髪を撫でた後、今度は俺の頬に触れた。

「笑ったり、困ったり、悲しんだり…そのコロコロと変わる表情が子供っぽくて可愛く思える様になりました。・・・当初、社長から指示された観察対象が男と聞いた時は落胆してましたよ…本当は女子生徒の方が良かった。と、思っていました」

慎太郎さんは肩をすくめて少しだけ笑った。

「でも、あゆむ君は男子生徒だけど、不思議と見てるのもそれなりに苦痛では無くなり、見ているうちに間抜けだけど情に厚くて、素直だけど頑固者でもあり、今時の高校生にしては純粋でキラキラと輝く綺麗な子だと感じ始めました。」

慎太郎さんは目を細めて、眉尻を下げて微笑むと、俺を拘束するネクタイに手を掛けて、解き始めた。

「私は社長と違って女性だけを愛していたいし、ストレートな道を歩んで普通に結婚して子を作って順風満帆な人生を目標としている為、かなり認めたくは無い感情だけど、…こんなドロ芋の様な特別美形でも無い平凡もしくは普通以下かもしれない子供、しかも男子である歩夢君に夢中になる社長の気持ちが少し解ってきました。」

ドロ芋って…、ズバズバと失礼な事をサラっと言われたが…、俺は黙っておく事にした。

「本当は初めて会った、あの日から君の真っ直ぐな所を気に入っていましたが…」

「初めて会った日?俺なにか言いましたっけ?」

「覚えてない?財力も名誉も欲しいものを手にした社長の事を君は可哀想と言ってくれたよね?あゆむ君は社長の立場や権力は関係なく長澤大吾という人物を、ただの一人の人として接していた。これって凄い事なんだよ?」

「……。」
やばい、覚えてない。
俺、長澤さんの事を可哀想だなんて言ったっけ?

あの時の事が思い出せずに目を泳がせていると慎太郎さんは笑って俺の頭を撫でた。

「やっぱり覚えてないみたいだね。・・・歩夢君、とにかく君は不思議と人を魅了する星の元に生まれたみたいだ。興味深い君を私個人のモノにしてみたいのだが…、社長にまで気に入られている歩夢君を私が手に入れることは残念だが皆無に等しい」

慎太郎さんは拘束していた俺の手足を自由にすると、少し痕がついてしまった手首を申し訳無さそうに優しく撫でた。

「私の手に入らないのであれば、君を傷つけ誰にも心を開かないようにすれば、歩夢君は誰のモノにもならないとも考えたよ。私を含め全ての男を嫌いになれば良い…、だから私自らレイプをしようと身勝手な考えをしたけど、止めたよ」

「…何故?」

「何故って?あのまま…私に犯されたかったのかな?」

慎太郎さんの質問に俺は激しく首を左右に振った。

「あははは!そんな露骨に拒否するなんて少し傷つきますよ。…何故考えを改めたのかが知りたいんだよね?」

「はい」

「…ん〜。歩夢君は疑問符が多いね。すぐに答えを聞こうとするのは君の悪い癖だと思います。……と、いう訳で何故私が君を犯すのを中断したかは秘密です。そのツルツルの小さな低級脳ミソで考えて下さい」

慎太郎さんは笑って俺の頭をグリグリと撫でると立ち上がって伸びをした後に俺の下着を含む衣服を全て拾い上げた。


「歩夢君、この制服…若干ザーメン臭いです」

「えっ!?」

…思い返せば体に小峰達3人のザーメンを掛けられた後、体を拭かずにそのまま着衣したから不思議では無い。

「歩夢君、この衣類は私が洗濯と乾燥機にかけておきますから、その間に奥にあるシャワールームで体を洗ってきなさい」

「え?シャワールーム??」

「珍しい方ですが生徒指導室にはシャワールームが設備されている学校が昔はちらほらと有ったんですよ。特に中学校に多いですが、ブリーチなど染髪した非行児童を呼び出して黒髪に染め直しする際に使用していました。今の時代では教師が生徒の髪を無理矢理黒染めするなど児童の人権を奪う行き過ぎた教育としてモンペアが騒ぎたてた歴史も有る事から、生徒指導室へのシャワールームの必要性が無くなりつつありますが、不良率の高い工業高校の為か、この学校には未だに有るんですよ」

「…へ、へぇ〜、そうなんですか」

「はい。…あ、タオルは脱衣所の所に有るからそちらを使ってください。私は洗濯の為に部屋を出ます。念のため外から鍵をかけますが、誰か来ても勝手にドアを開けないで下さい」

「解りました。それじゃあ…遠慮なくシャワーをお借りします」

「はい、どうぞ」

慎太郎さんは小さく頭を下げると生徒指導室から出て、言葉通り鍵をかけて去って行ったようだ。

俺は人の気配が無くなったのを確認してから奥へ有るというシャワールームに向かった。







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