☆★STAR★☆
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さっきまで喧嘩モードだった二人はいつしか、冷静を取り戻しており、長澤さん、浜田君、慎吾さんは呆気に取られて鬼に連れ去られる俺を助ける事無く見ていた。
たぶんアーミンには誰も勝てないのだろう・・・。
そして姉は再びピシャンッ!!と音をたてて少々乱暴に開けた襖を閉めた。
姉に腕を掴まれている俺は、ピカピカに磨かれた料亭の廊下を引かれるままに無理矢理ハイペースに歩かされる。
俺はドナドナの子牛の心境でこの場を姉と後にした。
…ぶっちゃけ、ドナドナ子牛の心境なんて分らないけどね。そもそも、ドナドナって何だ?何語だよって感じだ。
そんな、どうでもいい事を考えながら姉に強引に手を引かれて歩く俺。
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料亭を後にした俺と姉は、ひとまず大通りを歩く。
姉は普段、送迎車やタクシーでの移動が多く俺と違って、めったに電車に乗らないらしいが今日は一般ピープルな俺に合わせて電車で帰るそうだ。
さすがに今は俺の腕を離してくれて二人並んで駅へ向かって歩いている。
姉と二人きりで歩くのって久々だ…何だか緊張する。
「あ、あのぉ〜、お姉さま?」
「何?」
「さっき言っていた特訓って何ですか?」
「特訓は特訓よ。アンタ、喧嘩弱いでしょ?だから私が直々に護身術の一つや二つ叩き込んであげる」
「護身術!?」
「そう。襲われても一人で対応出来る様にしなさい。自分の身は自分で守らなくちゃ!・・・それに、私はカップリングにこだわるの、私が認めた男なら大目に見てやるけど、もしも変な男に歩夢のバージンが奪われたらと思うと恐ろしいわ」
「カップリングぅ???ってかバージンって何ッ!?」
「…まぁ、それは置いといて、純粋に弟のあんたを心配してあげているのよ。今の歩夢は弱すぎ!ひょっとしたら女子とガチで勝負しても負けるんじゃないの?」
「うぅっ…否定は出来ない」
「私の弟なら、もう少し強くなりなさい。ただでさえアンタは…」
「俺は…何?」
姉と会話をしながら歩いていたら急に姉が立ち止まった。
俺はクエスチョンマークを頭に浮かべながら姉の顔を見ていたが、姉の視線の先…正面を向けばチャラい男が二人、俺達の行く道を通せんぼしていた。
クチャクチャとガムを噛む目前の男が、姉をジックリと見て…
「可愛いねぇ、俺等と遊ばない?」
と、聞いてきた。すると姉は…
「遊ばない、邪魔だからどいて」
と、即答。
男はピュ〜と短く口笛を吹いて隣の男と目を合わせた。
「俺、結構気の強い女ってタイプなんだよね」
「アンタの好みなんか聞いてないわ、邪魔!」
「…可愛い顔して性格キツイな。…あれ?誰かに似てない?」
男の一人が姉の顔をマジマジと見る。
「あっ!アーミンにクリソツじゃん!?」
男がオーバーリアクションで隣の男に同意を求める。
ヤバイ…ばれた…?
俺は冷や汗を流したが、当の本人…姉はいたって涼しい顔をしていた。
「似すぎ!もしかして本人だったりして」
「ばーか、こんな態度の悪い女があの天使の様なアーミンな訳がないだろ?」
「だよな!」
・・・あれ?
意外とばれない。
よく考えれば確かに、仕事中とプライベートの姉は別人だと思う。
仕事中は愛嬌があるし常に笑顔で声も高いし、立ち振る舞いもアイドルって感じ。
それに引き換え、今の姉はドスの効いた低い声に目が据わっている…テレビに映っているアーミンと同一人物とはとうてい思えない。
「俺、アーミンのファンなんだよね〜。マジで似すぎ!そんなモヤシみたいな男といないで俺等と遊ぼうぜ?」
モヤシで悪かったな!…と心の中で反論する情けない俺。
姉は俺を見てクスリと笑った。
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