☆★STAR★☆
加藤は加藤。
加藤は俺を見て、怖がらせない様に気を使っているのか、浜田君の発言に対して困った様に眉尻を下げていた。
「加藤!怖くないから大丈夫だよ!!俺、加藤の事見直した!」
感涙をポロポロと零しながらも、加藤の不安を取り除きたくて俺はニッと歯を見せて笑った。
すると加藤は驚いた顔をしたけど、数秒後に思いっきり俺を抱きしめた。
「ムー君ッ!!」
強い抱擁をする加藤は俺の耳元で小さく「ありがとう…」と、呟いた。
「歩夢ちゃんに触るなッ!と、言いたい所だけど…転校も嘘だと解って安心したし、黒工の帝王も大変そうだから…特別に今日だけは許してやる」
杉田君は不貞腐れた顔をしていたが、加藤が俺を抱きしめるのを見逃してくれた。
でも、加藤の腕の中に納まる俺を見て、やっぱり嫌だったのか何かソワソワして落ち着き無くタバコを吸い始めた。
慶斗は黙って見ていたが、フェンスを背に座ると加藤に抱きしめられる俺を見ないように瞼を閉じて不貞寝をする様に顔をそむけた。
浜田君は…尊敬する加藤の凄さが俺に伝わって嬉しそうだったけど、それと同時にとても切ない表情で加藤に抱きしめられる俺を見ていた。
そして加藤は尚も強く俺の事を抱き締めていた。
正直…、皆の前で抱擁されるのは恥かしかったけど俺は大人しく加藤の腕の中にいた。
すると…
俺の背中にあったはずの加藤の手が降下して、俺のお尻を撫で回す様に触りやがった!
やはり加藤は加藤だ。
俺は条件反射で加藤の頬肉を摘むと左右に引張った。
イケメンの顔が無残にもマヌケになる。
「…むー君、痛いよぉ〜離して?」
「頬を摘む手を離してやるかわりに加藤も俺のケツから手を離せよ?」
「……」
加藤は無言で俺の尻を触り続ける。
…この野郎…
つまり、頬を抓られたままでも良いから俺にセクハラしていたいと言う事だろうか…。
…困った、どうしよう。
予想外の行動に俺が戸惑っていると調子に乗った加藤が俺の尻肉をギュッと握った。
「うあぁッ!?」
思わず驚きの声を叫び赤面した俺は恥ずかしさに潤む瞳で加藤を睨む様に見上げた。
すると加藤は至福の表情で俺を見下ろして笑う。
「ムー君、可愛い過ぎ!相変わらず良い香りだし、お尻も柔らかくて…」
そう言った加藤は俺の腰を抱き寄せると腰を押しつけて来た。
って、ちょっ!!?
俺の下腹部に何か硬い物が当たってるぅッ!?
「ムー君が可愛い過ぎてヤバイ」
いやいや、ヤバイのは加藤の頭だッ!
何でこんな所で、しかも皆がいる場所で発情してんだバカ藤!
ってか、勃起した股間を何故俺に押し付けるのだッ!?
毎回思うがコイツに羞恥心は無いのだろうか…。
先程の、浜田君の話で感動して加藤の事をカッコいいと思った俺の気持ちを返しやがれ!
そもそも黒高の帝王と、今、俺の目前にいてデレデレと鼻の下を伸ばすスケベ顔の男は本当に同一人物なのか…。
キャラにギャップが、かなり有り過ぎます!
流石にこのままセクハラをされ続けるのも嫌な訳で、俺は抵抗をする為に加藤の胸元に手を当てて突っ撥ね、この密着から逃れ様とした。
だが、残念な事に腕の中から脱出する事が出来ない。
何度も同じ様な事を体験してきたから解っていたけど、やっぱり俺は非力で抵抗の一つさえも満足にいかず身体を触られ続ける。
同じ男なのに何故こんなにも力に雲泥の差があるのか…。
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