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☆★STAR★☆
女は強し

「モヤシ?確かに細いし白いし頼りない所がモヤシっぽいわね!」

性格の悪い姉は俺を見てモヤシと小馬鹿にした男達に便乗して笑っていたが…

「モヤシは意外と利用価値が有るのよね。あんた等ゴキブリと違って気持ち悪くないだけ、まだマシだわ。邪魔よ、道をあけなさい」

...お姉さま…今、ご本人達を前にして何て仰いました...?


「んだと、この糞アマッ!!黙ってりゃ調子に乗ってんじゃねーぞゴルァ!」

当然ながら大変ご立腹。

男の一人が有ろう事か姉の胸ぐらを掴もうとした瞬間ッ!!

姉は上体を反らしながら…

「弟を馬鹿にして良いのは私だけよ。まぁ、モヤシは良い例えだったけど…ってか、汚い手で私に触るな、調子に乗ってるのはあんた等よ」

男の手首を掴み上げ…

「さっきから言ってるでしょ?邪魔よ、どきなッ!!」

「グわっッ!!!?」

男が宙を舞う・・・


ードシャッ!!


姉は軽々と男を背負い投げし、地面に叩き付けた。

俺と、もう一人の男は口を開けて唖然…

地面に叩きつけられた男性は呼吸困難に陥っているのか咳き込んでいた。

仲間を心配して、もう一人の男は倒れている人の元へと駆け寄った。

姉は掌をパンパンと叩き払って、涼しげな顔で俺を見た。

「さぁ、行きましょう」

何事も無かったかの様に歩き出した。

「ちょっ!あの人、大丈夫なの!?」

「大丈夫よ。2〜3分くらいしたら呼吸も落ち着くわ」

・・・それにしても、自分よりも長身の男を投げ飛ばすとは……やっぱり姉は最強だと思った。

「歩夢」

「は、はいッ!」

「どうして、か弱いレディーの私があんな強そうな男を倒せたかわかる?」

「か弱いレディーとは誰の事か分りませんが何故、姉があの男を倒せたのか・・・謎だ」

俺が答えると姉は俺の後頭部を平手で軽く叩いた。


「今のはテコの原理を使ったのよ、それとパワーバランス。喧嘩の強さはもともとのセンスも有るけど、コツさえ掴めば大丈夫。女でもザコな男になら勝てるのよ」

「喧嘩にコツ?」

「例えば、相手が右拳のストレートを出してくる場合、受け手も拳の流れに沿って同じ方向に腕を動かすの。力を軽減させつつ攻撃を受け止める。その後は自分の身体を軸にして攻撃に転じる。私は女だからともかく、歩夢も一般の男よりも体が小さいから懐に入りやすいの、それをチャンスに攻めに転じなさい。さっきの私のようにね!」

「・・・なるほど!小柄な体格を生かした攻撃が出来るって訳だね!」

コツを知ったら俺でも、強そうな男を倒せるような気がしてきた。

「そうよ、まずは相手の懐に上手く入り込む練習をしなさい。上手く懐に入れたら胸ぐらを掴むッ!そしたら相手に身体を密着させて一気に投げ飛ばす!!」

姉の話を聞いて、先程の姉の綺麗な背負い投げを目の当たりにして、俺の胸がドキドキと高鳴る。

俺も姉のように大男を軽々と投げ飛ばせるかもしれないッ!

今まで激弱と思っていた自分が、強い男へと生まれ変われる気分だった。

「手合わせは家に帰ったら、庭で練習するわよ」

「ラジャーッ!隊長ッ、特訓お願い致しますっ!!!」

俺は軍人の様に姉に敬礼した。

「恥ずかしいから変な呼び方しないでよ!」









無事に電車にも乗り、帰宅した。

しかし、突然の雨…。

庭での手合わせは中止となった。
俺はリビングの窓ガラスに手をついて雨に打たれる庭を見て溜息をついた。

「歩夢、特訓はまた今度にしましょう。先に風呂入ってきなさい」

姉はテレビをつけてソファーに横になった。

俺は渋々姉の言うとおり風呂に入る事にした。




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